H&Mが投資した「衣服から衣服へのリサイクルシステム」により制作された服
H&Mが投資した「衣服から衣服へのリサイクルシステム」により制作された服
Image by: FASHIONSNAP.COM

Fashion

「循環型ファッション業界」が目前に、H&Mのサステナブル最前線

H&Mが投資した「衣服から衣服へのリサイクルシステム」により制作された服
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 "石油産業に次ぐ環境汚染源"とされるアパレル産業。2015年に73億人だった世界人口は2030年には85億人となり、衣料の年間消費量は2015年の6,200万トンから2030年には1億200万トンに上昇すると言われている。このままでは環境汚染は進む一方だが、環境先進国スウェーデンを拠点とするH&Mは9月中旬、廃棄物ゼロの「100%循環型ファッション業界」の実現に向けて大きく前進する2施設を香港で披露した。着られなくなった服を資源に変える循環型モデルへ、H&Mのサステナブル最前線を紹介する。

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2013年、ビジネスコンセプトに「サステナブル」が追加

 1947年に設立したH&Mは、現在70の市場に4,800店舗以上、47の市場でEコマースを展開。「私たちの事業が、どのように世の中の人と環境に影響を与えるのか。その影響力に対して責任を持つことは、H&Mの発展に欠かせない条件です」(H&M CEO兼H&M Foundation役員 カール=ヨハン・パーション)という考えから、2013年から新たに"サステナブル"を加えたビジネスコンセプト「ファッションとクオリティーを最良の価格でサステナブルに提供」を掲げている。具体的な目標は以下のとおり。

・2020年までに全てのコットンをサステナブルなコットンに切り替える
・2030年までに全ての素材をサステナブルに切り替える
・2040年までにバリュー・チェーンを通じてクリメット・ポジティブになる

 これらを実現させるための取り組みの一つが、2013年にスタートした世界規模では初の古着回収サービス。全世界の全店舗で不要になった衣類を500円の割引クーポンと引き換え、ドイツの企業I:COとの提携により店舗に持ち込まれた衣類を400以上の基準に従って3つのカテゴリー「Rewear」「Reuse」「Recycle」に仕分けている。

Rewear:まだ着用できる衣料品は古着として世界で販売
Reuse:着られなくなった衣類はリメイクされたり清掃用品などの別の製品に作りかえられて再利用
Recycle:リウェア・リユースできない布地は織物繊維として使用されたり、自動車業界で制振材や絶縁材などに利用

 この内「Rewear」が全体の60%を占め、古着販売から発生した余剰金は100%リサイクル技術の開発や社会貢献活動に寄付されている。

 このほか、50%以上サステナブルな素材が使われる「コンシャス(CONSCIOUS)」ラインや、全てサステナブルな素材で作られるハイエンドなコレクション「コンシャス・エクスクルーシブ(Conscious Exclusive)」など、"ファッショナブルなサステナブル"を提案している。

 

コットンとポリエステル混紡布地の再利用が実用化

 2016年、H&Mの非営利財団 H&M Foundationと香港繊維アパレル研究開発センター(HKRITA)は4年間にわたるパートナーシップ契約を締結。古着回収サービスの余剰金による寄付金を得たH&M Foundationは4年間で約7.5億円を投資する計画で、混紡布地のリサイクル技術開発を進めてきた。そして1年を経て、コットンとポリエステルの混紡繊維製品を分離し、個々の繊維の品質を下げずに再利用する熱水処理によるリサイクル技術を実現させた。

 香港特別行政区環境保護署によると、香港だけでも2016年に12万5,195トンの布地廃棄物があり、そのリサイクル率はわずか3.4%(4,200トン)。ほとんどの古着が埋立地行きとなっている。これはアパレル市場で最も需要のある、コットンとポリエステルの混紡繊維のリサイクル技術が長年追いついていなかったのが理由だ。

 素材の分離工程には熱、水、5パーセント以下の生分解性の無害な薬品のみを使用。また、水と触媒はシステムの中で85%が循環するなど環境に優しい仕組みとなっている。30分〜2時間以内に綿繊維は粉末セルロースに分解され、残りのポレステル繊維は品質はほぼそのままに分離が可能に。分離したポリエステル繊維の98%以上を回復することができ、コットンの粉末セルロースは機能的なセルロース製品やリサイクル・セルロース繊維として応用できる。

 今回、このリサイクル技術が産業スケールの大型機械となって香港拠点の世界最大規模の紡績会社 Novetexの工場に導入された。H&M FoundationとHKRITAは、この施設にサプライヤーや投資家といったファッション業界人を招待し、同テクノロジーの認知を高めていく考え。

 現状1日最大3トンの生産に対応できるというが、HKRITAの最高経営責任者 エドウィン・ケー(Edwin Keh)氏は「香港では1日200トン以上の服が生産されている。産業化に向けて、そのニーズに見合う規模まで拡大したい」とし、さらに2020年までにこの技術を市場に普及させる目標を示している。ライセンス料などの具体的な数字は決まっていないが、このプロジェクトで得た収益は古着回収サービスと同様に、さらなる技術開発やリサーチへの投資に充てていく。

 2030年までに全ての素材をサステナブルに切り替えることを目指すH&Mも、この技術を利用した生産に向けて話を進めている段階。廃棄物ゼロの「100%循環型ファッション業界」の未来が近づいてきている。

 

紡績工場跡地にファッションテックのハブが誕生

 もう一つ香港で同時披露されたのが、12月初旬にオープンを控える「ザ・ミルズ(The Mills)」。元紡績会社で現在は不動産の中国ナン・ファン(Nan Fung)社が手掛ける施設で、紡績工場の跡地をリノベーションしている。コンセプトはファッション業界やファッションテックの"ハブ"。スタートアップ企業が投資家やサプライヤー、エンドユーザーと接点を作る場として活用される予定だ。

画像提供:H&M

 オープンに先駆けて、1階の一角に登場する小型コンテナ「衣類から衣類へのリサイクルシステム」と、リサイクルによる服を販売するショップが関係者向けに公開された。H&M FoundationとHKRITA、Novetexのコラボレーションによる共同プロジェクトで、小型コンテナでは不要になった服がリサイクルされ、新しいファッションが生み出される様子を目の前で見学できる。

 様々なリサイクル技術が開発され、技術面で「100%循環型ファッション業界」の実現に向けた改革が進む一方、消費者自身のサステナブル意識を高めることも重要。H&M Foundation イノベーション・リードのエリック・バン(Erik Bang)氏は、「消費者は自分が何を消費しているのかを理解し、本当に必要なものを手に取るようにするべきだと思う。不要になった時には、業者に出したり中古として売るなどセカンドライフも考えてアクションを起こすべき。本当に着られない状態でも、捨てるのではなくリサイクルするという選択肢を積極的にとってもらえたら」と話す。今回公開された小型コンテナのように、不要な服が新たな資源として生まれ変わる様子を実際に消費者にも見てもらうことで、理解を深めたい考えだ。

左からエドウィン・ケー氏、エリック・バン氏

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