モードの祭典「メットガラ」が、今年も開催!今年の展覧会テーマは「スーパーファイン:ブラックスタイルの仕立て(Superfine: Tailoring Black Style)」。18世紀から現代に至るまでのブラック・ダンディズムに光を当て、テーラリングを通じてアフリカン・ディアスポラの美学と自己表現を掘り下げます。海外メディアの報道によると、同美術館が黒人のスタイルのみに焦点を当てたファッション展を開くのは初めてだとか。セレブリティの装いの鍵を握るドレスコードは「あなただけの仕立て(Tailored For You)」。スーツやネクタイ、ポケットチーフなど伝統的なメンズウェアの要素を取り入れながら、自身のアイデンティティや誇りなど、自分らしさを体現するメッセージ性のある装いが求められました。
共同ホストは、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)、エイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)、コールマン・ドミンゴ(Colman Domingo)、ルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)といった黒人男性のほか、お馴染みのアナ・ウィンター(Anna Wintour)が務めました。華やかな舞台で輝きを放った衣装を一挙に紹介します。
■What is MET GALA?
ニューヨークのメトロポリタン美術館コスチューム・インスティチュートが毎年開催するファッションにまつわる展覧会のオープニングに際して開催されるイベント。セレブやデザイナーなどの著名人たちが、テーマに沿った豪華な衣装でレッドカーペットに登場することから"ファッション界のアカデミー賞"とも称される。ファンドレイジングも兼ねたパーティーチケットは1枚約300万円。
目次
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ブラック・ダンディズムとは
奴隷制度や移民によって世界に広がったアフリカ系の人々のコミュニティ「アフリカン・ディアスポラ」が、スーツなどの西洋的な仕立て服を自らのスタイルで再解釈し、アイデンティティや誇りを表現してきたカルチャーのこと。 歴史的には植民地主義や人種差別に対する抵抗の手段でもあり、服を通じて「自分は何者か」を世界に問いかけるスタイルのひとつとして発展してきました。
メトロポリタン美術館で開催されている「Superfine: Tailoring Black Style」では、ブラック・ダンディズムが今日のファッションに与えた影響を考察。歴史家のモニカ・L・ミラー(Monica L. Miller)が2009年に発表した著書「Slaves to Fashion: Black Dandyism and the Styling of Black Diasporic Identity」をもとに、18世紀のヨーロッパの啓蒙思想から、現代のロンドンやニューヨーク、パリといった国際的な都市でのシーンに至るまで、アフリカ系移民における黒人のアイデンティティの重要性とファッションスタイルを探ります。
ゼンデイヤ in LOUIS VUITTON

Image by: ルイ・ヴィトン
昨年も話題をさらったゼンデイヤ(Zendaya)。今年はファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)が手掛けた「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の白いスリーピーススーツに、ワイドブリムのフェドーラハットを合わせたルックでレッドカーペットに登場。1980年代のパワースーツや、フェルトハット、ブラック・ダンディズムなど、さまざまな要素を女性のフォルムに落とし込み、現代的に再解釈したテーラリングルックです。
アンナ・サワイ in DIOR

(c) Mike Coppola/MG25/
アンナ・サワイは、「ディオール(DIOR)」のマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が手掛けたホワイトスーツで登場。シャープなピークドラペルのブレザーに、ネクタイを合わせたルックは、同じくホワイトスーツで登場したゼンデイヤと“偶然の双子コーデ”として話題になりました。とはいえ、異なる解釈で見せた2人のスタイリングは、かえってドレスコードテーマ「あなただけの仕立て(Tailored For You)」を際立たせました。
サブリナ・カーペンター in LOUIS VUITTON

Image by: ルイ・ヴィトン
サブリナ・カーペンター(Sabrina Carpenter)が着用したのは、ルイ・ヴィトンのテーラードルック。ピアノジャケット風のロングテールが印象的なこのスタイリングは、20世紀の舞台衣装とダンディズムの融合をテーマにしたものだとか。
リサ in LOUIS VUITTON

