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2020年に誕生したシューズブランド「オーエーオー(OAO)」は、デジタルネイティブな感性と、建築を思わせる端正なフォルムで存在感を高めてきた。創業者は板垣孝明と高橋悠介。両名ともアパレルではなくIT業界の出身だ。経験豊富なデザイナーがブランドを立ち上げるケースが主流のこの業界で、異なる土壌から飛び込んだ彼らは、スニーカーを軸に独自の道を歩み始めた。
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数々のコラボレーションやプロジェクトを重ね、2025年には代官山に続き、京都にショールーム「オーエーオー ハウス(OAO HAUS)」をオープン。さらにアパレルラインも本格始動させるなど、新たな展開が加速している。業界の「外」から始まりながら、なぜOAOはこれほどの信頼を築けたのか。創業から現在までの試行錯誤、そしてこれからのヴィジョンを、板垣と高橋に聞いた。(文:AFFECUTS)
OAO
共同創業者であるCEO(最高経営責任者)の板垣孝明と、COO(最高執行責任者)の高橋悠介は大学卒業後、大手IT企業で新規サービスや事業づくりに従事。同期だった二人は独立し、2020年にシューズブランド「OAO」を始動。“Experience for Humanity. -人間らしい体験を。- ”を掲げたスニーカーは、建築的かつ未来的なフォルムとクールなカラーリングで支持され、ECからショールーム、アパレルラインをスタートさせるなど、事業を拡大している。

OAO SUNLIGHT
Image by: OAO

OAO LES ARCS BOOTS
Image by: OAO

OAO THE CURVE 1 AERO
Image by: OAO
IT業界から靴づくりへ、OAOが生まれた理由
⎯⎯OAOを始める前は大手IT企業にお勤めだったと聞きました。
板垣孝明(以下、板垣):もともと僕たちは、IT業界でモノづくりをしていました。新規サービスの企画・開発やUI/UX設計など、ずっと何かをつくってきて、二人とも「つくること」自体が好きだったんです。そこから興味の対象が少しずつ広がり、リアルなプロダクトや素材に触れる「実体のある」モノづくりにも、関心を持ち始めました。

OAO 共同創業者兼CEO 板垣孝明
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高橋悠介(以下、高橋):僕はゼロから、子ども向けのプログラミング学習サービスをつくっていました。子どもたちは一人ひとり個性や性格が違うので、プロダクトをどう使うのかを日々観察しながら、もっと楽しんで継続して学んでもらうためにはどう改善すべきかを常に考えていました。すぐにソフトウェアを改善し、そのフィードバックを得る。このサイクルがすごく面白かったですね。

OAO 共同創業者兼COO 高橋悠介
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⎯⎯現在、IT業界の経験はどのように活きていますか?
板垣:IT業界での経験がOAOに直接関係あるかというと、正直それほど大きくはないと思っています。ただ、今の僕らは普段から接客をしたり、イベントに立ったりもしていて、そこで得られるお客様の声や感覚と、自分たちがつくりたいものを擦り合わせながら、プロダクトやブランドを展開していくことが多いです。そういう意味では、インターネット的、ソフトウェア的なブランドのつくり方が、OAOには自然と取り入れられているかもしれません。
⎯⎯接客中は、顧客の声に耳を傾けることを意識していますか?
高橋:靴は機能面が極めて重要なので、お客様からのフィードバックが直接的な改善のヒントになります。「履き心地が良い」「もう少しこうしてほしい」といった声が、次の製品づくりへとつながります。OAOの靴づくりはOEM形態ではありますが、企画・設計から非常に深く関わっており、半分内製のような形です。だからこそ、お客様の声をもとに改善を進めやすい体制になっています。
⎯⎯顧客の声を丁寧に拾い上げて製作する一方で、プロダクトアウト的に提供するデザインもあると思います。そのギャップに悩むことは?
板垣:実は、ギャップに悩むことはあまりないんです。作り続けていく中で、どうすればお客様に受け入れられるか、世の中で評価されるかが、だんだんと分かってきました。その感覚が積み重なることで、自分たちがやりたいこととお客様のニーズの距離はどんどん縮まっていきます。ギャップが減っていき、むしろ好きなことをやれる幅が広がっている、という感覚が近いですね。

