

毎月、どこかのブランドが発売し賑わいを見せる"キャラクターコラボ”。限定デザインによるパケ買い訴求からキャラクターのストーリーまで反映させる商品設計など、その手法はさまざまだ。今回は化粧品におけるキャラクターコラボのパイオニアともいえる「シュウ ウエムラ(shu uemura)」の担当者に、その裏側をインタビュー。あふれるコラボ施策のなかで、存在感を放し続けることができる背景とは。さらに各ブランドの最新施策から、コラボ企画の差別化ポイントを探る。
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化粧品におけるキャラクターマーケティング
キャラクターとのコラボ施策は、顧客接点によるブランド認知の拡大やキャラクターファンといったこれまでにない新客の獲得など、限定品として購買意欲を刺激する起爆剤として重要視される戦略のひとつ。なかでも日本のキャラクタービジネスは、海外需要を取り込み、輸出産業として確立されるほど発展している。矢野経済研究所によれば、日本国内の2026年度キャラクタービジネス市場規模(商品化権・版権)は前年度比3.0%増の2兆9635 億円と、堅調な推移を予測する。
SNS時代の映えムーブメントも相まって、新作のコラボコスメはさまざまに登場しているが、その先駆者ともいえばシュウ ウエムラ。同ブランドは2017年に「スーパーマリオブラザーズ(SUPER MARIO BROS.)」とのタッグで本格的なキャラクターコラボの口火を切り、その後も「ハローキティ」「ポケモン」など話題のコラボを連発している。その戦略とはーー。
コラボは、伝統の殻を破るための表現のひとつ
⎯⎯百貨店コスメブランドにおいてキャラクターコラボが珍しかった当時、取り組みを始めたきっかけを教えてください。
シュウ ウエムラは、アーティストとの取り組みも加えると20年以上にわたりコラボレーション領域を切り拓いてきました。最初の一歩は、「アートは生き方そのものである」という創始者 植村秀の哲学から生まれています。
アーティストやキャラクターなどの多様なコラボレーションは、美容業界におけるさまざまな伝統を打ち破るための私たちならではの表現方法となりました。そのきっかけとなったのは、メイクアップを「文化的な対話」へと昇華させたいという強い想いからです。人々から愛されるアイコニックな存在を取り入れ、東京から生まれたブランドの芸術性とプロフェッショナルの精密な技術というフィルターを通して、新たな姿として描き出しています。
⎯⎯未開拓の領域への挑戦には、数多くの課題や困難も多かったのではないかと想像します。キャラクターの世界観を表現するうえでどんなことを意識しましたか?
私たちの大きな挑戦であり、同時に最大の誇りは、“シュウ ウエムラとパートナーの双方が真に融合した姿”を生み出すことです。私たちは、キャラクターをパッケージに「コピー&ペースト」するのではなく、必ずシュウならではの遊び心やひねり(シュウ・ツイスト)を加えています。
その難しさは、キャラクターの世界観やルールを徹底的に守りながら、シュウ ウエムラのDNAである「東京発のエッジーな芸術性」を落とし込み、完璧なバランスを保つことにあります。キャラクターの物語を、メイクアップ製品という全く異なるカタチで表現するには、膨大な時間と緻密な計算、そしてお互いのクリエイティブを高め合うための深い対話が欠かせません。
そうして生み出された製品は、どちらか一方のブランドだけでは決して辿り着かないような、まったく新しく、より高次元へと昇華された「ひとつのアート作品」となります。
⎯⎯コラボレーションを実施する際は、どのようなプロセスから着手しますか?
まず、それぞれのコレクションにおいて「お客さまとどのような新しいクリエイティブを共有したいか」を慎重に話し合います。このヴィジョンを軸に、単にトレンドを追うだけでなく、私たちの「芸術性(アーティストリー)」や「匠の技」と真に共鳴し合えるパートナーを見極めていきます。
⎯⎯パートナーを選定する際の基準は、ほかにもありますか?
「アート・テインメント」と呼ぶ、芸術性とエンターテインメントの完璧な融合(50:50のバランス)です。具体的には、次の3つのポイントを重視しています。
- 「シュウ・ツイスト」を生み出すクリエイティブな相乗効果
単なるキャラクターのコピー&ペーストにとどまらず、日本・東京の価値観でエッジーに再構築する「シュウ・ツイスト」を表現できるか視覚的アイデンティティを備えているか。 - 精密さとクラフトマンシップ
細部への徹底的なこだわり、という「同じ熱量」を共有できるかどうか。この強い絆があって初めて、コレクションのために開発される限定カラーや革新的なテクスチャー、限定パッケージデザインなどの製品開発の限界を押し広げることができます。 - 感情を揺さぶるストーリーテリング
