
Image by: FASHIONSNAP

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「アタッチメント(ATTACHMENT)」が、国産素材・国内縫製にこだわったハイエンドライン「スティル アタッチメント(STILL ATTACHMENT)」を立ち上げた。東京・神宮前で2月4日に開催したプレゼンテーションで披露し、今後はアタッチメント直営店を中心に取り扱う予定だ。
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創業者・熊谷和幸の後継者として、2022年秋冬コレクションから指揮を執っているデザイナーの榎本光希は、この取り組みを「変化というよりも純化」だと強調する。その言葉通り、上質な天然素材をごく抑制的なデザインで調理したコレクションは、「衣服は着用者の付属品(アタッチメント)である」というブランド不変の教理の深化を感じさせた。

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苔や錆に着想を得た「服の永続性」
「スティル アタッチメント(STILL ATTACHMENT)」は、メインラインとシーズンテーマなどを共有し、それらをより濃縮した”アスピレーション ライン”として創設。メインラインでは採用が難しい高コストな素材や仕様をふんだんに取り入れ、ブランドにおける最高の品質でそのヴィジョンを表現する。
新ラインのデビューシーズンでもある2026年秋冬コレクションは、「Lasting」をテーマに悠久の時を感じさせる苔や錆に着目。榎本は、その永続性を「時間と共に深まる人と物の関係性」と定義し、スティル アタッチメントでは時代を超えてワードローブに残り続ける普遍的なデザインを探求した。付属品としての枠を超え、長い年月を経て着用者の一部となるような服を目指したという。






ナイスワークショップによるオブジェ
プレゼンテーションの会場には、韓国・ソウルのデザインスタジオ「ナイスワークショップ(NICEWORKSHOP)」が手掛けたオブジェを設置。同スタジオは、建設現場で生じる廃棄物を作品の素材として再構築する活動で知られており、経年変化や循環の受容、素材との向き合い方に共鳴したことで協業が実現した。シーズンテーマである苔や錆を思わせる質感のパネルをもとに、壁やラック、机を製作。それらの什器に、新ラインのアイテムに用いた生地を展示した。
民藝に通じる「愛着のデザイン」
続いて行われたショーは、前半をスティル アタッチメントのアイテムのみで構成。コレクションのメインアイテムとして、ダブルフェイス生地のチェスターコートが登場した。表面にカシミヤ、裏面にウールを配することで、軽やかさと保形力を両立。モデルの動きに合わせて生じる柔らかなドレープと、紳士服らしいシャープなラインのコントラストが印象的だ。襟裏のレザーやコンシールポケットなど、1990年代から2000年代初頭のモードファッションを彷彿とさせる、気の利いたディテールも目を引いた。


スーパー160'sウールのビーバー生地を用いたダブルブレステッドスーツは、ローウエスト・ローゴージの4つボタン仕様でリラックスした雰囲気を演出。滑らかでとろみのある生地を活かした流れるようなフォルムで、素材への深い理解を感じさせるルックだった。この生地は、よりカジュアルなハリントンジャケットとしても登場している。





ウォッシュ加工を施したシルクシャツは、やや肩を落としたフィッティングや襟のデザインも相まって一見カジュアルな印象。しかし、加工によるシワが強調する光沢やドレープは、コットンとは明らかに異なるシルク特有のもので、素材本来の品格が静かに立ち昇る。ボタン開きのものに加え、ジップアップのプルオーバータイプも登場した。




後半は、前半のスタイリングにメインラインの最新コレクションを加えたルックが登場。比較的遊びのあるメインラインのアイテムを加えることで、スタイルに動きとリズムが生まれてくる。ごく中庸で普遍的なスティル アタッチメントのアイテムが、ブランドの創造性の土台となり得ると感じさせる場面だった。ナイスワークショップとのコラボレーションアイテムである、金属製のネクタイや欠損したかのような造形のリングも登場。シンプルなウェアに華を添えるユニークなアクセントとなった。








ナイスワークショップとのコラボアイテム
目にも楽しい上質なアイテムが並ぶコレクションだが、最も印象的だったものは他にある。それは、スーパー160'sウールのジャージーをふんわりと毛羽立たせたTシャツや、裏毛のループにカシミヤを用いたスウェットなど、視覚ではその真価を計り得ないアイテムだ。触覚という着る人だけが知る贅沢にフォーカスしたデザインであり、着ることによってのみ価値が生じる。






