

新鋭デザイナーが世界6都市で発信する「グローバル・ファッション・コレクティブ(GFC)」が、2026年春夏シーズンのランウェイショーを開催。多様な文化や価値観を内包するブランドが一堂に集い、それぞれの舞台で新たな表現と時代性を映し出した。ニューヨーク、ロンドン、パリ、ミラノ、東京、バンクーバーの各都市から注目のコレクションをピックアップし、個性豊かなクリエイションの広がりを追う。
NEW YORK
Wenny Han(ウェニー・ハン)




Wenny Han 2026年春夏コレクション
ニューヨークでデビューを飾ったウェニー・ハンは、ミニマルでありながら、ひねりをきかせたカッティングや、巧みなレイヤード、美しいフォルムで鮮烈な印象を残した。中国生まれ、カナダ・アメリカ育ちというグローバルな背景を持ち、異なる文化の美意識を織り交ぜた服は、アートピースのような存在感と洗練された実用性を併せ持つ。個の内面を造形として可視化するコンセプチュアルなアプローチで、次世代の新たな感性を提示した。
LEESLE(リースル)




LEESLE 2026年春夏コレクション
韓国の伝統衣装・韓服を現代に昇華させたリースルは、軽やかな素材と艶のある質感を用いた、流線的なシルエットが際立った。韓服特有の前合わせや巻きスカートの構造を、シアーな素材やコンテンポラリーなカッティングで再解釈し、伝統とモダンを見事に融合させている。アーティストの衣装制作やグローバルブランドとの協業でも知られるリースルが、今回のショーでは韓服の新解釈を通し、文化を越えて共鳴するスタイルを打ち出した。
Ashlyn So(アシュリン・ソー)




Ashlyn So 2026年春夏コレクション
「Recolored」と題し“再生”をテーマに、内に秘めたエネルギーを立体的なフォルムへと昇華したアシュリン・ソー。サンゴ礁から着想を得た色彩と質感のグラデーションは、ダイナミックなボリュームとともに躍動し、生命の息吹を感じさせる。14歳でデビューを果たした若きデザイナーが描くのは、社会的な圧力や同調によってすり減った感情の解放。壊れやすいものを慈しみ、自分らしさを肯定するようなメッセージがショー全体に息づいている。
LONDON
CEDIM(セディム)




CEDIM 2026年春夏コレクション
メキシコのデザインスクール「CEDIM」は、7人の新進デザイナーによる共同コレクション「PLAY」を発表。幼少期の遊びや身体感覚を手がかりに、創造の原点を多面的に探る試みが目を惹く。ランウェイでは、誇張されたボリュームで衝動を可視化したルックや、布を連ねて記憶の堆積を表現したドレスなど、多彩なアプローチが並んだ。遊びを「再生」や「抵抗」の視点から捉え直した解釈が造形に落とし込まれ、複数デザイナーの集合体でありながら一貫したテーマ性を保っている。異なる表現と一貫した視点が共存し、新世代による想像力の広がりを感じさせるコレクションとなった。
WIJNRUIT(ウィンルート)




WIJNRUIT 2026年春夏コレクション
ロンドンを拠点に活動するジュエル・ケイが手掛けるウィンルートは今季、“崩壊から生成へ”という変容のプロセスをテーマに設定。シャープなテーラリングに、サテンやレースといった異なる質感を融合し、硬質さと流動性、緊張と緩和が交差するフォルムを構築。着崩しのニュアンスがストイックな造形にしなやかな動きを生み出し、相反する要素を融解させている。ロンドンらしい実験精神のもと、均整を崩した美しさで新たな表現を切り拓いた。
PARIS
BOUTIQUE JUNE(ブティック・ジューン)




BOUTIQUE JUNE 2026年春夏コレクション
日本発ブランド、ブティック・ジューンが発表した「Light and Shadow」は、ホタ織の生地に水墨画のような深みのある墨染めを施し、光と影が交錯する奥行きを描いたコレクション。手織りならではの不均一な表情や、染めの濃淡が生む陰影、漆ボタンや立体的な縫製には、職人の手仕事と素材の生命力が滲む。伝統技術と現代の感性が交わる日本の美意識は、控えめな色調ながらもパリのランウェイに確かな存在感を示した。
VANEUM(バニューム)




VANEUM 2026年春夏コレクション
バニュームのコレクションは“静けさの中の高揚”がテーマ。リネンやシアー素材を中心とした空気をはらむシルエットに、ホワイトやベージュの柔らかなトーンが重なり合い、穏やかなリズムを生み出している。日常の延長にあるエレガンスを軽やかに表現し、素材の質感を活かしたクリーンさも心地いい。実用的でありながら、ノンシャランな魅力と品のある佇まいで、日本独自のニュートラルな感性を世界へと広げている。
MILAN
Eastcultivital(イーストカルティヴィタル)




