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世界に注目される日本の伝統技術。中でも、ものづくりの伝統が色濃い革靴の世界には、歴史の深いブランドが多く存在しています。この連載では、そんな日本が誇る革靴文化を推進する団体・日本靴工業会に参画する革靴ブランドに着目。髙島涼さんが各ブランドの店舗を訪問し、ブランドの魅力を紐解きます。第3回は、東立製靴をピックアップ。本社としても営業している工場直売店で、職人の技術を肌で感じられる工場見学とオーダーサービスを体験しました。
■日本靴工業会とは?
日本の風土や日本人の足に合う良質な革靴の提供と普及を目的とするNPO法人。革靴の仕様や品質に関する情報提供や日本の革靴規格(JIS)の策定、革靴の製造過程で生じる環境問題への対応など、幅広い活動に取り組んでいます。今後は、激しさを増す国際競争の中で日本の革靴を更に発展させていくことを目標に掲げています。
参画企業:岩手製靴、大塚製靴、共和工業、チヨダシューズ、東立製靴、ハルタ、マドラス、宮城ハルタシューズ、ムーンスター、リーガルコーポレーション(五十音順)
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東立製靴とは?
東立製靴は、戦後間もない頃、革靴関係の商売が盛んな浅草吉野町に創業。当初は「セット商店」として、甲革から靴底まで、革靴に使用する材料一式の販売を行っていましたが、後に靴職人たちによる高級紳士靴の製造を開始。1962年、東立製靴として千葉県柏市に製靴工場を設立以来、半世紀以上にわたって国内有名ブランドの協力工場として高級紳士靴の製造と修理を行っています。
Image by: 東立製靴
東立製靴は、2004年、オリジナルブランド「ショーンハイト」をスタート。ショーンハイトとは、ドイツ語で「美しさ」を意味し、人々の生活を足元から支える機能美と見た目の美しさを追求した靴作りを目指しています。「大切な靴だからこそ、修理をしてより永くお履き頂きたい。」という思いのもと、顧客との直接の関わり合いを大切にしながら靴を一足一足作りあげていく「コンビネーションオーダー」をメインに展開しています。
東立製靴本社工場直売店を訪問!
今回、訪問したのは、東立製靴の本社であり工場直売店として運営している千葉県柏市の工場直売店。グッドイヤーウェルトをはじめ、マッケイ、ステッチダウンなどの機械設備を整備し、アッパーの縫製から底付け、仕上げに至るまで、一貫した生産体制を有する量産型の工場として営業しています。今回は、そんな工場直売店の内部を、東立製靴の伊藤雅史代表に案内してもらいました。
■東立製靴本社工場直売店
所在地:千葉県柏市豊四季341-13
営業時間:平日 10:00〜18:00
ショーンハイトコンビネーションオーダーを体験!
工場直売店の最大の魅力が、その場でさまざまなサンプルバリエーションを見ながらシューズをオーダーできる「ショーンハイトコンビネーションオーダー」。ベースの型に好きなようにアレンジを加えることができるパターンオーダー形式で、自分だけの1足を作ることができます。価格は3万3000円〜。
今回は、そんなショーンハイトコンビネーションオーダーを髙島さんが体験。ベースとなる木型からレザーの種類、カラーまで、全てを髙島さんのチョイスで制作してもらいます。
①まずは、靴の木型を選びます。どんなシーンで履くのかといった着用用途に合わせて相談しながら選ぶのがおすすめです。サンプルを試着して自分の足にフィットする木型を選びますが、左右のわずかな差にも対応できるように、左右で違うサイズを選ぶこともできるんだとか。
Image by: FASHIONSNAP
完成した革靴がこちら!
「今回はカジュアルに履ける革靴が欲しかったので、アメリカンな丸みのあるラストにUチップデザインを選びました。革は、ボックスカーフで高級感がありながら柔らかく、滑らかで履き心地も快適です」(髙島さん)
形から革の素材、色、細かいポイントを一つ一つ選ぶことができるのは魅力的ですが、正直迷ってしまいました。
髙島さん
伊藤さん
ショーンハイトコンビネーションオーダーは、パターンオーダーではありますが、お客様のご要望によってその都度対応しているので、自由度の高さが魅力です。お客様のご要望に応え続けていたら、いつの間にかバリエーションが数え切れないほど増えていました。
工場の内部を見学!
