Fashion 連載

連載「ふくびと」ゴヤール&ザ・コンテンポラリー・フィックス 吉井雄一

吉井雄一
吉井雄一
Image by: Fashionsnap.com

 名だたる東京のショップでバイイングを手がけてきた吉井雄一氏は、東京のファッションシーンにインディペンデントな新風を吹かせてきた人物だ。現在、東京・青山の注目ショップ「THE CONTEMPORARY FIX(ザ・コンテンポラリー・フィックス) 」オーナー、そして「GOYARD(ゴヤール)」ジャパンブランディングディレクターを務めている吉井氏。その「ふく(服・福)」と深く関わり影響を与え続けてきた軌跡を振り返り、人生を変えた「ゴヤール」ファミリーとの驚きのエピソードやファッションに対する熱い思いなど、惜しみなく語ってもらった。

 

 吉井氏は、飲食業「PARIYA(パリヤ)」を営むかたわら、伝説のサロン「CELUX(セリュックス)」バイヤー、セレクトショップ「LOVELESS(ラブレス)」ヘッドコーチを経て、2008年に自らのショップ「ザ・コンテンポラリー・フィックス 」を立ち上げた。2010年夏にショップの大リニューアルを実施し、それまで手がけてきた飲食とファッションを融合。「ザ・コンテンポラリー・フィックス」1Fにカフェ&デリ「パリヤ」を導入し、新たなステージを迎える――――。


ジェラート屋から、母の死をきっかけにファッションの道へ

 母がニットデザイナーだったのですが、作っていたのはカシミア製の1着30万円もするような高級品でした。とにかく色の美しいものが好きな親で、小さい頃からそのそばで遊んでいるうちに、毎シーズン1枚はアーガイル柄を組まされたりもしていました。それで物心ついた時から自然と洋服が好きになり、若い頃は古着やコムデギャルソンなどいろいろと興味がありましたね。10代でこれだけ分割の支払いがあるのは異常なんじゃないかというくらいの買い物をしていました(笑)。

fukubito_yoshii_06.jpg でも、ただ洋服が大好きなだけで、仕事にするのは飲食業と決めていたんです。96年くらいにジェラート屋「PARIYA(パリヤ)」を創業して、そこでお弁当も始めました。ようやく流行ってきたかなという26歳の時、母が突然亡くなって・・・。僕には、早くに父と離婚して、働きながら女手一つで3人の子供を育ててくれた母に「息子としてなにかしら母の意思を継ぐものを」という気持ちが強くありました。しかし自分はデザインが出来る訳ではないので、青山に物件を見つけて、当時好きだったヴィンテージを取り扱うショップを始めました。自分で定期的にニューヨークやロサンゼルスに行っては個人宅を訪ねてまわったり、新聞に「ヴィンテージ買います」と広告を出したりと地道でしたね。大きな資本があるわけではないので、売り上げが出たらキャッシュを握って格安のチケットで飛行機に乗って買い付けに行くという状態からのスタートでした。

伝説の会員制セレクトショップ「セリュックス」のバイヤーに

 ヴィンテージショップをオープンしてからは、だんだんとヴィンテージブームが加熱して、値段がどんどん上がっていました。たまたま良い顧客さんたちに恵まれたのもあったのですが、小さなブティックなのに売り上げが月に1000万円を越えてしまったんです。どれも1点物なので、とびきりのものを買い付けても1人の人に売ったら終わり。だから商品がまわらなくなり、買い付けの頻度も上がっていきました。飲食業も平行して営業していたので、次第に疲れが溜まって、身体ももたなくなっていました。「何かが違う。もう止めよう」と思っていたその頃にLVMHのサロン「CELUX(セリュックス)」バイヤー就任のお話を頂き、いい機会なので引き受ける事にしました。

 「セリュックス」は画期的なセレクトショップで、入会金を払って初めてショップへのカギがもらえるという当時は憧れのショップでした。しかしバイヤーとしては入会するのに20万を払わないと入れないような店に並べる商品を買い付けないといけない。"どれだけ最高なものを置くのか"という部分ではすごくプレッシャーでしたね。普通の店に売っているものではダメ。やりがいはありましたが、責任のある重要な仕事でした。

ゴヤールとの一生忘れられない瞬間

 「GOYARD(ゴヤール)」を知ったのはヴィンテージショップを始めた頃なのですが、初めは単純に"ゴヤールディン"という杉綾模様に惹かれました。「パリに行った時には必ず直営店に寄って、何か1個は買おう」と自分の掟を作り頑張って買い続けていたんです。

 「セリュックス」のバイヤーを務めた後、新しいセレクトショップの立ち上げのお話を頂きました。それが「LOVELESS(ラブレス)」です。店作りの段階ではじめに思ったのは"新しくてフレッシュじゃないといけない"ということ。ファッションは、シーズンごとに前シーズンを否定するかのように、どんどんトレンドが変わっていきますよね。でも一方では、永遠に変わらないものの素晴らしさがあるとも思っています。だからラブレスの4層のお店の真ん中にある1階の核となる部分に、時代に動かされないオーセンティックなものを置きたいという考えが浮かび、「ここにはゴヤールしかない」と心に決めたのです。

 しかし「ゴヤール」は1国1店舗主義。日本ではすでにある百貨店で展開されていました。それでも飛行機に飛び乗ってパリへ向かいゴヤールへ交渉しに行きました。

最新の関連記事

おすすめ記事

Realtime

現在の人気記事

    Ranking Top 10

    アクセスランキング