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炎上をもポジティブに転換、ドルチェ&ガッバーナ流SNSブランディングの巧妙さ

#BOYCOTT Tシャツのキャンペーンビジュアル
Image by: DOLCE & GABBANA

 SNSを使ったブランディングやデジタルプロモーションは当たり前の時代。共感を得てブランドと消費者の距離を縮めるツールだが、一歩間違えれば反感にもつながるリスクが潜む。いわゆる「炎上」もマーケティングの一部とされるような過敏な反応も際立っている。そういったSNSを大胆に活用しているブランドの代表格が、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」だ。自ら不買運動を促すようなハッシュタグを広め「#BOYCOTT」をプリントして商品化するなど、過激とも言える手法でミレニアル世代(1980年代〜2000年代初頭生まれの世代)を取り込んでいる。

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 これまでにもドルチェ&ガッバーナは、デザイナー2人のマスコット「#DGClone」を世界の各都市に出没させるキャンペーンや「D&G」のロゴをコピーしたかのような"本物のフェイクTシャツ"として「#DGTHEREALFAKE」シリーズを発売するなど、ハッシュタグを商品やキャンペーンに結びつけたデジタルマーケティングを展開してきた。社会の反応や現象をアイロニックに捉え、新たなアイデアに昇華させる。その手法を象徴するアイテムが"#BOYCOTT Tシャツ"だ。

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 昨年ドナルド・トランプが米大統領に就任してからファッション界では、メラニア夫人が着用する衣服が注目を浴びている。多くのデザイナーがトランプ不支持を訴える中で、メラニア夫人の着用によってブランドイメージが政権支持と直結することを避け、衣装提供を拒否するデザイナーが続出した。一方、ステファノ・ガッバーナはメラニア夫人がブランドを着用する度に、夫人への謝意をSNSに投稿。これがアンチトランプ派の反感を買い、ブランドの不買を訴えるハッシュタグ「#boycottdolcegabbana」が登場した。しかし、ブランドはこの攻撃的なハッシュタグをあえて用いてキャンペーンを打ち出し、メッセージロゴとしてプリントし商品化した。

 6月に展開を開始したこのTシャツは現在オンライン限定で税別2万9,160円で販売しており、ブランドは「私たちのソーシャルメディアに、ネガティブなコメントをする人々のメッセージをアイロニックにこのTシャツで表現している」とTシャツ誕生の背景を説明する。オンラインサイトでは若者がTシャツを着用し、デモさながらの様子を収めたショートフィルムを公開。デザイナーの2人も登場し、ともにボイコットを呼びかけるというユニークなキャンペーン動画に仕上がっている。

 
 ブランドはここ数シーズン、世界中のインフルエンサーを集めたショーや広告をウィメンズとメンズともに展開し、彼らのSNSを介して新たなファン層へのリーチを図っている。モデルがランウェイでセルフィーを撮ってオンタイムで配信する演出が行われたり、ショー後にメディアに配布されたモデルの資料には、それぞれの写真とともにインスタグラムのアカウントとフォロワー数が記載され、SNSでの影響力を重視しているのがわかる。今回の#BOYCOTT Tシャツもショーに出演したミレニアルモデルたちが着用することによって、ハッシュタグと共にビジュアルがSNS上に拡散される効果があった。

 デザイナーのステファノ・ガッバーナ自身、ミレニアル世代も顔負けのインスタグラマーだ。絵文字やハッシュタグ、リツイート、ストーリーなどを駆使し、ブランドの活動からエアロビクスに励むプライベートな投稿まで、日常のさまざまなシーンを10万人以上のフォロワーに向け投稿し、発信力を高めている。一方でその自由奔放さゆえ、炎上することも多い。インスタグラムで過去のコレクションのデザイン盗用を認める発言をしたり、「政治ポリシーには賛同できない」とブランドについてコメントした歌手のマイリー・サイラスにインスタグラムのコメント欄で「無知だ」と非難したり、大御所ファッション批評家のレビューに噛み付いたりと、コレクション以外で注目を集めることが少なくない。先日も金髪のウィッグ姿にバンダナを巻いた自身をプリントしたTシャツ「#lamagadellamoda」(=ファッションの魔法)を発表し、その奇抜さが目を引いた。 

ちなみにこちらは現在、公式オンラインストアで税別3万3,480円でプレオーダーを受け付けている。

 いずれにしてもドルチェ&ガッバーナは今、最も話題になるブランドの一つであることは間違いない。ブランドが何を仕掛けるのか、もしくはデザイナーが今どこにいて何を考えているのかまで、SNS上でミレニアル世代の注目を浴びることが、莫大な費用を投じる広告と同等のプロモーションになっているとも言える。各ブランドがデジタルマーケティングに試行錯誤する中、「炎上」をもポジティブに転換してしまうようなドルチェ&ガッバーナならではのブランディングの強みが、#BOYCOTT Tシャツをはじめとする商品や、SNSとハッシュタグの広がりから垣間見える。

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