プレステージスキンケア市場において、揺るぎない存在感を示す「SK-II」。他社に比べると新商品の数は少ないものの、発表すれば話題となりベストコスメにも常連となる。2025年は4月に「ジェノプティクス CCプライマー&エアリー UV クリーム」、9月に新エイジングケアシリーズ「スキンパワー リニュー」を発売し、大きな反響を呼んだ。インフレの影響で節約志向も高まり、インバウンドの減少も心配される中、さらなる成長を目指してどう仕掛けていくのか。2022年から同ブランドを統括する西田文彦「SK-II」事業代表に聞いた。
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西田文彦/P&Gプレステージ SK-II事業代表

Image by: FASHIONSNAP
「日本発のイノベーションを世界に羽ばたかせるビジネスリーダーになりたい」という信念のもと、国内医療機器メーカーの海外営業を経て、2011年にP&Gに入社。一貫して「SK-II」ビジネスに携わり、シンガポール、日本、香港・台湾でのブランドマネジメントを経験。現在はこれまでの経験を生かし、「ブランドビジョンを肌で理解したセールスリーダー」として日本のSK-II営業組織を統括した後、2022年1月から現職。
◾️SK-IIとは?日本発のプレステージスキンケアブランド。独自成分「ピテラ™」を核としたスキンケアで知られ、"クリアな素肌"を世界中に届けている。1970年代、日本の酒造りの現場で酵母に触れ続ける「杜氏の手は年齢を重ねてもなぜ美しいのか?」という疑問をきっかけに、酒造りなどの発酵プロセスの研究を行い、長い期間を経て、特別な酵母の独自の発酵がもたらす唯一無二の天然由来成分ピテラ™︎を開発。1980年にブランドが誕生した。ピテラ™︎を90%以上配合する「フェイシャル トリートメント エッセンス(通称:ピテラ™︎エッセンス)」は、長く愛され続けているヒーロープロダクト。1980年のSK-II誕生以来、ピテラ™︎エッセンスを含む数々のヒット商品を生み出し多くのビューティアワードを受賞。グローバルプレステージスキンケアブランドとして世界中で支持されている。
目次
発酵美容への関心の高まりが追い風に
⎯⎯2026年6月期の前半戦が終了しましたが、市場をどう捉えていますか?
全体的な市況としては、弊社の主戦場であるプレステージスキンケア市場自体は伸びているものの、伸び率は鈍化していると考えます。ただ、ポジティブに捉えている要素もあります。まず、高価格帯と低価格帯の二極化が進む中、SK-IIは高価格帯スキンケアの中でしっかり戦えているということが1つ目。美容医療への関心の高まりと共に、本質的に肌を良くしたいというニーズが非常に高まっていることに、SK-IIがコミットできるということが2つ目。
そして、今あらためて発酵美容が注目されていることもポジティブな要素です。我々は、SK-IIを発酵美容のパイオニアのひとつだと自負しています。もちろん楽観視はできませんが、発酵美容への関心の高まりと共に、SK-IIというブランドや主要成分のピテラ™︎に関心を持つお客さまが増えたことは、全体のトレンドとしては追い風になっていると感じています。
⎯⎯メイクアイテムは混沌としている印象なのに対し、スキンケアアイテムが好調という話をよく聞きます。プレステージスキンケアブランドであるSK-IIはとくに強いですね。
実際に数字を見ても、国内客とインバウンド客両方の売り上げが好調に推移しており、百貨店のスキンケアカテゴリーの中でも群を抜いた成長率で伸びています。あらためて「ピテラ™︎という唯一無二の成分の魅力を伝え続ける」という、我々のあくなき戦略の一貫性が効いているかと思います。だからこそ、基幹商品である「フェイシャル トリートメント エッセンス」の良さを伝え続けていきます。また、2025年に発売した大型の新商品「ジェノプティクス CC プライマー&エアリー UV クリーム」や「スキンパワー リニュー」シリーズも人気で、王道と新商品の両輪のバランスがうまく取れていることが伸長の要因と考えています。