最後は、美容を愛する人々の心に深く響く「エンターテインメント」を届ける力です。毎日のメイクアップの時間を、インスピレーションに満ちた芸術的な体験へと変えてくれる、そんな世界観を一緒に作っていけるパートナーを求めています。
実際にプロジェクトが始動すると、パートナーとの直接のコミュニケーションによって、製品開発は自然と活性化していきます。 最初の対話の瞬間から、私たちのブランドが持つ伝統(ヘリテージ)と、本物の「クリエイティブな融合」にかける強い想いを直接伝えることができるため、キックオフ時の対話は不可欠なプロセスとなっています。
⎯⎯一方通行ではない対話を経るからこそ、存在感を放つコラボレーションが実現しているんですね。スーパーマリオブラザーズを始め、ハローキティ、ワンピース、ポケットモンスターなど、これまでの多くのコラボが日本発のキャラクターです。メイド・イン・ジャパンへのこだわりはあるのでしょうか?
東京の中心で生まれたブランドとして、私たちは日本の歴史や伝統に深い誇りを持っています。日本生まれのアイコンと頻繁にコラボレーションを行うことは、私たちのルーツに敬意を表し、日本のクリエイティブな力を世界中の人々に発信するためのアプローチです。一方で、世界にはシュウ ウエムラのDNAと共鳴するクリエイティブで魅力的なキャラクターたちがあふれているとも感じています。私たちの芸術的なヴィジョンを共有できるグローバルなアイコンに対しても、常に門戸を開いています。
大切にしたのは、心に訴えかける情緒的価値
⎯⎯コラボから通常の商品戦略に生かしたこと、相乗効果があったことがあれば教えてください。
これまで取り組んできたコラボレーションは、私たちが時代に即した存在であり続け、人々の好奇心を刺激し、そして新たな美容を愛する人々を私たちのコミュニティに迎え入れる上で、極めて重要な役割を果たしてきたと自負しています。ここでの最大の学びは、「エモーショナルバリュー」(情緒的価値)の重要性です。
これまでのパートナーシップを通じて、私たちはすべての活動の中心に「お客さまの感情」を据えるようになりました。ブランドを象徴するクレンジング オイルをはじめとする、高品質・高機能な製品をお届けすることだけに留まらず、お客さまの日常に特別な興奮や喜びをどのようにもたらすことができるかを深く理解することが大切である、と気づかされたんです。
また、私たちが創り出すカラーやテクスチャーが、毎日のルーティンにどう溶け込んでいくかについてもより心を配るきっかけになりました。「朝、このシェードをまとうとき、どんな気持ちになるだろう?」「このパッケージは、お客さまのドレッサーにどのようなインスピレーションをもたらすだろうか?」と、自分たちへの問いかけを忘れないようにしています。
⎯⎯コラボレーションアイテムは、オリジナルカラーの開発からヴィジュアル制作までキャラクターの世界観を深く表現します。そのために行っている取り組みや考えを教えてください。
コラボレーションに対する私たちのマインドセットは、、「コラボレーションのアート」です。両者の深い融合を実現するために、プロジェクトの初日からメイクアップアーティスト、プロダクトデザイナー、そして研究所の担当メンバーを巻き込んでいます。
そのうえで、オリジナルの色(シェード)や質感をゼロから生み出したり、これまでにない製品の開発に挑んでいます。そのためには、コラボレーターの価値観や伝統、ヴィジョンを深く理解するだけでなく、緻密な技術とアートへのこだわりが欠かせません。だからこそ、キャンペーンヴィジュアルも単なる製品宣伝にとどまらず、ハイファッション誌のエディトリアルのような、上質で洗練された仕上がりになっています。
⎯⎯キャラクターコラボが飽和しているいま、シュウ ウエムラらしさをどのように意識していますか。
市場がどれほど飽和しても、私たちはブランドの伝統(ヘリテージ)を決して見失いません。自らの原点に立ち返り、創始者である植村秀の先見性に満ちた思想からインスピレーションを得ています。コラボレーションは、彼が先駆者として切り拓いた「モードメイクアップ」へのオマージュであり、それを現代に蘇らせるプロセスです。
アトリエのアーティストたちの手によって、創業当時から続くアヴァンギャルドで「モード」な芸術性は、現代の文脈へと再解釈されています。私たちにとってコラボレーションとは、単に流行に乗るための手段ではなく、芸術性を表現するための「キャンバス」です。
時代に合わせて自分たちの本質を変えるのではなく、新しく刺激的なクリエイティブと融合することで、伝統を絶えずアップデートしていく。それこそが、常に時代をリードし続けられる理由です。
各ブランドの最新コラボで見る、キャラクターマーケティングの広がり
長く続くコラボビジネスは、収まるどころか、勢いを増している。さまざまなブランドが人気キャラクターとのコラボアイテムを発売。コラボアイテムが市場にあふれる中、各ブランドは差別化を図るべく、オリジナリティのある施策を実施する。
イベント同時開催で盛り上げる「オルビス」