Eastcultivital 2026年春夏コレクション
イーストカルティヴィタルは中国発ブランドらしく、無形文化財にも指定される刺繍技法をはじめ、職人の手仕事を随所に取り入れた華やかなルックでランウェイを彩った。光沢を帯びたサテンや重厚なベルベット、朱や金の糸で色鮮やかに施された刺繍、ケープスリーブやショートジャケットの独特なフォルムが、伝統的なチャイナウェアを彷彿とさせる。東洋の美意識を現代に昇華したアプローチで、気品あふれるスタイルを印象付けた。
TESS MANN ATELIER(テスマン・アトリエ)




TESS MANN ATELIER 2026年春夏コレクション
壮麗な美しさが漂うテスマン・アトリエは、ヴェルサイユ庭園に着想を得たコレクションが印象的。建築的なシルエットと緻密な装飾が織りなすドレスは、バロックの華やかさと現代的な軽やかさを巧みに共存させている。幾重にも重なるレースや贅沢なフリル、花を思わせる立体的なモチーフが動きに合わせて表情を変え、ロマンティックな高揚を生み出す。職人技が冴え、造形美に富んだルックの数々は優雅な余韻を残している。
TOKYO
Ayaka Oshita(アヤカ・オオシタ)




Ayaka Oshita 2026年春夏コレクション
羽のようなフォルムが舞い、裂かれた布が揺れる。アヤカ・オオシタが描いたのは、抑圧された感情が解き放たれ、服の形に落とし込まれた世界。ほつれたリボンや刺繍のあしらいにも儚さと再生の気配が滲み、どこか退廃的でありながらもアジアの情緒を忍ばせている。その情感を支えるのは、歴史ある繊維産地である尾州のウール。素材の深みと手仕事の温もりが息づくコレクションは、伝統を受け継ぎながら未来へと繋ぐ意志をも感じさせる。
WooLeeX(ウーリークス)




WooLeeX 2026年春夏コレクション
メットガラの眩いエネルギーに着想を得た台湾発ブランド「ウーリークス」。スパンコールやパールスタッズ、異素材の大胆な掛け合わせなど、装いを楽しむ自由な精神でショーに高揚感をもたらした。装飾性と遊び心が共存する一方で、レースやフリルといった甘いディテールの裏には、意志の強さを感じさせる反逆のエッセンスも見え隠れする。挑発的な華やぎと過剰さを謳歌する装いで、ドレスアップの概念を新しく塗り替えた。
VANCOUVER
L’Enfant Unique(ロンファン・ユニーク)




L’Enfant Unique 2026年春夏コレクション
クラシックなエッセンスに遊び心を掛け合わせた、ロンファン・ユニーク。淡いピンクやサックスブルーの軽やかなカラーパレットに、オーガンジーやサテンなど、透過と艶のニュアンスを重ね、カジュアルなTシャツやトレーナーにも上質さをもたらしている。首元のタイやロゴ使いには、ほんのりスクールムードなノスタルジーが漂い、ピュアな感性と大人の洗練が調和した独自のスタイルを確立している。
Remake Innovation Project(リメイク・イノベーション・プロジェクト)




Remake Innovation Project 2026年春夏コレクション
日本の静岡を拠点に展開するR.I.Pは、スティーブ・ジョブズのスピーチ「点と点をつなぐ」に着想を得たコレクションを発表。捨てられる運命だった衣服や残布を素材に、解体と再構築で新たな表情を生み出した。ねじりや裁ち切りのディテールが生む不均一なリズムや、糸が絡み合うように流動するフォルムは、生命のつながりをも感じさせる。R.I.Pはサステナビリティを出発点に、ジャパンメイドによる“再生の美学”を更新し続けている。
BLUETAMBURIN(ブルータンバリン)




BLUETAMBURIN 2026年春夏コレクション
「アートと社会貢献の共存」を理念に掲げるブルータンバリンは、ミリタリーコードを再解釈。カーキやオリーブを基調としたユーティリティウェアに、テーラリングやスーツの要素を融合させ、力強さとエレガンスを交錯させたスタイルを打ち出した。ベレー帽やメタルアクセサリーの硬質な輝きと、軽やかなファブリックとの対比が印象を際立たせ、“規律と献身”の精神を纏うタフな美しさでランウェイを魅了した。
その他、グローバル・ファッション・コレクティブ参加ブランド




























































PAPER CRAZY
text: Urara Kurihara
最終更新日:
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