堀内太郎
Image by: Hiroyuki Ozawa

堀内太郎
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新生「カラー(kolor)」が現地時間6月28日、パリでデビューを飾った。創業デザイナーの阿部潤一の後任として、クリエイティブディレクターに抜擢されたのは「ティーエイチ プロダクツ(th products)」を手掛ける堀内太郎。2026年春夏コレクションショーでは、テーラードを基盤に、多様でユーモアのあるアイテムを発表した。カラーのアイテム1点1点にフォーカスしたライン「カラー ビーコン(kolor BEACON)」も手掛けることになる堀内は、どうブランドをディベロップさせていくのか。パリでインタビューを実施し、その胸の内に迫る。
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2026年春夏コレクション
Image by: kolor

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カラーとの出会い、就任の決断
──「カラー」からオファーを受け、就任を決めた際、プレッシャーはありましたか?
もちろん責任の大きさを感じるという部分はありましたが、プレッシャーはありませんでした。カラーとの出会いは、2007年に僕がアントワープ王立芸術アカデミー(Antwerp Royal Academy of Fine Arts)在学時から何度か「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」のショーを手伝わせてもらっていた時に、準備が終わってショーまでの自由な時間があったので、ある先輩デザイナーの展示会に行きました。その展示会場の真横で、パリで初めての展示会の準備をしていたのが阿部さんで、突然話しかけたのが最初の出会いでした。その後、2012年度「毎日ファッション大賞」で再会し、それぞれ大賞と新人賞を受賞して以降は定期的に連絡を取るようになり、お互いの展示会にも行くようになりました。
──そういった関係値があったからオファーに繋がった。
もちろんその時にはこういった状況に着地するとは微塵も思っていなかったです。2年ほど前に普段の食事会だと思って行ったら「カラーをやらないか」という突然のお話があり、驚きました。阿部さんが引退する事を考えているとは全く思っていませんでした。
──その食事会で即決したんですか?
1週間くらい......いや、もう少し時間を置いた気がします。自分の既存の仕事との兼ね合いなど少しは考慮しましたが、自らが経験したことのないプロジェクトに対する単純な好奇心が勝ったのであまり悩むことはなかったですね。

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変わらないところ、変わるところ
──堀内さんにとってカラーらしさとは何でしょうか?
やはり僕の中の印象ではテーラリングです。軍服などもそうですが、カラーの根底にはユニフォーム的なものがデザインの基盤になっている。そこに阿部さんが持つ独特のユーモアやアイデアが散りばめられているのが、僕が考えるカラーらしさ。20年以上続くブランドだからこその強みもあります。パターンや生地など、長年にわたって蓄積された技術的資産は計り知れません。だからこそ、そのアセットを活かしながら、いかに新しいバランスを探すかというのが僕の役割だと考えています。

2026年春夏コレクション
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──これまでと、今回の2026年春夏コレクションとでデザインのアプローチに違いはありましたか?
これまで阿部さんが手掛けてきたカラーのコレクションは、まず服そのものからコレクション全体を制作していくスタイルだったのですが、僕はまずコンセプトボード制作のために時代背景や文化的文脈を掘り下げることから始めました。この異なるアプローチが、結果としてカラーに新たな表情をもたすのではないかと考えています。
また、基本的にカラーではデザイン画をベースとしたデザインプロセスを行わないのですが、今回は自らの中での方向性を定めるために20ルックほどデザイン画を描くところから始めました。それをベースに、今までのカラーと同様にパタンナーと会話を重ねて作り上げていく、という感じです。ヨーロッパのブランドでは、はっきりとデザイナーとパタンナーの役割がそれぞれ分かれて存在する事が多く、日本の代表的なブランドでよくある「パタンナー=デザイナー」である事とは着地に大きな違いが生まれると思います。デザイン画を出発点とする僕の制作プロセスに、カラーの蓄積したパターン技術やテキスタイルが合わさることで、よい掛け算になっていくのではないかと考えています。

2026年春夏コレクション
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──最初にデザイン画を20体描かれたとのことですが、特に意識したことはありますか?
まずはカラーのアイデンティティを理解することが最優先でした。早い段階から色々な事を自分なりに試したのですが、面白いプロセスとしてはカラーの過去のルックを模写する事でした。そのプロセスを行う事で、ブランドが持つシルエットやプロポーションへの本質的な理解が深まったように思います。その理解をベースに、現代の文脈でどう再解釈できるか、自分の感性でどう進化させられるか、そういった視点で描き進めました。
──カラーといえば、テーラリングはもちろんですが、切り替えも色もテクニックも複雑です。
正直言って、デザインを手掛けてみて改めて阿部さんの物作りはクレイジーだなと感じました(笑)。服作りを一定のレベルで理解している人ほど「どうやってこれを作っているんだろう」と思わせるのがカラーのデザイン。玄人受けするブランドとして、その複雑さは半端ないものがあります。例えば、一つのアイテムに数十もの素材や付属、配色を組み合わせることもあり、そのバランス感覚は尋常ではありません。ただ、今までカラーを支えてきた経験豊富なチームが存在するので、形にすることができたと思います。