「フェイシャル トリートメント エッセンス」(春には数量限定コフレとして、桜をまとったデザインも登場)
1本で導入美容液、化粧水、美容液の3役を担う多機能化粧水。高い浸透力で角層のすみずみまでうるおいを届け、角層細胞レベルにアプローチ。独自成分のピテラ™︎を90%以上配合し、ビタミン類やアミノ酸類、ミネラル類など、有機酸類など50種類以上の有用な構成成分を含むことで、肌のコンディションを多角的にサポートする。
シェアを奪うのではなく、市場を広げる
⎯⎯好調な中で、あえて課題をあげるとしたら何でしょうか。
国内市場に目を向けると、インフレによる消費抑制や節約志向の高まりというのは、間違いなく取り組むべき課題。インバウンドも楽観視できない状況を踏まえると、いかに国内需要を喚起していくかがポイントになります。一方で、お客さまは使うべき所にはしっかり投資されています。そうでなければSK-IIの売り上げはここまで伸びないでしょう。今後は、より一層消費者理解に基づいた商品、コミュニケーション、店頭体験に加え、新規お客さまの開拓といったところが重要になっていくでしょう。
⎯⎯たしかに「投資すべきところには投資する」という消費行動は後押しになりますね。
具体的な数字は申し上げられませんが、SK-IIの大きな成長要因は、新規のお客さまの開拓です。プレステージスキンケアの世帯浸透率は6~7%と低いのが現状で、その中で競合他社とシェアを奪い合っては成長の鈍化にしかなりません。新客を取り込んで、このパイを広げていくことが非常に重要です。

⎯⎯新客を取り組むための具体策は?
3つ戦略を立てています。まず我々は「ピテラ™︎エッセンス」を大きな軸として、新規のお客さまを獲得していくという戦略に注力します。導入液、化粧水、美容液の3つを兼ね備えた同アイテムを使うことで「毎朝、素肌が理想のファンデに。」という、お客さまに響くコミュニケーションを続けて市場を広げていきます。そして、ジェノプティクス シリーズやスキンパワー リニュー シリーズのように、ピテラ™︎を使用した新商品を拡充していきます。最後は2024年に発売したスーパープレステージライン「LXP金継ぎ」シリーズ。このシリーズを通じてSK-IIのブランドイメージ全体が上がったというデータがあり、この部分の打ち出しを強化しています。今後もこの3つの戦略を通じて、新規のお客さまを獲得していきます。
⎯⎯一方でインバウンド需要はいかがでしょうか。日中関係の問題は影響がありますか?
SK-IIのインバウンド需要は伸び続けていますが、たしかに成長スピードは12月、1月は鈍化しました。だからと言って、とるべきアクションに変化はありません。こういった危機に直面したのは今回が初めてではなく、毎年、何かしらあるものです。カウンターにお越しいただいたお客さまは、SK-IIに対してポジティブな印象を持って来店されているわけで、そのお客さまを最大限におもてなしする。それをカウンターチームと連携してやっていきます。
スキンケアへの投資の概念に変化
⎯⎯LXP金継ぎ シリーズはさらに高価格帯になるため、お客さまの年齢層も上がりますよね。
確かに、若干上がりますが、実はびっくりするくらい、若年層の方にも使っていただいています。LXP金継ぎ シリーズは百貨店の外商のお客さまにも好評です。そういった、今まで出会えていなかった方々との接点ができ、ラグジュアリー層のお客さまを新たに掴めた事で市場拡大につながりました。

