【連載】「なぜ若者がファッション業界を目指さなくなったのか」VOL4:東京大学「fab」代表 横山由佳・吉備悠理

左からfab代表の吉備悠理さんと横山由佳さん
左からfab代表の吉備悠理さんと横山由佳さん
Image by: FASHIONSNAP

 近年、日本のファッション教育機関が世界でも高い評価を受ける一方で、ファッション業界を目指す服飾系専門学生の数は年々減少し、現在約1万5000人と教育現場としてはニッチなものになってきている。服飾系学校ではなくサークルでファッションに関わる学生は、ファッションをどう捉え、ファッション業界に何を思うのか。「なぜ若者がファッション業界を目指さなくなったのか」第四回目は、東京大学の服飾系インカレサークル「fab」代表の横山由佳さん(東京大学 工学部建築学科3年生)と吉備悠理さん(東京大学 医学部健康総合科学科3年生)。

 

 「fab」はこれまでに東京芸術大学や明治大学、杉野服飾大学、国立看護大学など、様々な大学の学生が参加しているが、現在の部員数は5名と少人数。それでも年に1〜2回、会場の選定から演出、服作り、広報を担当し、ファッションショーや展示会を開催しているという。


fab代表 横山由佳さん

 ー「fab」の紹介をお願いします。
横山:fabは2005年に創立し、2008年から2013年までは東京大学博物館工学ゼミと共同でファッションショーを開催していました。当時は、ファッションデザイナーの滝沢直己さんをアドバイザーに迎えて、月に一回くらいのペースで試作品を見せてアドバイスを頂いていました。でも、博物館工学ゼミの仲介をしてくださっていた西野教授が、東京駅KITTE内のIMT(学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」)の関係で忙しくなってしまい、今はサークル単体で活動しています。

 ー1年間のスケジュールは。
横山:まずショーの開催時期を決めて、約2ヶ月かけて全体のテーマを話し合い、決まったらテーマに合う場所のリサーチと個人のコンセプト決めを並行して行います。その後、約3ヶ月かけて制作に取り組みます。テーマ決めはいつも難航しますが、色々な美術館に行ったり本や写真集などをみんなで共有しながら決めることが多いですね。

fab代表 吉備悠理さん

 ー博物館の工学ゼミと共同で活動していた時と現在を比べてみて。
横山:以前は「モード&サイエンス」がテーマだったので理系の知識とデザインをどうやって融合させるかや、博物館の展示品とどのようにコラボレーションするかを考えていました。博物館との共同活動が終わってからは、文系の哲学的なテーマを取り入れてよりコンセプチュアルになっていると感じています。

吉備:自由になったかもしれないですね。でも、西野教授や滝沢さんに見てもらうのは大事な機会だったと思います。今はそういう機会もないので、大学の教授やファッションに携わる人に見てもらう機会を作りたいと考えています。

 ー今年3月に開催した展示「もぬけのから」はどこから着想を?
横山:夏合宿で新潟の「大地の芸術祭」に行った時に見た、空家や廃校を利用した作品にインスピレーションを得ました。「もぬけのから」は、人が十二単を脱いだ時に重なり合う着物が作り出す空間に由来し、後に主の消えた空間を指す言葉に変わっていったと言われています。「もぬけのから」をテーマに、空間と服との関係について考えることにしました。

 ー空間と服との関係性とは。
吉備:fabでは人間が関わるものをベースに考えています。今年3月には、人が生活する"空間"と人が身に着ける"服"について表現することに試みました。

横山:そうですね。モードの服というより、人間の生活環境としての服を捉えました。服を多角的に見るとどうなるのか?というのは常にfabのテーマでもあります。

 ーファッション以外の専門分野をどのように服作りに活かしているか。
横山(工学部建築学科):もともと現代美術が好きで、空間に対して作品が置かれた時にどうなるのかということに興味があります。スケールの違いはありますが、建築も服も人間の環境を作っていくという点で似ているところがたくさんあるので、建築の勉強とファッションをリンクさせて考えたりしています。

吉備(医学部健康総合科学科):私は、看護や栄養や保健など人間を相手にする学問を専攻しているので、命について考えたことや、服を着た時に人はどう感じるかなど、人をベースにした考えを服飾に起こすことにチャレンジしています。ファッション以外の専門分野を学びながら服作りをすることで、枠にとらわれず自由に制作できたり、別分野の知識・価値観を服に掛け合わせた新しい物作りができると思います。服飾を専門に学ぶ人は、基礎を沢山やっていくうちに型破りのような発想が生まれにくいそうで「なんでこんな発想が浮かぶんですか?」と言われたことがあります。「そもそも私たちには破る型がないからね」と思っていますが(笑)。

 ー「fab」に入ったきっかけは。
横山:もともと服には興味があって、雑誌やニュースなどを見る程度でしたが、サークルのビラを見てショーの演出をしてみたいと思い参加しました。

吉備:私も幼い頃、ファッションデザイナーを夢見ていましたが、いつしかなりたいとは思わなくなりました。サークルのビラ詰め封筒の中に入っていたビラを見つけて趣味としてならいいなと思い、とりあえず見学に行ってそのまま入ってしまいました。

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