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「グッチ」68組の双子を起用したショーからあぶり出す同一でありながら異質であるということ<23年春夏>

 「グッチ(GUCCI)」がミラノで開催した新作コレクションのショーは、驚きと感動に包まれていた。タイトルは「TWINSBURG」。起用したモデルが全て双子という前代未聞の演出で、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が考えるファッションの本質的な意味が表現された。

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80〜90年代のエッセンス色濃く

 会場は薄明かりの下、ポートレートが壁一面に飾られており、観客は壁に向かって着席しショーがスタート。序盤、登場するモデルは1体ずつで、通常のコレクション同様、ミケーレの世界観が凝縮されたルックが披露された。

 ファーストルックに登場した太ももが露出したガーター風のテーラードのパンツは今シーズンの特徴的なアイテムで、ドレス風のトレンチコート、90年代からインスパイアされたサイケデリックなデザインのジャケットやトム・フォード期を彷彿とさせるスーツスタイルなどが続く。サテンフリルのドレスにはレオパードタイツや、アーカイヴから引用したクマのぬいぐるみのレインボーカラーのビジューバッグを合わせたほか、レトロなリバティプリント、刺繍で施されたシノワズリやチャイナドレス風のワンピースといった東洋的なルックにヴィンテージビーズのアクセサリーを合わせた異国情緒あふれるルックも。

 アレッサンドロが幼少期に見ていたという「グレムリン」のギズモが、バッグのポケットから顔を出したり、ドレスにプリントされていたり、アクセサリーなどで随所に登場した。

 バッグでは、80年代のアーカイヴを参照した馬具からインスパイアされたヴィンテージムードあふれるデザインがカラーバリエーション豊富に展開。

「FUORI!!!」が意味するもの

 T-シャツやジャケットにあしらわれた「FUORI!!!」というワードは、OUTという意味のイタリア語で70〜80年代に同性愛者の権利を主張した団体の頭文字をとった呼称(Fronte Unitario Omosessuale Rivoluzionario Italiano)でもあり、ムーブメントを支持するマニフェストとして掲げられた。(図らずもショー翌日の9月25日、イタリアの総選挙でジョルジャ・メローニ党首率いる右派政権が誕生することを受け、アレッサンドロは自身のインスタグラムアカウントで#NOT IN MY NAME="私の名の下ではない"というハッシュタグで立場を表明している)

ショーに隠された壮大な仕掛け

 ショーの終盤、ビープ音と共に正面の壁が上がり、現れたのは全く同じ観客席、モデルのセット。まるで鏡越しに自分達の姿を見ているかのような光景が目の前に広がった。実際には、壁の向こう側にも同じ設計のランウェイが存在し同時にショーが行われており、計68組の双子が壁越しに対にウォーキングをしていたというからくり。「TWINSBURG」という今シーズンのコレクション名はゲストには事前に周知されており、過去に双子を起用したショー演出が頭によぎったファッション関係者も少なからずいたかもしれないが、意表をつく出来事にすぐには状況を理解できず、困惑した観客席からどよめきの声が漏れた。

 アレッサンドロにはエラルダとジュリアナという"2人の母親"がいたという。双子であった2人の間には遺伝的な連帯感を持っているということ以上の他者が入り込むことの出来ない親密さがあり、互いを映し出すことで互いを補完し合い、同一でありながら異質である存在であるとアレッサンドロは考察。そしてファッションも然り。(生産されることによって)増殖するものでありながら、体を通すことで最も純粋な個性の表現方法となりうる。アレッサンドロは、そのメッセージを双子という神秘的で稀有な媒体を通して証明することを試みたようにも見える。ショーのフィナーレ、双子が互いの手をとってウォーキングを披露する場面では、"片割れ"の存在を確認し、思わず笑みを浮かべるモデルの姿も。会場に居合わせた全員がこの不思議でエモーショナルな体験を共有することとなり、最後にアレッサンドロがステージ袖から登場すると、会場からは惜しみない拍手と歓声が送られた。

video by Courtesy of Gucci

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