
1998年、ソフィア・プランテラ(Sofia Prantera)とラッセル・ウォーターマン(Russell Waterman)がロンドンで設立した「サイラス(SILAS)」。ベーシックなデザインながら独特の色使いやディテールを加えたアイテムで人気を博し、さらに新進気鋭のアーティストを起用したグラフィックやオリジナルフィギュアなどで支持を集め、1990年代後半〜2000年代のUKストリートシーンを象徴するブランドとして存在感を放った。当時、そんなサイラスの潮流を肌で感じ、ロンドンのインディーバンドのギグやストリートシーンに身を置くひとりの若者がいた──それが、のちに「アフィックス(AFFIX)」で手腕を振るうタロウ・レイ(Taro Ray)だ。そのタロウが、新たにサイラスのクリエイティブ・ディレクターに就任し、2026年春夏シーズンからUK本国企画を始動。かつて憧れたブランドを、自らの手でどう更新していくのか。タロウの視点からサイラスの過去と未来を紐解く。
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タロウ・レイ
Image by: Naoki Usuda
⎯⎯まずは、「サイラス」のクリエイティブ・ディレクターに就任した経緯を教えてください。
家族の用事で日本を訪れた際、サイラスを保有するビーズインターナショナルの方とお会いする機会に恵まれ、ブランドの思い出について語り合ったんです。ただ、僕はその時にビーズインターナショナルがサイラスを手掛けているとは知らなくて(笑)。それから数週間後、電話でクリエイティブ・ディレクター職のオファーをいただきました。なので、とてもオーガニックな始まりだったと思っています。
⎯⎯タロウさんにとって「サイラス」の思い出とは?
タロウ:若い頃、「ギミー ファイブ(Gimme Five)」(1989年にロンドンで設立されたストリートウェアのディストリビューターでエージェンシー)でインターンをしていたので、マイケル・コッペルマン(Michael Kopelman)(ギミー ファイブの創設者でUKストリートシーンの最重要人物の1人)と知り合い、彼がショーディッチ(UKストリートシーンが盛んなロンドン東部のエリア)に持っていた倉庫に連れて行ってもらったことがありました。その倉庫の前を通る人たちが、サイラスを着ているのを、ほぼ毎日のように目にしていたんです。また別のストーリーもあって、2000年代初期の15〜16歳の時、本来は年齢的に入れないインディーバンドのギグによく忍び込んでいたのですが、その場にいたお客さんの多くがサイラスを着ていて、それからブランドを意識するようになりましたね。

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⎯⎯当時の「サイラス」は、タロウさんの目にどのように映っていましたか?
“ブランディングのないブランド”だったと思います。言ってしまえば、サイラスだと分からない、ごく普通のパンツのようなイメージです。だからこそ、ブランディングを求めていないアンダーグラウンドやインディペンデントなカルチャーに身を置く人たちが着ていました。それに比べて、今のストリートカルチャーは観光的でマスになってしまいましたよね。成功の味を覚えたカルチャーは、往々にしてクリンジ(見ていられない)な方向に向かってしまうことは仕方ないですが。
⎯⎯では、クリエイティブ・ディレクターの就任にあたり、どのような「サイラス」を目指していくのでしょうか?
設立当初のサイラスは、誰も見たことのないクリエイションがオリジナリティを形成していましたが、今は2026年というエネルギーを落とし込んだ新しいオリジナルを作りたいと思っています。ですが、それがどのようなものになるか、僕自身まだ分かっていません。サイラスは、いつも何をするのか分からず、フォーマットもありませんから。あるのは、“楽しいことをしたい”というメンタリティーだけですね。
それと、サイラスが2003年に出版したブランドブック「Where is Silas?」があるのですが、ブランドのコミュニティやフレンドシップ、ファミリーの考え方などが凝縮されていて、とてもオーガニックな関係性のブランドだったことが分かります。なので、僕もインディーバンドやローカルなギグに行って偶然出会った人と一緒に仕事をするような動きをしたいですね。

