Image by: ©Launchmetrics Spotlight

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「自分自身をケアし、その価値を認めること」。「MINDFUL INTIMACY」と題された「ミュウミュウ(MIU MIU)」2026年秋冬コレクションは、身体を起点に衣服の役割をあらためて問い直し、親密さの中にある強さと主体性を提示した。ロマンティックな感性と実用的な感覚を交差させながら、現代における身体と衣服の関係を掘り下げている。
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身体の線をなぞるシルエット

今シーズン、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)がコレクションに込めたのは、衣服が身体を支配するのではなく、その存在に寄り添うという発想だ。ベルトをハイウエストにデザインした七分袖のジャケット、ミニ丈のシフトドレス、スリップドレス、ペンシルスカート、短丈のレザーアウターといったルックは、いずれも身体の自然な線をなぞるように構成された。



シルエットは細身でありながら抑圧的ではなく、どこか無防備さを残している。"鎧"のように服の力で身体を大きく見せるのではなく、小さな身体そのものが持つ存在の強さを際立たせていた。
風合いがつくる親密さ
身体性を支えていたのが、素材の扱いだ。コットンポプリンやウォッシュドダブルカシミア、レザー、スエード、チュールといったファブリックは、視覚的な華やかさよりも、手ざわりや使用感を想像させる。とりわけウォッシュド加工を施した生地やレザーは、擦れや着込まれたような表情を帯び、人が動くことで生まれるシワまでもデザインの一部として取り入れていた。そこに、くたびれた結び目のディテールやレース、繊細なスパングルやビーズ刺繍が差し込まれるが、装飾が主役ではなく、あくまで素材の質感を際立たせる補助的な役割にとどまっている。




一方で、耳まで覆うファーのトラッパーハットや、頭にのせただけのように見える少しずれたハット、ラバーペブル付きのシューズ、スタッズをあしらったバッグが、繊細なルックにタフさを添えた。すっきりとしたシルエットの中にリボンやスカラップモチーフや刺繍などのディテールで少女性を加えることで、ミュウミュウらしいいたずらっぽさとドリーミーなムードが保たれていた。







ロマンティックさとタフさのバランス

スリップやミニドレスが持つ無垢な軽さに対し、レザーやツイード、シアリング、ナイロンジャケットといった実用的なアウターを重ね、包み込むことで強さを与えた。ロマンティックでありながら甘すぎず、センシュアルでありながら露骨でもない。その均衡が、ケアややさしさを脆さではなく個の意思よる主体的な選択として示し、現代の不安定な時代において、自分の身体と心をどう守り、どう肯定するかという問いを投げかけていた。




キャスティングも印象的だった。俳優やミュージシャン、アーティスト、モデルが並ぶ顔ぶれは、身体や個性の違いそのものを際立たせる今季のテーマとも呼応。TOMORROW X TOGETHERのチェ・ヨンジュンがフレッシュな空気をもたらしたのに対し、俳優のジリアン・アンダーソン(Gillian Anderson)は、成熟した落ち着きの中に儚さを感じさせる佇まいでショーを締め括った。


宮殿の中の森が際立たせた身体の存在

会場となったイエナ宮では、赤い花柄のファブリックが壁面を覆い、床には草や小枝が散る森の地面が広がった。宮殿の壮麗さと、土の匂いがほのかに立ち上がる野生の森の気配。その相反する2つの要素がぶつかり合う舞台は、単なる背景ではなく、広大な世界と小さな身体というコレクションの対比を視覚化する装置として機能していた。ミュウミュウが提示したのは、装飾や記号を重ねて自己を強く見せるためのファッションではない。身体の小ささを認めた上で、それでもなお、そこに宿る価値と強さを肯定するための服だった。

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