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デビューコレクションはどう作られた?
──いつもカラーは特別テーマを設けないですが、2026年春夏コレクションは「time travel chic humor the hours the waves」というテーマを掲げました。
僕は制作のプロセスとしていつもテーマを設定していますが、重要なのは服であり、テーマは対外的に多く語る必要があるものだとは思っていません。ただ少し説明するとすれば、今回の核となるコンセプトはシンプルに言えば「時間」です。僕がクリエイティブディレクターとして新たに就任したように、つねに変容して流れていく「時間」そのものがインスピレーションのきっかけとなりました。過去・現在・未来の様に異なる時間軸に存在するものを一つに集約し、表現できないかと考えたのです。

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──今シーズンはコラボレーションアイテムもありました。
「アイヴァン(EYEVAN)」とアイウェアを、「キジマ タカユキ(KIJIMA TAKAYUKI)」とサファリハットを作りました。他にもコラボプロジェクトを進めていたものがあったんですが、パリのショーに間に合わなかったので、今後どこかで発表できればと思っています。
──2026年春夏ではアウトドアの要素が多かったように思います。
そうですね。これまでカラーでは、テーラリングとスポーツを掛け合わせることはやってきていたので、今回は新しいアプローチとしてアウトドアの要素を取り入れました。中世のテーラード、コルセット、自然、アウトドア、近未来。さまざまなものがインスピレーションとなっています。

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──スタイリストはカラーを何度か担当しているカミーユ・ビドー=ワディントン(Camille Bidault Waddington)。
好きなスタイリストの一人なので、是非と思ってお願いしました。カミーユ自身、僕に変わって戸惑いもあったと思うんですが、僕がイメージしている以上のものを作り上げてくれたと思います。

カミーユ・ビドー=ワディントン
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──テクノ調のショー音楽が印象的でした。
アグラフ(agraph)名義で活動している牛尾憲輔さんにお願いしました。牛尾さんと僕は同世代なのでお互いの青春期とも言える90年代テクノの様なニュアンスを取り入れたかったんです。アンビエントで始まり、クラシックが徐々に変容していきます。
あと実はショー前にはコーネリアス小山田圭吾さんに制作していただいた曲を静かに流していました。
──今回、堀内さん主導で開発した新しい素材はありますか?
チェック柄のウールなど、いくつかの新しい素材開発にも取り組みました。基本的には、カラーが長年信頼を置いている日本の生地メーカーさんに引き続きお願いしていますが、一部はイタリアやスペインの素材を加えました。

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──堀内さんが手掛けるなら、色は黒で統一するのではと予想していました(笑)。
いろいろな方に同じ意見を言われましたね(笑)。元々カラーは黒をあまり使わないので、今季は少し黒を混ぜたことで目立ったところはあるかもしれません。ただ、カラーならではの色彩感覚は今後も大切にしていきたいと思っているので、黒一色になることはないと思います。
リサーチ先になるブランドへ
──今後、カラーをどのようなブランドにしていきたいですか?
大人の知性を感じさせながらも、どこかユーモアを忘れないブランドであり続けたいと思います。そこはカラーのアイデンティティと僕自身の美学が共鳴する部分だと思っています。テーラリングの伝統を守りながら、そこに少し遊び心やウィットを加えるというDNAは今後も大切にしていきます。
また、ウィメンズに関しては、さらなる可能性を感じています。今回のコレクションで提案したウィメンズのルックは、フェミニンな要素ももちろんありますが、今までよりも男性的な印象にジェンダーの境界線がより曖昧になったのではないかなと。この微妙なバランスの変化も、新生カラーの方向性を示しているのかもしれません。ジェンダーレスというよりは、むしろ両方の要素を取り入れた、複雑で豊かな表現を目指していきたいと考えています。
──堀内さんにとって「ユーモア」とは何ですか?
僕にとってのユーモアとは、多様な事柄に対する好奇心から生まれるものです。それが直接的にファッションデザインに表現されていなくても、関心を持ち続けることで、作品に一種の「薄い膜」のような奥行きが生まれると思うんです。この感覚を持ち続けるためには、世界のさまざまな変化や出来事に敏感でいる必要があります。ファッションデザイナーとして、単に服だけを見ているのでは不十分で、政治、文化、テクノロジー、環境問題あらゆる事象に対する感度が、最終的には服作りにも反映されると思います。

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──カラーを通じた堀内さん自身の目標は?
僕自身としては数字的な成功も重要ですが、他のデザイナーがリサーチの対象として参照するようなブランドになれたらいいですね。海外の友人デザイナーたちと話していると、カラーも含めた日本のさまざまなブランドが常にリサーチソースの一つとして尊重されていることがわかります。優れたコレクションというのは、次世代のクリエイターたちのインスピレーション源になるものだと思っていて、それはつまりファッションの歴史に名を残すということだと思うんです。
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