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⎯⎯オリジナル期の“再現”と“再定義”のバランスは、どのように考えていますか?
「何がサイラスか、どうすればサイラスになるか」を日々考えています。ただ、当時を振り返るとサイラスはシルエットよりもレイヤリングのイメージが強く、“考えないで着られるイージーな洋服”だったと思っているので、自分なりに咀嚼すると“適当にレイヤーしても成立する洋服”ですかね。それでも、今ここで僕の口から説明するより、どう成長していくかを見てバランスを判断してほしいです。
⎯⎯シーズンのコレクションは、どのようなプロセスで制作していますか?
まずは、オリジナル期のサイラスのアーカイヴを一通り見て、それを僕なりに解釈します。それからインディーバンドなどのギグに行き、どんな人がどんな服を着ているかを観察し、自分ならどう着るかのマインドセットを作り、ディテールなどを取り入れたりしています。2026年秋冬のコレクションを見ても、そういった部分が分かるかと思います。
⎯⎯やはり、オリジナル期の「サイラス」の背後には音楽やアートなどのカルチャーがあったように、タロウさんのデザインにも音楽が影響しているようですね。
音楽とその周辺のカルチャーは、常に着想源のひとつですね。
⎯⎯では、2シーズン目となる2026年秋冬シーズンのアイテムをいくつか紹介していただけますか?

Image by: Naoki Usuda
このパンツは、ベルトを巻くことを想定しておらず、ベルトループもありません。その代わり、ベルトの代わりに靴紐を使用するインディーカルチャーの着方をリファレンスにして、ドローストリングを内蔵しています。縛る部分がセンターではなくサイドなのは、ストリートスタイルに倣っているからですね。

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このジャケットは、セットアップとして着られるけど、セットアップとは考えていません。ある時、友人が「テーラードスーツを着たくないけど、着なくてはいけないシーンがある」と話していたんです。なので、ラペルがあるからフォーマルなシーンでも着られるけど、テーラードスーツっぽくはないジャケットを作りました。

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このトートバッグは、持ち運びが便利なパッカブル仕様です。それでいて、重いものも運べるようにマチを設計していて、トートバッグとして使用しているときはロゴが見えないようになっています。
⎯⎯シルエットやサイズ感などは、英国と日本のどちらを意識していますか?
“基本的に僕がどう着るか”を考えたシルエットやサイズ感になっていますね。ただ、2026年秋冬は26年春夏と比べて全体的に少しだけゆとりを持たせています。
⎯⎯オリジナル期は、フィギュアなどファッションの枠に留まらないクリエイションも展開していましたが、2026年秋冬より新キャラクターを誕生させていますね。

Trevor
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Trevor
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Trevor
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このキャラクターは、「トレヴァー(Trevor)」という名前なのですが、その目を見ても分かるように、彼はあまり物事を気にしないキャラクターで、普段ロンドンで見かける人たちの雰囲気を思い出させるような存在でもあります。実は、1シーズン目からトレヴァーのようなキャラクターを構想していたのですが、実現するまでに少し時間がかかりました。最終的には、10代の頃に僕とインディーバンドを組んでいて、現在はデザイナーとして活動している友人のフェリー・ガゥ(Ferry Gouw)に相談し、一緒に名前を考え、形にしてもらったんです。

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⎯⎯最後に、「サイラス」は今後どのような文脈で語られていくのが理想ですか?
設立当初の「サイラス」は、今こうして語られていることを想定していなかったはずです。当時と同様に、僕は今後のことを知らないし、どうでもいいし、なんでもいい。とにかく、何も考えず今を生きるだけです。
最終更新日:
◾️SILAS POP-UP
開催期間:2026年3月19日(金)〜3月22日(日)
会場:GR8
所在地:渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿 2.5F
営業時間:11:00〜20:00
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