
BEDWIN ディレクター 渡辺真史

BEDWIN ディレクター 渡辺真史
ファッションにおける知見と美意識を備えたクリエイターが、自ら選んだ「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」のスタイルをまとい、新たな視座とムードを描き出す。(第3回/全3回)
「ベドウィン アンド ザ ハートブレイカーズ(BEDWIN & THE HEARTBREAKERS)」のディレクターとして、時代の変化とともにファッションとの関係性を更新し続けてきた渡辺真史。装うことによって広がる可能性に目を向けながら、これからの時代をより自由に、自分らしく生きるためのあり方を見つめる。

渡辺真史(Masafumi Watanabe)|BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ディレクター。モデル活動やロンドン滞在を経て服作りの道へ進み、2004年にBEDWIN & THE HEARTBREAKERSを設立。2020年にはMIYASHITA PARKにセレクトショップ「DAYZ」をオープン。
── Vol.3のスタイリングテーマは「新しい自分に出会うスタイル」。どんなところを意識しましたか?
ドレスっぽいセットアップを着る機会は、普段あまり多くないんです。だからこそ、こういう服を着ていける場所を増やしていきたいなと思ってスタイリングしました。
柔らかで上質な太畝のコーデュロイのセットアップで、カジュアルとは違うけれど、適度に力が抜けていてクラシックすぎない。このダークトーンのスーツなら、行ける場所がかなりあるんじゃないかなと思います。本当は、この服で自転車に乗って仕事に行きたいんですけど、それはちょっとがんばりすぎかも(笑)。月に数回くらい、パーティーやイベントに着て行きたいですね。
日常的にはなかなか着られないけれど、ここぞというときに着る。そういう特別な服があることも、ファッションの楽しみのひとつですよね。

── 今回エンポリオ アルマーニのアイテムに触れて、新たな発見やご自身のスタイルの変化を感じた部分はありますか?
年齢を重ねたからこそ感じた変化はありますね。20代のころは身体も華奢だったし、顔も子どもっぽかったから、こういう格好をしてみたいと思っても、理想と自分の現実が全然違ったんです。
でも40代、50代になって、お腹が出てきたり、髭を生やしたり、顔が少しやつれてきたり……そういった変化も含めて、自分が思い描いてきたアルマーニの世界観の中に、少しずつ入れるようになってきた気がします。若くて背伸びしている感じも、それはそれでかわいい。でも、自分が理想としているコーディネートや雰囲気に、ようやく年齢が追いついてきたというか。
若いときって、「こんなはずじゃない」「こうなりたい」というエゴが強すぎて、なかなかしっくりこない。でも50歳くらいになってくると、「これでいいかな」と思えるようになる。自信と諦めが、うまくブレンドされてきました。

── 渡辺さんが考える、ファッションの最も大きな力とはなんでしょう?
僕は、ファッションは“娯楽”だと考えているんです。要するに、自分を楽しませるもの、自分が楽しむためのものじゃないかなと。誰しも毎日、服を着て外に出る。その中で何をチョイスするかはその人の自由であり、毎日行われる決断ですよね。
では何を基準に決めるかというと、基本的には“好き”という気持ちがベースになっているはずです。だから服は、その人からのメッセージでもある。「このバンドが好きだからこのTシャツを着る」「このブランドのデザイナーが好きだからこの服を着る」というように、その人のアイデンティティを表現するツールなんですよね。「ファッションには無頓着だから、あるものを着ているだけ」という人でさえ、それもひとつのスタイルだと思います。それが巡り巡って、ある日グランジのようなトレンドになるわけですから。
何を着るかということは、自分をどう作っていくかということにも置き換えられるし、それが楽しさや幸せにつながっていくんじゃないかなと思っています。

── これから先、ファッションにはどんな役割が期待されていると思いますか? また、渡辺さん自身はそこにどう関わっていきたいですか?
最近よく考えているんですけど、たぶんどんどんシンプルになっていくんだと思います。自分は高校生や大学生のころに「こんなベルト売ってないから、自分で作っちゃおう」というところから始まって、そこからTシャツを作り、量産してブランドにし、友達に売り、見知らぬ人に売り、オンラインでも販売して、いろんなブランドのコンサルティングを手掛けるまでに広がっていった。そうやって規模を拡大してきたけれど、最近また10代の原点に戻っているような気がするんです。
個人的に欲しいもの、世の中にないからこそ欲しいものを自分で作る。それを10点でも20点でも、本当に欲しい人に届けていく。そういうものづくりをしたい。「渦をつくって、どんどん大きくしていこう」ということは、今はあまり考えていません。
今の若い世代は、SNSで一気に広げて世界中でバイラルを起こし、それをビジネスにつなげていく。でも、それは彼らのゲームです。僕も若いころは雑誌やメディアを使ってそういった挑戦をしてきましたが、これからはもっと、自分が楽しめるもの、そして自分の周りにいる人たちが楽しめるものを作っていければいいなと思っています。
自分が好きなものを選び、楽しみ、分かち合う。そんな小さな“好き”の積み重ねこそが、これからのファッションのあり方における、ひとつの道なのかもしれません。

ジャケット 17万6000円、シャツ 9万0200円、パンツ 8万4700円、シューズ 13万7500円/すべてエンポリオ アルマーニ(ジョルジオ アルマーニ ジャパン)、アイウェア、時計、リング(本人私物)
問い合わせ先
ジョルジオ アルマーニ ジャパン:03-6274-7070
photography: Yoshitake Hamanaka, styling: Masafumi Watanabe, Raimu Yamazaki, hair & make-up: Yukari Clarke, edit & text: Yusuke Takayama (QUI), production: Yusuke Soejima (QUI), Yuko Okano (QUI)|casting: Takashi Sasai, producer: Kazuhiro Oyokawa (FASHIONSNAP)
最終更新日:
連載|BEDWIN ディレクター 渡辺真史とエンポリオ アルマーニ
Vol.1 時代が求める美しさとは
Vol.2 自分らしくあることの心地よさとは
Vol.3 世界を拡張するファッションの可能性とは
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