工場直売店では、その名の通り工場で職人の技術を間近で見学することができます。一般公開はしていませんが、同店でコンビネーションオーダーを依頼した人を対象に、見学を受け入れているんだとか。今回は、そんな工場の内部を特別に見学。職人の手作業による革靴作りの工程を1から案内してもらいました。
伊藤さん
工場見学は、当店にご足労いただいたお客様への感謝の気持ちを込めてご案内しているものなので一般公開はしていませんが、ご来店の際にはなるべくお立ち寄りをおすすめしています。
①裁断
最初の工程として、オーダーメイドをもとに作成したデータを機械に通して革の裁断を行います。裁断には抜型を使う方法と機械での裁断の2通りの方法がありますが、オーダーメイドの場合には機械で裁断することがほとんど。裁断された革は、山形の工場で縫製されます。
下に向かって空気(風)が流れる仕様となっているので、上に置かれた革がずれることなく裁断されます。
Image by: FASHIONSNAP
伊藤さん
血管などの筋が入っているものは使わないようにしているんですが、最近は革自体の供給が減っているので、今後は筋などの欠陥とされてきた要素も革の味として大切にしていきたいと考えています。
②釣り込み
山形の工場で縫製された革を型にはめて3次元にする工程を「釣り込み」と言います。専用の「トウラスター」と呼ばれる機械を使って、1つずつ丁寧に、木型に合わせて革を巻いていきます。
まずは、専用の機械でトゥ部分の釣り込みを行います。
Image by: FASHIONSNAP
伊藤さん
革は繊細なので、傷がつかないように職人のテーブルの上には極力何も置かずに作業するようにしています。
③掬い縫い
続いては、ソールの部分に底材を入れて周辺を縫う「掬い縫い」と呼ばれる工程です。ホチキスで仮止めした後に一本の糸でウエルト(細革)と呼ばれるパーツを縫い付けます。
溶かした松脂を塗りながら縫います。「松脂を使うことで、固まった際に糸が解けなくなり、頑丈な仕様になります」(伊藤さん)
Image by: FASHIONSNAP
④削り
最後に、仕上げの工程である「削り」に入ります。「コバ」と呼ばれるソールの側面のエッジの部分を削る作業で、回っているカッターの歯に靴を当てます。伊藤さん曰く、「1番度胸とセンスがいる工程」だそう。コバの削りが終わったら、色付けなどの細かい仕上げをして完成します。
伊藤さん
コバが綺麗じゃないと靴が綺麗に見えないので、仕上げではありますが全く気の抜けない作業です。
スタッフが選ぶ一押しのオーダーは?おすすめ2選
東立製靴は、オーダーメイドを強みとしていることから、既成靴として展開しているモデルも、全てオーダーで注文の多かったものがベースになっています。今回は、そんな東立製靴のオーダーで特に人気を集める革を伊藤さんに紹介してもらいました。
伊藤さん
今回は、オーダーメイドに力を入れている東立製靴ならではの質にこだわった素材を2つご紹介します。
レーデルオガワとのタイアップによるコードバン
まず、紹介してもらったのがレーデルオガワ社の伝統的な染め技術を採用したコードバン。東立製靴では、レーデルオガワとのタイアップによるオリジナルのコードバンを提供していますが、国産の革素材の品質の良さを実感できるレザーとして特におすすめなんだそうです。
※コードバン…馬のお尻部分の革。なめされた革とは異なり、皮膚組織の内部にある厚さ約2mmの「コードバン層」を削り出したもの。
伊藤さん
レーデルオガワさんの革は、東立製靴のブランドコンセプトである「修理をして永く愛用して頂ける(アフターケアまで自信を持ってお勧め出来る)」靴という条件を満たしていると思ったので、タイアップを決めました。実際、パターンオーダーの際には多くのお客様からご好評を頂いています。
姫路の皮革メーカー「山陽」のバリエーション豊かなレザー
山陽のレザーを使用したメンズのダブルモンク(1万8700円)
Image by: FASHIONSNAP
山陽のレザーを使用したウィメンズのローファー(1万8700円/いずれも税込)
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続いて紹介してもらったのが、兵庫県姫路市の皮革メーカー「山陽」のレザーを使用したモデル。東立製靴では、山陽のレザーを特におすすめしていますが、その理由が豊富なカラーバリエーション。さまざまな要望に応えることができるので、少し変わったデザインにしたいという人には特におすすめなんだとか。
Image by: FASHIONSNAP
伊藤さん
さまざまな色の革を取り揃えることで、自在なカラーアレンジが可能になります。オーダー時には、デザインや靴のシルエットに合う革をじっくり相談しながら案内しています。
最後に
工場直売店ならではの魅力が垣間見えた東立製靴の本社。革靴が好きな人はもちろん、オーダーに興味のある革靴初心者の方にも、ぜひ一度足を運んでみることをおすすめします。
職人さん1人1人の手作業は圧巻で、ずっと見ていられそうなほど感動しました。今回、オーダーした靴も同じように作られていたのだと実感することができて、より愛着が湧きました。
髙島さん
伊藤さん
靴そのものだけではなく、製作過程を目にすることでより1足1足を大切に履こうという気になりますよね。東立製靴のコンビネーションオーダーは、国内各地の百貨店にてポップアップ展開もしているので、お近くの店舗で開催の折には、是非気軽にお試し下さい。
■東立製靴本社工場直売店
所在地:千葉県柏市豊四季341-13
営業時間:10:00〜18:00
定休日:土日祝日
問い合わせ:04-7146-8680 ※ショーンハイト コンビネーションオーダーは要電話予約
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