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次のマックイーンとの噂も H&Mデザインアワード勝者の実力は?

リチャード・クイン
リチャード・クイン

 有望な新人デザイナーを排出するロンドンで、「H&M(エイチ&エム)」が主催する「H&M デザインアワード 2017」が開催された。栄冠に輝いたのは、今年2月のロンドン・ファッション・ウィーク中に行なわれたセントラル・セントマーチンズ美術大学MA卒業ショーで注目を集めたリチャード・クイン(Richard Quinn)。次のアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQUEEN)やジョン・ガリアーノ(John Galliano)とも噂されている"期待の新人"の勝因とは?(取材・文:ファッションジャーナリスト 益井祐)

 

 クインの卒業コレクションのショーで来場者の注目を集めたのは、リー・バウリー(Leigh Bowery)を彷彿とさせたボディスーツをモデルに纏わせるという演出、そしてそこに重ねられた紳士服のよう見事に仕立てられたテーラードやカラフルな色使いのプリントだった。時にはクチュールのように手仕事でチュールにビーズ刺繍が施されたアクセサリーを強調するために、服は着せずにシューズとバッグのみをボディスーツにのせてランウェイに送り出していた。

hm_award_20161120_01.jpgクインの卒業コレクション

 その卒業コレクションで挑んだ「H&M デザインアワード 2017」。審査員を引き付けた理由の一つは高い技術力だ。クインはBA就業中、学校が用意している1年のインターンシップ期間で、当時ラフ・シモンズ(Raf Simons)が率いていた「ディオール(DIOR)」やサヴィル・ローのテーラー「リチャード・ジェームズ(Richard James)」でテーラリング技術を取得。テクニックはコートのようなテーラリングピースから構築的なシルエットのドレスにも見て取れる。また、シルクやホイル生地に施されたプリントも得意で、今後オリジナルの生地の販売もしていくようだ。Style.comのファッションディレクターヤスミン・シーウェル(Yasmin Sewell)をはじめとする審査委員たちは、実売に落とし込める可能性を示唆。ダイナミックなショーピースやテーラードはコマーシャルピースとして落とし込みやすく、実際に卒業コレクション以前に作ったコレクションは着やすいデザインということから既にオーダーが入っているらしい。また「H&M」が冠プロジェクトとして取り組んでいるサステイナブルにも力を入れていて、地産による二酸化炭素減少や英国の持つ職人技の継承をミッションに掲げている。実際にシューズやバッグの細かいビーズ刺繍はロンドンで施された。

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 賞金50000ユーロや全世界のH&Mでのカプセルコレクション販売権、そしてプロによる1年のメンターンシップを手にしたクインは今後について次のように語っている。「ロンドン・ファッション・ウィークでのデビューを目指している。でも、焦点を合わせているのは、バイヤーがバジェットを持っている6月のプレコレクション時期。H&Mとのコラボレーションは卒業コレクションの雰囲気を残しながらも、着やすいピースを加えるつもり。賞金は、実は最近サウスロンドンのペッカムにスタジオを開いたばかりなんだ。そこに置くプリント機械を買うつもり。お金のない学生や若いデザイナーに安くサービスが提供できる、プリントスタジオとしても活用していくつもりなんだ。クリエーティブハブになればいいと思っている」。

唯一の日本人ファイナリスト、その敗因は?

 H&M デザインアワード 2017では世界40校から500人以上の応募があり、実は日本からも文化服装学院の半澤慶樹がセミファイナルまで残っていた。彼の作品は解体したアグブーツで出来たジャケットや、普段はラグに使われるポニースキンを使ったパンツ、MA-1をアップデートしたキルティングのプルオーバー 、そして二重構造のプリントで立体感と崩れ落ちるような印象を演出したTシャツと、既存の服の固定観念にウィットを交えながら挑んだ。

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 半澤は「ショートリストに残ったほかの学生たちの技術力に驚かされた。今回受賞したリチャード・クインの作品は、写真で見た時のインパクトだけではなく、実際のガーメントの細やかさにも見惚れてしまった。自分は先日東京で見せた17年春夏で勝負したが、他の学生が5、6体なのに対して20ルックはあってバランスは良かったはず。でもセールスを念頭に置いたコレクションだったので見劣りしてしまったのかも。あと、日本人サイズのガーメントは小さくて迫力負けもしていた。以前と先行方法が変わったようで、プレゼン能力が必要に。審査委員引き込んで笑わせることはできたけれど、やはり英語力はネックだった」と敗因について語った。

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 年々上がっている学生のレベルに対して審査委員長を務めたH&Mクリエーティブアドバイザーのアン・ソフィ・ヨハンソンは「今年はカラフルな色使いや構築的なシルエットが特徴的で、自身の素材を作り込む学生が多く高い技術力を感じた。以前は一部の学校が秀でていたのに対して、今は他の学校もぐんぐんと実力を上げている。現在世界の40の教育機関と提携しているが、今後学校数を増やさなければいけない。日本だと高いクリエイティビティの文化学院や技術力のバンタンが対象だが、ココノガッコウのような面白いプライベートスクールがあるとも聞いている」と国内の対象校を増やしていくことにも意欲的だ。近いうちに日本からもグランプリ受賞が出るかもしれないが、そのためにはアイデア、技術力、コマーシャルといったバランスのとれたクリエーションと、どこのコンペティションでも必須となる英語でのコミュニケーション能力を鍛える必要があるだろう。(取材・文:ファッションジャーナリスト 益井祐)

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