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Tsubasa Dicky

Image by: FASHIONSNAP

「流行だからダサい、はない」 世界を舞台に活躍するヘアスタイリスト Tsubasa Dickyの“イケてる”の探し方

ルイ・ヴィトンやアワーレガシーからも指名

Tsubasa Dicky

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 三軒茶屋駅から徒歩数分に、ヘアサロンと古着屋が融合した空間「リンカーネーション(reincarnation)」は静かに佇む。主宰するのは、ヘアスタイリストのツバサ ディッキー(Tsubasa Dicky)だ。

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 彼の手掛けるヘアスタイルには、モードでありながらどこか湿度を帯びたリアルな質感が宿る。その創造性から、「アワー レガシー(OUR LEGACY)」のコレクションヴィジュアルや、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)NIGO® のコラボが話題となった「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」2025年秋冬メンズコレクションのグローバルキャンペーンに抜擢されるなど、国内外で活躍している。

 そんなツバサに、昨年リニューアルしたリンカーネーションの店舗で、ファッションが好きだった少年時代、ニューヨークで得たバイブス、「イケてる」クリエイティブに宿るものを聞いてみると、彼らしい自然体の言葉が返ってきた。

■Tsubasa Dicky
1993年生まれ。東京でのアシスタントを経て、ニューヨークに渡る。帰国後は東京を拠点に、国内外の雑誌のエディトリアル、ブランドのヴィジュアル、アーティストのヘアなどを手掛ける。2023年に表参道に「リンカーネーション(REINCARNATION)」をオープンし、ヘアサロンと服屋を融合したカルチャースポットに。2024年に現在の三軒茶屋に移転。2025年夏、同ビルの上層階に古着屋「リンカーネーション 5(REINCARNATION 5)」をオープンした。
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22歳で渡米 自由なクリエイティブに触れた日々

⎯⎯ツバサさんが手掛けるリンカーネーションは、ヘアサロンと服屋のミックスですが、ご自身はどんなファッションに影響を受けたのでしょうか。

 両親も服が好きだったので、「かっこいい服が着たい」という気持ちは子どもながらに持っていましたね。小学校3年生の時にピアスを開けて、美容室で髪も染めてもらっていました。中学生になってからは「チョキチョキ(CHOKiCHOKi)」や「チューン(TUNE)」を読み始めたり、地元の兄貴みたいな先輩たちに古着やアメカジを教えてもらったり。割とその時代ごとに流行もキャッチしていた気がしますね。特にどのカルチャーが好きかは決め難いですが、系統は変遷がありつつも古着やグランジ系はずっと好きですね。

⎯⎯元々、ヘアスタイリストになりたいと考えていたんですか?

 気がつけば、という感じですね。美容学校に行って、卒業後は都内のサロンに就職しました。当時就職したサロンがニューヨークにも店舗を持っていて、2年くらいアシスタントとして働いてから海外への興味が湧いて、ニューヨークに行きました。2013年、22歳の時だったと思います。

⎯⎯当時、ニューヨークに渡ろうと考えた理由は?

 安直かもしれないですけど、海外のクリエイティブに触れてみたいと漠然と思ったんですよね。もっと一人で国外の空気感を吸収できたらいいなと。誰かに(アシスタントとして)つきたいとか、会いたいとか、そういう計画は正直無かったです(笑)。当時の気持ちと決断ですね。

⎯⎯勢いは大事ですよね。ニューヨークでの生活はどうでしたか?

 最初は全然英語も話せなかったんでアシスタントの仕事すらもらえなくて、がむしゃらに食らいつくしかなったです(笑)。朝5時から英語を勉強して、徐々に話せるようになって、地道に仕事がもらえるようになりました。

⎯⎯現場でどんなことを学びましたか。

 サロンワークをメインに先輩たちの撮影に同行させてもらって、リチャード・カーン(Richard Kern)や、ティム・バーバー(Tim Barber)のような、えげつないセンスの写真家の方々の現場に入れたのは貴重でした。若いうちに、そういう現場の空気に触れられたのは大きかったです。あとは街として変な人もたくさんいて包容力があるというか、「俺、これで良いんだな」ってバイブスも強くなれたかな。

トレードマークだった長髪を昨年ばっさりとカット。友人のヘアサロンでドレッドヘアに

⎯⎯日本とクリエイティブの違いはありましたか?