⎯⎯若年層の支持も高いとは、意外です。
先ほども述べましたが、美容医療が一般化して、肌にお金をかけることに“バリア”がなくなり、美容医療を何度もやるくらいなら、毎日のケアにしっかり投資したほうがいいと考える人が増えるなど、スキンケアへの投資の概念が変わってきています。当初、美容医療の浸透は、スキンケア市場を乗っ取られるのではないかという懸念を持っていた人もいたかもしれませんが、逆に追い風になっているのではないかと感じています。
⎯⎯スキンパワー リニュー シリーズも大きな話題となりました。
SK-IIとしていつも力を入れているのは消費者理解で、エイジングケアシリーズ「スキンパワー リニュー」シリーズは、その良い例となりました。リサーチする中でわかったのは、消費者はちょっとした瞬間にエイジングの悩みに気づかされるということ。そして、SK-IIの研究で顔の下半分に現れるエイジングサインは、頬の上部の変化から始まることを発見しました。ハリの頂点が約数ミリ変化すると、顔の印象に影響を与えるというのが、我々が見出した“ハリの方程式”です。そこから“ふっくらハリケア”のキーワードを、デジタル広告や店頭での肌測定器を使用したコミュニケーション、パッケージに至るまで連動させました。こうしたアイデアとインサイトのつなげ方が我々の強みだと思います。



ECは新客を獲得するチャネル
⎯⎯多くのチャネルがありますが、それをどうシームレスにつないでいきますか?
かなり多くの方に、ECで新規購入いただいています。SK-IIに関心はあるけれど、店舗に行くのは緊張するという声は多く、口コミやレビューを見て新規購入されています。そういったことから、リピート購入などオフラインからお客さまを流して行くというより、ECは新規のお客さまを獲得するチャネルと役割を定義づけ、それを促進する仕掛けをやっていきます。
⎯⎯具体的には?
ひとつはギフト需要への対応です。ありがたいことに、SK-IIはもらって嬉しいギフトの上位に挙げていただくことも多く、オンラインならではの利便性を活かしながら、得意先さま(プラットフォーマー)と連携して対応していきます。これもプレステージスキンケア市場のパイを広げるきっかけになると考えています。昨年Amazon.comにも出店し、新規のお客さまに出会う事ができました。
⎯⎯消費者理解がSK-IIの強みだということですが、それに対してどのような施策を行なっていますか?
最近チャレンジしているのは、百貨店と連携した超富裕層のインタビューです。自分達が正しいと思っていたことが、実はその層に刺さっていなかったということもあるので。そして、我々の一番のリソースは美容部員だと思っています。ブランドの中で一番お客さまと接点を持っているポジションであり、美容部員が感じたことや聞いたことをプランや企画に反映することが重要です。また、2024年11月には、インスタグラムの日本公式アカウントをスタートさせました。そこでは美容部員が消費者に近い目線で発信していますが、反響も大きく、さらに力を入れたいと思っています。

⎯⎯そういったリサーチを重ねる中で、自分達がイメージしていることと現実に違いを感じたことはありますか?
まだまだ認知が足りない事です。素晴らしい商品なのに、具体的に何をしてくれるかというところまで伝わり切っていない。例えばLXP金継ぎ シリーズも、我々は発売から1年半経っているので新商品という感覚はないのですが、一般的にはまだまだ知られていません。数々のメディアやSNSがあり、これだけ情報過多の中で、認知を得るのは多くの時間と絶え間ないフォーカスが必要なのだとすごく感じています。
⎯⎯今後の戦略に重要な事とは何でしょうか。
世の中では逆風に見えることを、追い風にしていくマインドではないでしょうか。日本のマーケットは、少子高齢化、消費抑制、インバウンド問題など、ネガティブに語られがちです。一方で、直近の数字を見ると、いまだかつてない成長を遂げています。やり方次第でマーケットを大きくすることができているのです。戦略も重要ですが、チャレンジをどう捉えるかによって状況は変わってきます。だからこそ、あらためて消費者理解などの本質に戻り、ビジネスを伸ばすことが大切なのだと思います。
text: Yoshie Kawahara | photography: Hikaru Nagumo, interview: Akiko Fukuzaki, edit: Hikaru Kimura(FASHIONSNAP)
最終更新日:
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