オンラインストアとSNSがファッションの主な舞台となり、分かりやすい高級さの記号が求められる現代において、決してアイキャッチとは言い難い今回のコレクションは大きな挑戦である。これらのアイテムはその象徴とも言えるもので、他者の視線が内在するファッションという現象からの脱出とすら映る。その行き先は、人とモノのより本能的でピュアな結びつき、触覚に訴える心地よさが生む愛着のデザインだ。

民藝研究の第一人者である柳宗悦は、著書の中で「人と器と、そこには主従のちぎりがある。器は仕えることによって美を増し、主は使うことによって愛を増すのである」と説いた。華美を嫌い、道具に徹する器を求めた彼の思想に通じるものが、新たなコレクションからは感じられる。スティル アタッチメントは、消費社会の速度や論理への抵抗であり、着用者が真の意味で主体となる被服のあり方への回帰なのだ。この声明は、創業者の熊谷がブランド名に込めた願いの一つの到達点と言えるだろう。
デザイナー 榎本が語る「ブランド承継の重要性」

デザイナーの榎本光希にショートインタビューを実施
⎯⎯ メインラインと新ラインをミックスしたルックが素敵でした。コントラストがありつつ、同じブランドとして馴染んでいた印象です。
新ラインもテイストは大きく変えず、質感やフォルムにフォーカスしていて、混ぜてもハレーションが起きにくいように工夫しています。特に素材が一番の違いになるのですが、アタッチメント全体を格上げする土台のようなコレクションになったと思います。



⎯⎯ 新ライン立ち上げはどういった経緯で?
作りたいという欲望に従いました。これまで、コストや工場さんのキャパシティ、売れ行きへの不安などさまざまな問題によって、採用を諦めてきた優れた素材や仕様が多くあった。ただ、アタッチメントが目指すべきもの作りのあり方を思うと、僕はそれらを作らずにはいられなかったんです。そしてアタッチメントというブランドの本質を突き詰めるほどに、シンプルなデザインへと削ぎ落とされていきました。

⎯⎯ メインラインとの作り分けについてはどう考えていますか?
メインラインは、手に取りやすい価格を含めた利便性の高さを大切にしています。一方のスティル アタッチメントは、品質と心地良さを追求したもの作り。道具としての服という同じゴールを目指しているのですが、アプローチが違います。ここ数シーズンは、その2つの価値観を1つのコレクションに混ぜ合わせてしまっていて、自分の中に疑問があった。お客さまにとって選びやすい選択肢を用意するという意味でも、作り分ける必要があったと思います。
⎯⎯ 確かに近年のコレクションでは、素材使いやテクスチャーの表現などに新ラインに通じる要素が見て取れた気がします。
極論は、利便性も品質も1つのアタッチメントで叶えたいです。ただ、20代から60代まで幅広い世代のお客さまを抱える中で、1つの価値観を押し付けるのは違うのかなと。着る人が主役で服は従するものという考えもあり、それぞれのお客さまに納得して選んでいただけるような、豊富な選択肢を揃えておきたいと意識するようになりました。その取り組み自体が、アタッチメントの本質だとも感じています。



フィンランドのフットウェアブランド「ターバス(Tarvas)」とのコラレーションシューズ
⎯⎯ 新ラインの立ち上げを含め、他者から引き継いだブランドを変化させていくことに躊躇いはないですか?
パブリックイメージを超えるような新しいものを見せなきゃという思いと、アタッチメントを守りたいという思いが共存しています。熊谷さんと長く一緒に働かせていただいた経験もありますし、彼のアタッチメントとその思想が好きだったので、それを変な形で成長させたくないという気持ちです。その結果が、今回の新ライン立ち上げでした。アタッチメントの核である「衣服は着用者の付属品である」という考え方はぶらさず、それをより鋭く研ぎ澄ませたものがスティルなんです。なので、変化というよりも純化だと捉えています。


⎯⎯ 欧州と比較して、日本ではデザイナーズブランドの承継の例がまだそれほど多くありません。創業者が築いたレガシーを受け継いでいくことの価値と難しさについて、当事者としてどう感じていますか?
ブランドがデザイナーを入れ替えながら長く続いていくことについてはすごくポジティブで、日本のブランドもそういう成長の仕方をするべきだと思っています。その先鞭をつけるという意味で、ある種の使命感を持ってアタッチメントを手掛けているんです。最近は「カラー(kolor)」や「ズッカ(ZUCCa)」など同様の例が相次いでいますが、日本のファッション業界の興盛のためには絶対に必要なことです。ただ、引き継いだ側としてはやはり難しい仕事ではあって。守りながら攻めないといけないですからね。こういう難しい仕事をものに出来る力がつけば、日本のデザイナーのレベルは更に一段上がると考えています。
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