Image by: ルイ・ヴィトン
ルイ・ヴィトンのアンバサダーを務める「ブラックピンク(BLACKPINK)」のリサ(LISA)。ジャケットは、黒人に対する抑圧といった題材などを取り扱うことで知られているアーティスト ヘンリー・テイラーの作品を再解釈したブラックレースで構成されています。バッグは「スピーディ P9」の特別仕様。ダンディズムとオートクチュールを融合した装いで会場を沸かせました。
ドーチー in LOUIS VUITTON

Image by: ルイ・ヴィトン
楽曲「Anxiety」が“万バズ”し、時の人となったドーチー(Doechii)は、ルイ・ヴィトンのモノグラムが織り込まれたテールコートにベストをチョイス。18世紀の英国上流階級で黒人の正装として好まれていた宮廷服「ア・ラ・フランセーズ」を現代風に再解釈したそう。
カラム・ターナー in LOUIS VUITTON

Image by: ルイ・ヴィトン
デュア・リパのフィアンセ、カラム・ターナー(Callum Turner)はファレルが彼のために製作したダブルブレストのテクスチャードジャカードジャケットとブラックウールのフレアパンツを着用。1920年代のアメリカにおける文化などを指す「ジャズ・エイジ」のダンディズムが着想源とのこと。シルク混シャツとパールカラーのクラヴァットが華を添えます。
ファレル・ウィリアムス in LOUIS VUITTON

Image by: ルイ・ヴィトン
ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)は、ホワイトパールを編み込むことでピンストライプ風のテクスチャーを表現したダブルブレストのクロップドジャケットが印象的。パールは手作業で縫い込まれており、2024年春夏の自身のデビューコレクションから続くテーマを深く反映しています。
エスクプス in BOSS

Image by: BOSS
SEVENTEENのリーダーであるエスクプス(S.COUPS)は、「ボス(BOSS)」のグローバルアンバサダーとして、韓国の伝統衣装「チョゴリ」に着想を得たグレーのイタリアンウールフランネルのカスタムルックを披露。ショールカラーや異なるトーンのプリーツ裏地、チョゴリの構造を彷彿とさせる折りやドレープが特徴的なローブ風のコートで大胆な印象を与えました。
カビー・ラメ in BOSS

Image by: BOSS
1億6000万人以上のフォロワーを誇るTikTok界のトップスター、カビー・ラメ(Khaby Lame)はボスのグローバルアンバサダーとしてメットガラに登場。グレーピンストライプのスリーピーススーツは、ボスのアーカイヴに着想を得たもの。 アンティークの懐中時計をあしらったウエストコートや、トレンチコート、ツートーンのウィングチップなどは、黄金時代のジェントルマン像を現代的にアップデートしたそう。
アルトン・メイソン in BOSS

Image by: BOSS

Image by: BOSS
ハート型のカットアウトが大胆なクロップドジャケットに、ローウエストのブーツカットパンツを合わせたルックは、1980年代のマイケル・ジャクソンの美学をモダンに昇華させたもの。SNSでは「実写版ジョジョの奇妙な冒険だ」と話題になり、特に第5部のキャラクター、ジョルノ・ジョバァーナを思わせるヴィジュアルに多くの注目が集まりました。
エイドリアン・ブロディ in Fear of God

Image by: Fear of God
俳優のエイドリアン・ブロディ(Adrien Brody)は、LA発のストリートブランド「フィア オブ ゴッド(Fear of God)」を着用。ブラックのウールリップストップ素材によるスーツに、同ブランドの「コレクション9」ブラックブーツを合わせたミニマルかつ重厚なスタイルを披露。
ニコール・キッドマン in BALENCIAGA











