FASHIONSNAPによる業界の職業図鑑。ファッション業界にはどんな職業があるのか? 名前は聞いたことあるけど実際どんな仕事をしているのか? という疑問を解消すべく立ち上がった連載企画です。業界の最前線で活躍する人を招き、リアルな職務内容や必要なスキルなどをファイリングしていきます。
第8弾は生産管理編。「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」で生産管理部門のチーフを務める吉野正樹氏の協力を得て、この職業の魅力を探ります。
目次
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生産管理ってどんな仕事?
一言で表すとしたら、ブランドが作ると決めた服を「商品」にするまでの一連の流れを請け負う仕事です。価格や納期などの調整、展示会準備のほか、生地や製品指示書など服を作るために必要な物を一式揃えて工場に送る「職出し」と呼ばれる作業など、業務の幅は広いです。
生産管理の業務範囲は会社やブランドによって様々だと思いますが、僕の場合は生産管理の視点から生地使いやパターンについて企画側に意見を出したりもしています。
店頭に並んだ商品をお客様が見た時に「価格に見合っていないな」と思われるのは嫌なので、コストの削り方を工夫して、価格以上の価値を感じてもらえる服を届けられるよう努力しています。
生産管理になるには?
生産管理になるための「王道ルート」はありません。専門学校などで服の知識を学んでから生産管理になる人もいれば、服飾系以外の大学を出て働いている人もいます。
僕の場合は文化服装学院のアパレル技術科を卒業し、OEM関係の会社に生産管理として採用されました。それから縁あって「N.ハリウッド」で働かせていただいています。実は元々パタンナー志望で、専門学校に行くまで生産管理という職業があることすら知らなかったんです(笑)。
他の専門職とは違い、会社やブランドの求める部分と一致すれば経験や専門知識がなくても採用される可能性はあるので、誰にでもチャンスはあると思います。
必要な資格や勉強しておいた方が良いこと
生産管理になるために必要不可欠な資格は特にありません。しかし、生地屋や工場とやりとりをする中で専門用語が飛び交うことがあるので、服についての知識が豊富だと業務が円滑に進むでしょう。
自分1人では完結せず、関係各所とやりとりしながら進めていく仕事なので、コミュニケーション能力も大事になってきます。服についての知識は、ある程度の意欲があれば、後から習得可能です。
生産管理のある1日のスケジュール
やりがいは?
ランウェイショーや展示会などの発表の場で、ブランドの服が多くの人の目に留まり評価されること。また、外を歩いている時にブランドの服を着ている人を見ると「自分が携わった服に価値を感じてもらえたんだな」と思いモチベーションになります。
発表した服には生産管理として自分が関わってはいますが、自分の名前で発表される訳ではありません。それでも喜びを見出せるかどうかが大事になってくると思います。
大変だなと感じる時は?
納期がある仕事なので、スケジュールに沿って進行することがマスト。また、「想定している商品価格にはめこむために何ができるか」を考え、試行錯誤を繰り返すのも大変です。忙しい時期だと残業が続いたり、休日に出勤しなければならない時もあります。
あくまで取引先への依頼と管理をする立場なので、時に自分1人の力ではどうにもならない場合もあり、納期ギリギリの仕事をしている時は胃が痛くなることも。。また、この仕事は為替など世情に左右される部分もあるので、常にアンテナを貼っておかなければなりません。
生産管理の収入はいくら?
生産管理の年収はだいたい350〜800万円ほど。独り立ちする前のアシスタントでは350万円前後、経験を積んでキャリアアップを重ねると700万〜800万円が見えてきます。
会社や個人の仕事量によって収入は変わるので、あくまで一つの目安として考えてください。
生産管理からの発展性、転職などは?
独立してOEM企業(外部から委託された製品の製造を請け負う企業)を立ち上げる人が多いです。そのほかには、生産管理で工場とやりとりした経験を活かして、メーカーと工場を繋いで円滑に進める仲介業を始める人もいます。
生産管理は業務範囲が広いのと、応用をしやすい仕事なので「潰しが効く」というメリットはあります。例えば企画だったり、選択肢は多いと思いますね。
生産管理に向いている人や大切なこと
納期や価格管理などで神経をすり減らすこともあるので、メンタルの強さやオンオフの切り替えスキルは大事になってきます。また、地道な仕事なので、表舞台に立ちたい人よりは裏方として組織を支えたいというタイプの方が向いていると言えるでしょう。
服が好きというのも必須条件ですね。「納期に間に合わせればなんでもいい」ではなく、服に対して愛を持って仕事に取り組めるかが重要だと思います。
生産管理を志す人に向けて
キラキラした仕事ではないですが、ファッション業界の色々なことを勉強できる楽しい仕事だと思います。「ファッションに携わりたいけど、どういう仕事を選んだらいいか分からない」と悩んでいる人がいたら、ぜひ勇気を持ってチャレンジしてみてください!
生産管理の年間スケジュールの一例
1月
・今秋冬商材のサンプルアップ&コスト精査
・今春夏商材の立ち上げに向けての検品&納品手配
・繁忙期
2月
・今秋冬商材の展示会に向けて追加指示や修正依頼など
・次春夏シーズンに向けての準備(1stサンプル作成など)
3月
・今秋冬シーズンの展示会
・次春夏シーズンの1stサンプルアップ
4月
・次春夏商材の1stサンプル修正&展示会サンプルのテスト
・比較的ゆっくりできる時期
・GW
5月
・次春夏商材 展示会サンプルの職出し(職出し=生地、指示書など服を作るために必要な物を一式揃えて工場に送ること)
6月
・次春夏商材 サンプルの職出し&検品
・今秋冬商材の立ち上げに向けての検品&納品手配
7月
・次春夏商材のサンプルアップ&コスト精査・今秋冬商材の立ち上げに向けての検品&納品手配
8月
・次春夏商材の展示会に向けて追加指示や修正依頼など・次秋冬シーズンに向けての準備(1stサンプル作成など)
・夏季休暇
9月
・次春夏シーズンの展示会・次秋冬シーズンの1stサンプルアップ
10月
・次秋冬商材の1stサンプル修正&展示会サンプルのテスト
11月
・次秋冬商材 展示会サンプルの職出し
12月
・次秋冬商材 サンプルの職出し&検品・春夏商材の立ち上げに向けての検品&納品手配
・繁忙期
・年末年始休暇
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