8月6日まで「SKINCARE LOUNGE BY ORBIS」で開催されているイベントの様子
Image by: FASHIONSNAP
「オルビス(ORBIS)」は、「ピングー(PINGU)」とコラボレーションし、実施に合わせて体験特化型施設SKINCARE LOUNGE BY ORBISでのイベントを開催した。限定デザインのコスメの販売に加え、スムージーも用意し、空間全体を通して自社のコスメとキャラクターの世界観が楽しめる演出をしている。
複数ブランドとともにプロジェクト化「コスメキッチン」

5月に発売されたコスメキッチンとハローキティコラボアイテムの一部
Image by: Cosme Kitchen
小売店としての強みを活かし、オリジナル雑貨や取り扱う人気ブランドを巻き込んだ横断コラボ企画が話題となる「コスメキッチン(Cosme Kitchen)」は、5月にハローキティとの初のコラボを実施した。韓国発「アロマティカ(AROMATICA)」をはじめ、「ファミュ(FEMMUE)」、「ラ・カスタ(La CASTA)」、「ラブクロム(LOVECHROME)」などと組み、全18種の製品を揃え、横串の提案が人気を集めた。6月のピングーとのコラボレーションでは、ファッションとも連動。ファッションブランド「スナイデル(SNIDEL)」でピングーのワッペン刺繍付きのミニワンピース(1万5950円)や、ポロ襟とアメスリデザインのタンクトップ(9900円)などを展開。コスメキッチンが「オーバイエッフェ(O by F)」の冷感のある洗い上がりの3in1 シャンプー(3080円)とドライシャンプー(2420円)や、「青パパイヤ酵素」の30包入り缶セット(6804円)などを販売した。プレス担当者は「『ピングーが可愛くて使い始めたらオーガニックだった』という入り口で、先入観なく多くの方に試していただくきっかけになれたら」と期待を寄せた。
そして8月21日には、「miffy(ミッフィー)」とのコラボアイテム第3弾が登場する。「トーン(to/one)」「ジョヴァンニ(giovanni)」など人気ブランドから、全18種のアイテムがお目見えする。
ハリー・ポッター×「アンドビー」スペシャルコレクション




(左から)&be スポンジケースセット ヘドウィグ、賢者の石
Image by: &be
ヘア&メイクアップアーティストの河北裕介がプロデュースする「アンドビー(&be)」は、25周年を迎えた「ハリー・ポッター」とのコラボレーションアイテム(全8種)を発表。「&be UVプライマー リッチモイスト H」(限定品、全4色、各3080円」、「&be ラスティングクッションファンデーション H」(限定品、全2色、各3740円)を用意。中でも、魔法動物“ヘドウィグ”と“賢者の石”をモチーフにした「&be スポンジケースセット」(限定品、各1760円)の愛着が湧くデザインがキャッチーだ。
貝印は「ドラゴンクエスト」のスライムスポンジを発売





ドラゴンクエスト スライム3Dパフ&ドラゴンクエスト ファンデーションが染みこみにくいパフ(はぐれメタル)
Image by: 貝印
グローバル刃物メーカーの貝印は、発売40周年を迎える「ドラゴンクエスト」シリーズとコラボレーションし、愛らしい表情の「ドラゴンクエスト スライム3Dパフ」(全3種、各770円)と「ドラゴンクエスト ファンデーションが染みこみにくいパフ(はぐれメタル)」(605円)を発売し話題を集めた。
最終更新日:
Hiroko Ishiwata
編集・ライター
1982年、茨城県生まれ。出版社勤務を経て独立。雑誌編集部所属時はファッション、ビューティ、カルチャーなど幅広いジャンルを経験。顔面疾患を機に鏡と向き合う時間が増えたことで肌とスキンケアへの興味が強まり、日本化粧品検定1級を取得。料理下手な二児の母。
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