Image by: Balenciaga
ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)は、1952年にクリストバル・バレンシアガ(Cristóbal Balenciaga)がデザインしたクチュールドレスを再解釈。ブランドのルーツであり、オートクチュールの礎を築いた本人のアーカイヴを現代に蘇らせました。シルクオーガンザで仕立てられたコルセットガウンは、幾重にも重ねたペチコートによるスカートで彫刻的なシルエットを生み出しています。
シドニー・スウィーニー in Miu Miu

シドニー・スウィーニー(Sydney Sweeney)は、ブラックのクリスタル刺繍が施されたボディとゴールドのブローチがゴージャスな「ミュウミュウ(Miu Miu)」のカスタムドレスを着用。クラシックなハリウッド女優を彷彿とさせるこのルックは、スウィーニーが主演予定の伝記映画「Scandalous(原題)」で演じる1950年代のハリウッド女優キム・ノヴァク(Kim Novak)への敬意を込めた選択なのでは、と注目を集めました。
ジジ・ハディッド in Miu Miu

ドレープが印象的なゴールドのベルベットドレスが印象的だったジジ・ハディッド。繊細なクリスタル刺繍も相まってグラマラスで洗練されたスタイルに。
ロゼ in SAINT LAURENT

Image by: SAINT LAURENT
BLACKPINKのロゼ(ROSÉ)は、「サンローラン(SAINT LAURENT)」のシルクタフタのケープを羽織り、きめ細かく織られた上質なウール素材「グレイン・ド・プードル」で仕立てられたタキシードジャケットとパンツをセットアップで合わせた、ミニマルかつ端正なスタイルを披露。足元にはパテントレザーのサンダルを合わせ、クラシックなテーラリングにロゼらしい繊細さと艶やかさを加えたルックを完成させました。
ヘイリー・ビーバー in SAINT LAURENT

Image by: SAINT LAURENT
モデルで起業家としても注目を集めるヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)は、タキシードミニドレスに、シルクのポケットチーフとシアーなブラックタイツをオン。マスキュリンとフェミニンが交差する洗練されたシルエットは、コンパクトながらも芯のあるモダンダンディスタイルを感じさせます。
バッド・バニー in PRADA

Image by: ©Prada
「プラダ(PRADA)」のチョコレートブラウンのダブルブレストスーツに、編み込みハット、ビジュー付きのグローブを合わせたルックで登場したのはバッド・バニー(Bad Bunny)。編み込みハットはプエルトリコの農業労働者が伝統的に着用する「パヴァ帽」が着想源で、文化的ルーツへの敬意を表し、モダンにアップデートしたものだそう。
ハンター・シェイファー in PRADA

Image by: ©Prada
俳優、モデル、そしてトランスジェンダーのアイコンとしても知られるハンター・シェイファー(Hunter Schafer)は、ホワイトのダブルブレストジャケットにボタンダウンシャツ、リブ編みのタートルネックを重ね、ブラックのブレザーを肩から羽織る構築的なレイヤードで、ミニマルかつ力強いダンディズムを体現。ヘアはタイトなシニヨン、メイクはピンクのグロスリップで、静かな存在感を放つルックに仕上がっています。
マヤ・ホーク in PRADA

Image by: ©Prada
イーサン・ホーク(Ethan Hawke)とユマ・サーマン(Uma Thurman)の娘であり、ネットフリックス(Netflix)の人気シリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で注目を集めたマヤ・ホーク(Maya Hawke)もメットガラに参加。ピーチピンクのガウンに、シアーなベージュのケープを重ねた柔らかくフェミニンな装いで、クラシックなムードを演出しました。一方、ストレンジャー・シングスで共演したサディ・シンクとのレッドカーペットでの再会がSNSでも話題に。
サディ・シンク in PRADA

Image by: ©Prada
同じく“ストシン”俳優であり、マヤ・ホークとの“プラダ再会”にも注目が集まったサディ・シンクは、ブラックのスリムなボディに、ドラマティックなベルスリーブとマーメイドスカートを合わせた構築的なシルエットが印象的。洗練されたブラックルックで会場に華を添えました。
リアーナ in MARC JACOBS











