「アンリアレイジ(ANREALAGE)」が2021年春夏コレクションで探究したのは、衣と住の間。「HOME」をテーマに、服を移動が可能な家と捉える"ホームウェア"を制作した。パリのファッションウィークにデジタルで参加し、富士山麓で撮影したショー映像を発表した。
アンリアレイジが初めてショーを行ったのは2005年。生まれ育った東京を象徴する場所という理由から、東京タワーでランウェイを敢行した。それから15年が経った今、東京を飛び出して世界の舞台で戦っているデザイナーの森永邦彦。今シーズンはコロナ禍で例年通りパリでショーを行うことはできなかったが、デジタル発表だからこその表現を模索。日本の象徴である富士山を臨む、静岡県富士宮市の朝霧自然公園(朝霧アリーナ)でのショーが実現した。
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2021年春夏コレクションのテーマ「HOME」は、まさにコロナ禍の森永の思考から生まれた。ソーシャルディスタンスやステイホーム、マスクやフェイスシールド......新しい生活様式の延長線上で「ファッションデザイナーに何ができるか」を考えたという。
「HOME」の意味を問い直し、家の中で着るためのホームウェアではなく、家のように身体を覆うホームウェアを探究。「服を着るように、家を着る」という視点で、衣と住の持つ役割を掛け合わせていった。
服を移動が可能な家と捉えて制作したのは、多面体のテント。「家」の語源には「戻る場所」といった意味があることから過去のコレクションテーマに回帰し、ブランドを代表する2009年春夏コレクション「○△□」を再考した。新たに3Dモデリングの技術を用いて、デザインからパターン、アバターによるフィッティングや修正まで画面上で行うなど、新しい服作りに取り組んでいる。
球体、4面体、6面体、8面体、12面体、20面体という6種のテントは人をすっぽり覆う大きさで、骨格を入れると2メートルのパーソナルスペースを保つ。骨格を抜き、ドローコードを引いてギャザーを寄せれば、コートやドレスといった服になる。テキスタイルを身を守るための結界とし、アオレイルとの協業で銅繊維を含んだ抗ウイルス繊維に、シキボウの抗ウイルス加工であるフルテクト加工を施した。
ヘッドピースも、人が身につけられる小さな建築物と捉え、建築家の隈研吾と協業。多角形のテキスタイルを組み合わせ、立体的なヘッドピースを作り上げた。ランプシェードとしてインテリアにもなるという。
バッグやアクセサリーは、新ブランド「アンエバー(ANEVER)」のファーストコレクション。オンワード樫山との協業ブランドで、アンリアレイジのシグネチャーの一つであるアクリル樹脂シリーズを拡大展開する。シューズは「スピングル(SPINGLE)」とコラボレーションした。
新ブランド「ANEVER」のアクセサリーとバッグ
「SPINGLE」とのコラボシューズ
従来のランウェイに代わるデジタルショーの撮影にも、様々なクリエイターらが携わっている。映像は田中裕介(CAVIAR)と鯨井智行(NION)、サウンドディレクションはこれまでもショー音楽を何度か手掛けている山口一郎(サカナクション/NF)と青山翔太郎(NF)が担当した。スタイリングはTEPPEIが手掛けている。
オープニング映像に登場した白いテントと平手友梨奈
オープニング映像では平手友梨奈が登場し、白いテントがドレスに変化する様をダンスと共に表現した。続くシーンでは、富士山を背景に18の異なる形のテントが集落のように建ち並んでいる。それぞれのテントをまとったモデルらは、まるで家を着る部族といった装いだ。陽が落ちて集落に灯りがともると同時に、ボリュームのあるドレスの蛍光色が発光。アンリアレイジならではのパッチワークが際立ち、トライバルな音楽と相まって日常と非日常が交差する異空間を作り上げた。
コレクション映像とバックステージ映像
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