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⎯⎯アパレル業界未経験の中で、あえて「スニーカー」という分野に挑もうと思った理由は?
板垣:振り返ってみると、僕は単純に靴という存在が好きなんだと思います。スニーカーは、世界中の人とつながれるコミュニケーションツールのような存在で、履きやすさや快適さを求める声も世界共通です。「いい靴」を意識している人は世界中にいて、活動を続けるほどその広がりを実感しています。
高橋:もうひとつ、理由があります。それは、自分たちのスタイルに合う靴がなかったことです。スポーツやアウトドア分野には多くの商品がありますが、僕たちが欲しい、もっと静かで知的な印象の靴、シンプルでレザーシューズ的な佇まいを持つスニーカーは見当たりませんでした。特にクリエイターが履くような雰囲気のブランドは少なかった。だからこそ、「今ないものをつくる」という観点から、靴はいいチャレンジでした。
⎯⎯ブランド名「OAO」には、どんな意味や思いが?
板垣:「One And Only」の頭文字から名付けて、それぞれの人の唯一無二の個性や存在を象徴するという意味を込めました。僕らのベースには「自分たちの考え方を広げたい」という思いのほかに、クリエイターやアーティストへの尊敬があります。日本に限らず世界中に、モノを作り、未来に残るものを生み出す仕事に熱量を注ぐ人たちがいます。僕らは、そんな人たちをエンパワーメントしていく存在になりたいと思っているんです。
試行錯誤と「SUNLIGHT」が示した一筋の光
⎯⎯初期のプロダクトづくりは、どのように進めていたのでしょうか?
高橋:自分たちの「我」や「個性」を強く打ち出さない。直感だけで「これがいい」と判断しない。それが、立ち上げ当初に定めたルールで、そのルールのもとにプロジェクトを進めました。代わりに、買ってくださったユーザーに会いに行き、1時間ほどインタビューをしたり、Zoomでヒアリングを行ったりして、徹底的に「声」を聞くことを積み重ね、ユーザーの解像度を上げることに集中しました。その意味では、仮説検証とユーザー理解を徹底することが、立ち上げ当初からの重要な価値観でしたね。

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⎯⎯ブランド認知を高めるのも大変だったと思います。
板垣:最初は、発送や検品を僕ら自身でやっており、イベント設営やカスタマーサポートなども全て自分たちで担当したりと、とにかく地道でした。SNSも、特別なテクニックがあったわけではなく、丁寧に写真を撮って投稿する。それだけです。おそらく当時スニーカーをつくる人間がレアだったこともあって、ブランドに興味を持ってくれる方が多く、口コミなどを通して、少しずつ広がっていった感覚です。
⎯⎯「どうやって知ってもらうか」は永遠の課題ですよね。
板垣:僕らはヒアリングを通して見えてきたOAOに対して持っていただいているイメージ、たとえば「歩きやすいソールのクッション性」「ボリューム感」「都会的でモダンな印象」などを意識的にしっかりデザインに落とし込むように心がけました。当初は色を白と黒に絞って展開するなど、ブランドの印象が一貫するように設計。それが他の人に推薦しやすくなったり、届きやすくなった理由だと思います。
高橋:その上で、クリエイターの方々や、僕らが履いてほしいと思う人たちとの接点を深めていきました。最初は本当に小さなところからスタートしましたが、応援してくださる方、リピートしてくださる方、あるいは共感して履いてくださる影響力のある方など、そうしたつながりが徐々に広がっていった感覚があります。急がず、無理せず、じわじわとブランドを育ててこられたことが、今につながっていると思います。
⎯⎯ブランドを始動してから、串野真也氏をデザイナーとして迎えました。
板垣:僕たちはブランドを始めた当初、シューズ業界の経験も、シューズデザインの経験もありませんでした。そこで「デザインをサポートしてくださる方がいないか?」と探し、知人を通じて串野さんを紹介してもらいました。「僕たちがつくりたいもの」を形にするために、串野さんにデザインを依頼した形です。
⎯⎯今のOAOを作り上げる上で、串野さんの存在は大きかったですか?
高橋:OAOのプロダクトが他にはないシルエットやパターンを備えているのは、彼の存在があってこそです。シューズデザイナーには、他分野での経験を積みながらも靴づくりのセオリーをしっかり理解している方が多いですが、僕たちの「今までにないバランスのプロダクトをつくりたい」という思いに応えて独創的なアイデアをいくつも提案してくれました。
⎯⎯お二人の役割分担は?
板垣:基本的な役割分担は、創業時から大きく変わっていません。モノづくりや生産、オペレーション全般を高橋が担当し、企画やデザイン、ブランディングまわりを僕が担っています。とはいえ、たとえば「生産とデザイン」「販売とブランディング」のように、分野ごとの境界はかなり曖昧です。タスクで完全に切り分けているというよりは、重なり合う部分を自然と補い合いながら進めているという感覚ですね。

