中国の化粧品業界が成長する中で、老舗化粧品会社から新興企業まで、多くの中国国産ブランドが注目を集めました。今回はその中から、今中国で注目されているブランドを扱う代表企業と、急成長する新星ブランドを紹介します。
中国の化粧品業界で注目されるビューティ企業
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中国香料香精化粧品工業協会が発表したレポート「2023年中国化粧品市場業界開発消費インサイト」によると、2023年の中国化粧品産業の市場規模は前年比6.4%増の約5169億元となり、2025年には5791億元(約11兆5300億円)まで拡大すると予想されています。市場が成長する中で、国産ブランドの開発技術や品質も向上し、消費者の関心もますます高まっています。そのため、注目されている国産企業はマーケティングのみならず研究開発や品質向上にも投資し、新しいコンセプトや悩み解決のためのアイテムを販売しています。
◆プロヤ・コスメティックス(珀莱雅化妆品、Proya Cosmetics)
プロヤ・コスメティックスは、2006年に設立。研究開発と科学技術に注力してきた化粧品企業です。看板ブランドの「プロヤ(PROYA)」は今年のダブルイレブン(W11)で、天猫(Tmall)や抖音(Douyin)など主要プラットフォームの美容売り上げ1位に立ちました。
グループ傘下の「ティメジ(TIMAGE彩棠)」も、天猫ダブルイレブンでメイクアップ部門2位に入る人気ブランド。創立者は女優のチャン・ツィイーなど数百人の中国人気女優のメイクを手掛ける唐毅(トウ・キ)メイクアップアーティストで、小紅書(RED)など中国のSNS上で、メイクアップテクニックを紹介する動画で人気を集めています。ブランドはアジア女性のナチュラルな美しさを演出するというコンセプトのもと、「ハイライトシェーディングパレット」「コンシーラーパレット」など多数のヒット商品を生んでいます。今年から日本でも公式ショップやアマゾンで購入できるように。
その他にも、独自の世界観を持ちSNSで人気のメイクアップブランド「INSBAHA原色波塔」や、若者のオイリー肌や敏感肌に注目した商品を中国や東南アジアで展開するスキンケアブランド「HAPSODE悦芙媞」など個性豊かなブランドが揃います。また日本でも人気のヘアケアブランド「Off&Relax」も、実は同社の傘下ブランドです。
◆逸仙ホールディングス(逸仙控股、Yatsen Holdings)
逸仙ホールディングスは2016年に設立し、代表ブランドの「パーフェクトダイアリー(Perfect Diary、完美日記)」の急成長によって注目を集めた企業。2020年11月には米国ニューヨーク市場に上場しています。
日本でも展開する「パーフェクトダイアリー」は9月にブランドロゴを刷新。中国で販売する新商品ラインはさらに高級感あふれるデザインや発色を追求しています。中でもリップマスクのようなケア効果と化粧効果を両立した「生体膜エッセンスリップ」が話題になりました。発色のいいリップスティックでありながら、独自成分“ザクロペプチドコンプレックス”を配合し、唇をうるおいで満たしてふっくらとした状態に導いてくれるそう。
「Perfect Diary」の小紅書アカウントから
また同社傘下にはメイクアップブランド「Little Ondine小奥汀」「Pink Bear皮可熊」や、スキンケアブランド「Abby's Choise完子心選」など若者向けのブランドがある一方で、2020年10月に買収したフランス発スキンケア「ガレニーク(Galénic)」や、2021年3月に買収したイギリス発スキンケア「イヴロム(EVE LOM)」といったハイエンドブランドも並んでいます。
◆ブルーメイジバイオテクノロジー(華熙生物、Bloomage Biotechnology)
2000年に誕生したブルーメイジバイオテクノロジーは、世界的なヒアルロン酸原料のサプライヤーです。その技術力や専門性を生かした機能性スキンケアブランドを展開しており、人気の高いブランドが多く成長しました。
代表ブランドの「潤百顔BIOHYALUX」は美容医療などで使用する注射用ヒアルロン酸フィラーと、スキンケアラインを展開しています。スキンケアラインではヒアルロン酸をキー成分に、さまざまな効能成分を掛け合わせて肌悩みに寄りそうアイテムを展開。スター製品「バリア コンディショニング シングルユース エッセンス(白纱布次抛精华2.0)」は肌のバリア機能の修復メカニズムに着目した製品で、同社が20年に渡って研究してきたヒアルロン酸技術が活用されています。劣化しにくい使い切りボトルも特徴です。
「潤百顔BIOHYALUX」の小紅書アカウントから
また敏感肌向けスキンケア「MEDREPAIR米蓓尔」やエイジングケアに特化したスキンケア「夸迪QUADHA」、発酵技術を活用した肌タイプや悩み別シリーズを展開するスキンケア「Bio-MESO肌活」など、多様なアプローチのスキンケアブランドが並びます。
中国SNSでも話題の中国新興メイクアップブランド
これまで中国コスメは目を引くパッケージやコラボレーション、独自の世界観で注目を集めるブランドが目立っていましたが、最近は専門性や研究開発力、品質の高さにこだわるメイクブランドが成長しています。特にアジア女性の肌に注目したベースメイク製品や、低価格高品質のメイクアップなどが、ショート動画アプリの抖音を中心に広まっています。
◆PASSIONAL LOVER恋火
中国の大手スキンケアブランド「丸美(MARUBI)」を展開する丸美化粧品から、2021年に誕生したベースメイクに特化したブランド。特に素肌のように自然な陶器肌を演出する“インビジブル”シリーズは、カバー力や仕上がりの良さといったメイクアップ効果とコストパフォーマンスの高さから人気を集めています。ヨレにくいと評判の“インビジブル”シリーズの化粧下地は、2023年の抖音美容製品トップ100ゴールドリストにも入りました。
「PASSIONAL LOVER」の小紅書アカウントから
◆AKF
2018年に設立し、近年急成長しているコスメブランド。元々はメイク落としなどスキンケアが主力のブランドでしたが、2020年からメイクアップラインを展開するとヒット商品が多数生まれました。その一つである「AKFルースパウダー」は2022年の抖音メイクアップ製品年間ゴールドリストで1位にランクインしました。1000円前後の手頃な価格ながら、ルースパウダーにありがちな厚塗り感やまだら塗り、粉っぽさを解消した商品です。また「AKFマッドリップ」はその発色の良さやカラー展開で、KOL(Key Opinion Leader、インフルエンサー)にも支持されて拡散されました。
プチプライスな商品でありながら品質にこだわり、2023年初めには世界的なOEM企業であるCosmaxと共同美容研究開発研究所を設立しています。
「AKF」の小紅書アカウントから
青山学院大学文学部卒業。産経新聞社サンケイスポーツ編集局記者職を経て、「WWD BEAUTY」記者として中国や欧米などの海外美容市場やビューティテック、スタートアップなどを中心に取材。2020年4月に独立し、現在は美容業界情報を中心に若者トレンドや中国市場に関する記事を執筆。
(編集:平原麻菜実)
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