Image by: MARC JACOBS
「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」によるカスタムルックで登場したリアーナ(Rihanna)は、メットガラの会場で第3子妊娠を発表し、大きな話題になりました。ショート丈のスペンサージャケットに、ストライプのビスチェボディスーツ、バッスルスカートを合わせたスタイリングは、クラシックな紳士服とモードなマタニティウェアを融合させた力強いルック。ハットは、奇才帽子デザイナー、ステファン・ジョーンズ(Stephen Jones)が手掛けました。
ドージャ・キャット in MARC JACOBS




















Image by: MARC JACOBS
スワロフスキークリスタル刺繍がきらめくブレイザーボディスーツで一際輝いていたドージャ・キャット(Doja Cat)。体から大きく飛び出したパワーショルダーにアンクルブーツを合わせることで、抽象的なダンディズムを再解釈したスタイルに。
アイオウ・エディバリー in Ferragamo

Image by: Ferragamo
アイオウ・エディバリー(Ayo Edebiri)は、「フェラガモ(Ferragamo)」のシルクのシャツドレスに、華やかなコーラルガラスビーズのハーネスを重ねて登場しました。テーラリングの鋭さを加えるのはブラックナッパレザーのテールコート。軽やかさと硬質さを成立させたバランス感に優れたスタイルです。
カイリー・ジェンナー in Ferragamo





Image by: Ferragamo
フェラガモのデザイナー マクシミリアン・デイヴィス(Maximilian Davis)と共にレッドカーペットに登場したカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)。コルセットボーンがシルエットを強調するドレスと、左脚に大胆なスリットが入ったローウエストのスカートは歩くたびにドラマチックな印象を与えました。
カマラ・D・ハリス in Off-White™

Image by: Off-White™
アメリカ合衆国副大統領でアフリカ、インド系のルーツを持つカマラ・D・ハリス(Kamala D. Harris)。ブラックとホワイトのシルク素材のドレスは、流れるようなスカーフとドラマティックな袖が印象的で、力強さと静けさを両立させた佇まいに。「オフ-ホワイト™(OFF-WHITE™)」のアート・イメージディレクターのイブラヒム・カマラ(Ibrahim Kamara)はこのルックについて「精巧なシンプルさは、彼女自身の強さと自信を引き立てるものであり、それは私が“ダンディズム”の核心だと考える資質です」とコメント。ハリスの存在そのものが、テーマ「スーパーファイン:ブラックスタイルの仕立て(Superfine: Tailoring Black Style)」の意義を体現していました。
コールマン・ドミンゴ in VALENTINO

Image by: VALENTINO

Image by: VALENTINO
「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のアンバサダー、コールマン・ドミンゴ(Colman Domingo)は、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)によるカスタムルックで登場。ブルーのプリーツケープにアイボリーのスパンコール刺繍入りボレロを重ね、フェザーを飾った繊細なディテールなど、隅々までミケーレの美学が息づいています。ケープを脱ぐと、チェック柄ダブルブレストジャケットを着用しており、ガラリと印象が変わる演出も華やかな舞台にぴったり。
ジャネール・モネイ in THOM BROWNE

Image by: THOM BROWNE

Image by: THOM BROWNE
「トム ブラウン(THOM BROWNE)」の特注“だまし絵”スーツケープで登場したジャネール・モネイ(Janelle Monae)。ケープは、半身が白ステッチ入りのブラックモヘア、もう半身がピンストライプ刺繍のレッドダッチェスシルクという左右非対称の仕立てで、アウトラインにはグログランのリボン刺繍があしらわれています。特徴的なのは、ショルダーパッドや仮縫いステッチを敢えて露出させ、テーラリングの裏側までをも可視化するデザイン。まさにテーマである「あなただけの仕立て(Tailoring Black Style)」になっています。
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