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⎯⎯高橋さんも企画やデザインに関わることはありますか?
高橋:あります。例えば姫路のレザー工場に行った時に、「こういう製法や革があったよ」と共有して、そこから企画が立ち上がるという流れもあります。企画というよりは、モノづくりの現場で得た知見や素材の情報から、「これ面白そうじゃない?」と投げかける形ですね。実際に足を運んで見つけてくるのは、僕の方が多いかもしれません。
⎯⎯企画の方向性で、ぶつかることはありますか?
板垣:むしろ、「それをやりたいなら、一回やってみたら?」というスタンスで始まることが多いです。これは僕たちだけでなく、他のメンバーにも言えることで、「このブランドとコラボしたい」「この素材を試してみたい」という提案があれば、その人が一番熱量を持っていますし、一番その価値を理解している。「それなら任せてみよう」と判断することが多いです。
高橋:最終的にはやってみないとわからないことが多いので、まずは小さくテストしてみる。プロトタイプを一度つくってみて、それを見ながら考える。ダメだったらやめればいいし、手応えがあればそこから深めていけばいい。合理的というよりは、実践的なんだと思います。
板垣:もちろん、意見の違いがまったくないわけではありませんが、今は話し合いの落としどころが見えるようになってきて、解決スピードも速くなりました。立ち上げ当初は、夜中まで話し込んでいたこともありましたね。今思うと、あの頃に積み重ねた対話が、今の意思疎通の土台になっている気がします。「これはOAOらしくないな」といった感覚が、自然と共有できるようになってきたんです。
⎯⎯これまでブランドとして壁に直面した経験はありますか?
板垣:振り返ってみると、最初の頃は特に試行錯誤の連続で、靴を何度も試作しては、「これは誰にも届いていない」と感じることもありました。今でもすべての商品がうまくいくわけではありませんし、そういう葛藤は常にあります。でも、僕らは「小さく失敗して、小さく改善する」をずっと繰り返しているタイプなので、大怪我をした経験は、意外と少ないかもしれません。「常に苦しいし、常に楽しい」。その両方をずっと同時に、高速で回し続けているような感覚ですね。

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高橋:僕は、最初の頃によく「壁」を強く感じていました。たとえば、今も展開している「SUNLIGHT」という、ステッチ入りのモデルが生まれるまでのプロセスでは、まさに壁にぶつかり続けていたような感覚があります。当時は、「自分たちはどんなブランドなのか」「何が評価され、どういう理由でお客様に選ばれるのか」という軸が、まだ定まっていませんでした。「SUNLIGHT」が生まれたことで、ようやく進むべき方針が見えてきたんです。
⎯⎯「SUNLIGHT」は、それまでのスニーカーとどのようなところが違っていたのでしょうか?
板垣:モノづくりに対する考え方が明らかに違っていました。それまではどちらかというと「エッジの強さや特徴付け」を優先して考えることが多く、アート的なアプローチが強かったんです。でも「SUNLIGHT」は違っていて、履く人のことをより意識し、共感や普遍性を大事に企画しました。
⎯⎯より多くの人に届けるという視点で考えたということでしょうか?
板垣:そうですね。それまでは、言ってしまえば「世界のどちら側を選ぶか?」というモード的な視点で企画していたところがありました。でも「SUNLIGHT」では、一度そうした「狭いモードの正しさ」から離れて、もっと視野を広げたんです。結果的にこれまでリーチできていなかった層に届けることができ、ブランドの認知を広げるきっかけになりました。

