
Image by: 左:LIKOU、右:ONCE

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国内のランニングシーンで、インフルエンサーやコミュニティを起点とする新ブランドが増えている。ファッションアパレルの領域では、インフルエンサーがブランドを立ち上げることは珍しくないが、スポーツウェアはデザイン性だけでなく、素材選定やパターンメイキングを含む機能性も求められるため、参入障壁が比較的高い。それでも、大手メーカーが中心だった状況は変わりつつある。アウトドア領域では小規模なガレージブランドが存在感を強め、ランニングでも新たなブランドの形が生まれ始めている。その一例といえるのが、コミュニティを基盤にオリジナルウェアを展開する「リク(LIKOU)」と、ランニングを取り入れたライフスタイルを発信する南ひかりが手掛ける「ワンス(ONCE)」だ。
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走ることをクールなカルチャーに

Image by: LIKOU
モデルの今西龍君とペリエ陸は2025年6月、ランニングコレクティブ「リク(LIKOU)」として活動を始めた。きっかけは、2人が海外でのモデル活動を通じて、欧米圏に広がるランニングコミュニティを目にしたことだった。「東京でもクールなランニングカルチャーを広めたい」という思いから、駒沢オリンピック公園を拠点にグループランを開始。現在も定期的に開催しており、イベント開催時には約50人が集まる。
リクの理念は、コミュニティ、ブランド、セレクトショップの3つを柱に、「ランニングを軸とした新たなカルチャーをつくること」だ。その一環として、2026年7月にブランド初のオリジナルアパレルを発表した。「ノスタルジー」をテーマにしたファーストコレクションでは、リクのブランドロゴの着想源にもなった1964年の東京オリンピック日本代表ユニフォームをもとに、赤をシーズンカラーに採用した。




デビューコレクションのヴィジュアル
Image by: LIKOU
部活動などで用いられるビブスをモチーフにした「ビブ タンクトップ」(1万6500円)をはじめ、ショートスリーブTシャツ(1万7600円)、ロングスリーブTシャツ(1万9800円)、インナータイツ付きのショーツ(2万4200円)など、全7型を揃える。裾にはあえてパイピングを採用するなど、昔ながらのデザインを現代の価値観で再解釈した。赤、グレー、ブラックを基調としながら、アイテムごとにグレーや赤の色味を微妙に変えることで、幅広い組み合わせを楽しめるよう設計している。
リクの強みは、約1年間のグループランを通じて形成してきたコミュニティにある。参加者とのつながりは、時にプロダクトを生み出す基盤としても機能する。「グループランの参加者は、コミュニティメンバーであり、友人であり、顧客でもある。近い距離で意見を聞けることが、ものづくりに活きています」(今西)。2026年7月に南青山で開催した初のポップアップでは、当初の想定以上に女性客から反応があり、今後のサイズ展開を考えるうえで新たな発見になったという。
モデルとしてさまざまなメーカーのプロダクトを着用してきた2人は、大手メーカーの機能性や品質を信頼している一方で、大手ブランドのデザインは画一的であることが多いとし、そこにリクの可能性を見出している。ファッションを愛する2人が目指すのは、既存の選択肢とは異なるランニングウェアだ。「服が好きで、『みんなとは違う格好がしたい』というランナーにとっての選択肢になりたい。街でリクを着ているランナーを見て、『あのウェア、どこのだろう?』と調べてみたら、かっこいい世界観を発信していた、と発見してもらえる存在でありたいです」(ペリエ)。



デビューコレクションでは、コミュニティ活動を活かしたビジュアル制作も行った。
Image by: LIKOU
9月24日からは、「サティスファイ(SATISFY)」や「ディストリクトビジョン(District Vision)」、「ソアー ランニング(SOAR Running)」など、国内外のインディペンデントブランドを扱うセレクトショップ事業にも乗り出した。「ランニングを始めたいけれど、何を着ればいいかわからないというとき、まずリクを見れば何か見つかると思ってもらえる場所を目指す」(今西)。公式オンラインストアでの販売を皮切りに、将来的には実店舗の出店も視野に入れている。
リクが目指すのは、ファッションを入り口としたランニングカルチャーの創出だ。「ウェアを手に入れたから走りたい」という動機から、走ることの楽しさを知る人を増やす。同時に、海外のランナーにとっても、日本のランニングカルチャーを知るためのハブとなることを目標に掲げる。日本発のプロダクトとセレクトを通じて、「走ることはクールなことだ」というカルチャーを、東京から世界へ発信していく。

