「カサブランカ」2021年春夏コレクション
「カサブランカ」2021年春夏コレクション
Image by: Casablanca

Fashion注目コレクション

雨の後には虹が昇る――シンプルで力強いメッセージを軽やかに伝えた「カサブランカ」

「カサブランカ」2021年春夏コレクション Image by Casablanca
「カサブランカ」2021年春夏コレクション
Image by: Casablanca

 「今パリでもっとも勢いのある若手のメンズブランドは?」と聞かれたら、この1年の私は「カサブランカ(Casablanca)」のシャラフ・タジェル(Charaf Tajer)と答えている。根っこはストリートなのに品がある"ストリート・エレガンス"という新ジャンルを作った旬な男の作る映像は、やっぱり最高に洒落ていた。

(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎

 夕暮れの南国のビーチ。激しい雨が降った後の空はピンク色に染まり、水平線の向こうには虹色の橋がかかっている。そんな自然の芸術を見るために、あるいはそれを肴に飲むために、おもいおもいに着飾った若者たちがビーチに集まり始めた。こんなストーリーでカサブランカの21年春夏コレクションの映像は幕を開けた。

 彼らは肩の力が抜けているのに、とびっきりお洒落だ。シグネチャーの総柄のシルクシャツに太めの白のトラウザーを合わせたり、チェックのダブルブレストのスーツを5連のパールネックレスで飾ったり、ブラック&ホワイトのシャネル風スーツに同色のデッキシューズを合わせたり......。カジュアル化が極端に進んだ現代社会では過剰な装いなのかもしれないけれど、絶妙なヌケ感とストリート感があるから不思議と嫌味がない。

 シルクシャツのモチーフは、椰子の木やビーチなどの海を連想させるものが中心。デニムのセットアップもレインボーカラーのイラストで、南国ムードが色濃く漂う。白のパイルとボーダーのサファリジャケットは、ジャングルではなく海沿いの夜の街を探検するための"夜の戦闘機"。合わせるパンツは、70年代風のフレアシルエットだ。ブランド認知度を高めるきっかけとなったニューバランスとのコラボレーションスニーカー(327)は、スーツやジャケットの柄と連動した新色をラインナップ。こちらは前回以上の争奪戦になりそうだ。

 映像の終盤には、ミントグリーンのサーフボードを積んだオレンジ色のナローポルシェが登場する。カサブランカの最新コレクションが"擬車化"したような完璧な選択で、あらためてシャラフが精通する文化の奥行きの深さに感銘を受けた。

 テーマは「AFTER THE RAIN COMES THE RAINBOW(雨の後には虹が昇る)」。ピンクとベージュのサイケデリックなインビテーションに書かれたこの言葉を最初に確認した時、シャラフの優しいつぶらな瞳を思い出した。ギャングの親玉みたいなルックスなのに、サングラスの奥の瞳は昭和の少女漫画のヒロインのようにキラキラしているのだ。このシンプルで力強いメッセージを、シャラフは軽やかに(少しの哀愁を散りばめて)伝えた。そう、止まない雨はないのだ。このコレクションがデリバリーされる来年の春には、椰子の木柄のシルクシャツを着て伊豆の海に出かけるとしよう。

文・増田海治郎
雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。自他ともに認める"デフィレ中毒"で、年間のファッションショーの取材本数は約250本。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。>>増田海治郎の記事一覧

最新の関連記事

Realtime

現在の人気記事

    次の記事を探す

    Ranking Top 10

    アクセスランキング