OAO SUNLIGHT
Image by: OAO

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「クリエイターにとって最高の一足」へ、次のステップは
⎯⎯「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」、「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」とのコラボレーションを通じて、どんなことを学びましたか?
板垣:それぞれ全く異なるタイプのデザイナーでしたが、共通して感じたのは、美意識やセンスの高さですね。お二人ともトップブランドで経験を積み、自身のブランドを立ち上げたデザイナーです。そして、完成までの感覚や判断の速さは、僕らとは違う視点を持っています。特に、「モノの美しさ」や「エレガンス」に対するこだわり。そこに宿る高い美意識は、横で見ていて本当に勉強になりましたし、「こうあるべき」という理想像に対するアプローチが明確で、強い刺激になりました。
⎯⎯OAOのシューズは、ソールの厚み、足元の存在感が際立つ建築的なフォルムが特徴ですが、初期からこの方向性は明確だったのでしょうか?
高橋:特に「SUNLIGHT」や「FOUNTAIN」といったモデルが登場してからは、OAOらしいシルエットの軸がよりはっきりしてきたと思います。ボリュームはあるけれど、シルエットは美しい。レザーシューズでありながらスニーカーのような履きやすさを持っている。そんな「ちょうどいいバランス」の靴が、「意外と他にないよね」という話はずっとしていました。そこからは、木型や素材へのこだわりをより突き詰めて、OAOの持つ建築的でミニマルなフォルムを、少しずつブラッシュアップしてきたという感覚があります。
⎯⎯代官山に開いた「OAO HAUS」は、ブランドにとってどんな存在ですか?
板垣:OAO HAUSは、実はブランド初期から構想していた取り組みです。お客様やコミュニティの人たちと直接つながり続ける場を持つことは、ブランドにとって必要不可欠だと考えています。OAOの靴は、ECやSNSの写真だけでは伝わりにくい部分が多い。だからこそ、リアルな場で直接話し、フィッティングし、質感や履き心地を体験してもらうことを重視してきました。こうした場所があることで、「僕たちはどんな雰囲気で、何を大事にしているブランドなのか」を、非言語的にも感じ取ってもらえるようになりました。

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⎯⎯2025年12月には京都に2店舗目を立ち上げました。
高橋:店舗の内装は、設計事務所「DAIKEI MILLS」のチームにお願いしました。「関西にも全商品を試着できる常設の場所が欲しい」という声は以前から数多くあったんです。ブランドとして海外展開を視野に入れる中で、日本らしさをどう表現するかは大きなテーマ。その視点でも京都はうってつけの土地でした。
⎯⎯現在はシューズを主軸に、アパレルも手掛けています。
板垣:ビジネスとしてどこまで広がるかは未知数ですが、僕らは毎シーズン、テーマやストーリーを持ってものづくりをしているので、それを伝える手法としてアパレルの必要性を感じています。これからも自分たちが受けたインスピレーションや「美しい」と思う感覚を、シューズの枠を越えて、立体的に展開していく予定です。

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⎯⎯OAOとして今後実現したいことは?
板垣:人種や国籍、地域といった枠にとらわれないブランドでありたいと思っています。だからこそ、国内展開だけでなく、海外にも打ち出していきたい。モノづくりを深めることと広げること、両方を積極的にやっていきたいですね。
高橋:プロダクト面でいうと、OAOの靴はまだ「都会で日常的に履くクリエイターにとって最高の一足」にはなりきれていないと感じています。履き心地、デザイン、クオリティにおいて、特にレザースニーカーを何十年も履けるレベルまで引き上げたい。現在進めているのは、OAOだけのオリジナル素材やソールの開発。このテクスチャーはOAOだけのもの。そう言えるプロダクトを生み出すことが、次のステップだと思っています。
2016年より新井茂晃が「ファッションを読む」をコンセプトにスタート。ウェブサイト「アフェクトゥス(AFFECTUS)」を中心に、モードファッションをテーマにした文章を発表する。複数のメディアでデザイナーへのインタビューや記事を執筆し、ファッションブランドのコンテンツ、カナダ・モントリオールのオンラインセレクトストア「エッセンス(SSENSE)」の日本語コンテンツなど、様々なコピーライティングも行う。“affectus”とはラテン語で「感情」を意味する。
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