代表の今西龍君(左)とペリエ陸(右)
Image by: LIKOU
「着たい服」を起点に
ワンスは、2026年4月にデビュー。ランニングを軸としたライフスタイルを発信する南ひかりが、自身の「着たい」という思いをウェアにすることから始まったブランドだ。「走り始めた当初は、機能性を重視したタイトなシルエットや、シンプルでスポーティーなデザインに抵抗があり、『これなら着られる』という消去法でウェアを選んでいました。だからこそ、自分の頭の中にある純粋な『着たい服』のイメージを形にしたいと思ったのが、ブランドの出発点です」(南)。




ファーストコレクションのヴィジュアル
Image by: ONCE
ワンスが掲げるのは、ファッション性と機能性を高いレベルで両立したランニングウェアだ。7月に発売したセカンドコレクションでは、フルマラソンでの着用を想定したタンクトップ(1万5290円)やショーツ(1万3200円)をラインナップ。「なるべく手ぶらで走りたい」という南自身の意見を反映し、エナジージェルやリップ、鍵、スマートフォンなどを収納できるポケットを複数配置した。「揺れにくい構造でポケットを5つ配置したタンクトップは、使用感を紹介した投稿が100万回以上再生されるなど、特に反響がありました」。
ポケットを配置した「エッセンシャル ラン ブラトップ」(1万5290円)の着用動画
また、サングラスホルダー付きのキャップ(8580円)は、朝起きてすぐ走ることの多い南が「ノーメイクの顔を見られたくない」と感じながら走っていたことをきっかけに、顔が隠れるよう、つばを大きく深めに仕上げたという。「ランナーが日々感じる『こういうものがあったらいいな』を形にすることには自信があります。その上で、ファッションがもたらすときめきも感じてもらえたらうれしいです」。



サングラスホルダーキャップ(8580円)
Image by: ONCE
デビューから5カ月が経った現在、ブランドの主要顧客は20〜40代の女性が中心となっている。今年9月、渋谷・富ヶ谷でタイのジュエリーブランド「ロビンウッド(ROBINWOOD)」との共同ポップアップを開催した際には、ランニング未経験者の来場も多く、「今は走っていないけれど、今日買ったウェアを着て走り始めたい」という声も寄せられた。新作のピンクのキャップも想定を上回る反響を得たことで、当初はベーシックカラーに寄っていたアイテムのカラー展開を見直すことに決めたという。
公式オンラインストアでは、海外からの注文が売上の約10%を占め、特に台湾や香港を中心としたアジア圏からの反応が多い。「アジア人の華奢な体型に合わせたウェアを展開し、『東京発』というアイデンティティを大切にしています。モデルにもアジア系の方を起用しており、そうした姿勢が共感につながったのかもしれません」。



今年9月に開催したポップアップの店頭
Image by: FASHIONSNAP
発信者としての強みを生かし、顧客との接点も積極的に設けている。2025年11月からはコミュニティランを定期開催し、ランニング後にはカフェで交流の時間をつくる。参加者の仕事や走り始めたきっかけ、日々のライフスタイルについて友人と話すように聞き、集まった声をデザインに反映している。素材選びでは、環境への配慮や生産背景の透明性を重視しながらも、ロット数などの制約が課題となっている。「現状できる範囲で最善の素材を選び、プロダクトに落とし込むことが先決です」と南。今後はブランド規模を拡大し、オリジナル素材の開発や、より高機能な素材の採用を目指す。
南が語るワンスのゴールは、「スポーツに馴染みのなかった人が、ファッションの延長でランニングを楽しめるきっかけをつくること」だ。「ウェアに袖を通したときの高揚感や、心がワクワクするような感動を届けたい。形からでも、ウェアを通じて『走ってよかった』と思ってもらえることが、今の私たちにできるランニングシーンへの貢献だと考えています」。

ワンス ディレクターの南ひかり
Image by: ONCE
リクとワンスが示しているのは、ランニングウェアが単なる運動着ではなく、カルチャーへの入り口にもなり得るということだ。コミュニティやファッションを起点に生まれる新たな選択肢が、これからのランニングシーンを少しずつ広げていく。
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