 どの現場も「やベぇな」というのが基本ですが、作るものの幅が広いなと感じました。日本だとヌードや性的な描写みたいなものって、割とセンシティブな扱いが多いじゃないですか。でも、向こうの感覚だと、何の引っかかりもなくアートとして成立する。

 例えば、下着無しのTシャツ1枚のルックで、胸が透けていたとしても、いやらしいとかではなく、かっこよく落とし込める。日本でも色んな挑戦をする人はいますが、空気感の土台が違うのは感じました。

⎯⎯自由度が高い?

 良い悪いは置いといて、日本でやるとどうしてもセクシャルな部分が強く出てきちゃいますよね。そういう面でニューヨークは、日本とはベクトルが違う発展なんだなと現場を見て感じていました。自由なクリエイティブを色々と見れて、「コレもありなんだ」という感覚が広げられたのは良い経験でした。

ヘアサロンは「自己中」になって自分も楽しめる場所

⎯⎯帰国後も元のサロンに所属していましたよね。独立を決めたきっかけは何だったのでしょうか。

 元々いたサロンの先輩たちもニューヨークと行き来する方が多かったので、1年くらいニューヨークで働いてから戻りました。サロンワークも撮影も、色んな経験をさせてもらいましたし、良い職場ではあったのですが、30歳になる前に環境を変えたいと思っていて。自分の力で頑張ってみようと、29歳の時に独立してリンカーネーションを表参道にオープンしました。

⎯⎯サロンとアパレルの複合業態は以前から考えていたんですか?

 シンプルに、普通のことをやってもつまらないというか。僕自身が飽き性なので、「自己中」になって自分も楽しめる場所にしたかったんです。アパレルをやっていた友人と話して、一緒にやったら面白そうだなとまとまって、この形態になりました。

ビル4階の「リンカーネーション 5」

⎯⎯店名のリンカーネーションは直訳すると「輪廻転生」。耳慣れない言葉ですが、決め手は?

 一緒にお店を始めた相方と考えたんですが、マジでいい案が全然出なくて(笑)。たまたまロンドンの友達にアイデアを聞いてみたら、「リンカーネーションっていう言葉はどう?」と教えてくれて。輪廻転生が持つ「生まれ変わる」というニュアンスがしっくりきたんですよね。新しくなる、アップデートする、イメチェン、みたいなポジティブな雰囲気が自分たちの気分と合うなって。

 去年サロンの上にオープンした古着屋の「リンカーネーション 5」は、「五感」とか人間のフィーリングを大事にしてるからっていうのもありますが、数字ってキャッチーだよなっていうのでつけましたね。

⎯⎯個人のヘアサロンは、オーナーの世界観が色濃く反映されますが、ツバサさんはどんなお店にしたいと考えていましたか?

 自由な意志の集まりみたいな、自分の時間を使って己を高めたい子達が集まれる場所にしたかったですね。全部僕に従えとかは思わない。シェアサロンとも違うし、かといって一般的なヘアサロンの正社員とも少し違う、その中間かな。サロンワークも撮影も両立していきたいとか、各々の「これがイケてる」を持っていて、突き詰めたい子が集まったらいいなと思うし、それができる場にできたら良いなと。

ビル3階のヘアサロン。インテリアは知人たちからもらった物、ツバサがふと良いと思った物が取り入れられている

イケてるファッションのために「ヘアだけで爪痕を残さない」

⎯⎯ツバサさん自身のワークについて、ある時期からアワー レガシーや「パープル(PURPLE)」、ルイ・ヴィトンなどグローバルでの仕事が増えた印象があります。ターニングポイントは何だと思いますか?

 正直、自分がブレイクしたみたいなのは全くなくて、割とコツコツやったから増えてきたのかなという感覚でした。運良く色んな撮影現場で、現役でバリバリ活躍してるフォトグラファーやスタイリストに出会って、また別の撮影に少しずつ呼んでもらえるようになったのが大きいかもしれないですね。

⎯⎯個人的に、フォトグラファーの鈴木親さんとのタッグで制作された雑誌やキャンペーンヴィジュアルなどが印象に残っています。

 親さんには仕事の面でも、感性も、世界を広げてもらったなと思います。僕がいうのもおこがましいですけど、自分の名前が載っていなくても、国内外から見て「あの人の作品だ」って分かる。自分の色を持っている人の作品はかっこいいですよね。

Lucick創刊号カバーの小松菜奈(ヘアを担当)

Image by: THOUSAND

⎯⎯ツバサさんのヘアからも、「生身の人間が持つ湿度」のような、“らしさ”を感じます。

 そういうのが、伝わっていると嬉しいです。でも、具体的に何かと聞かれたら答えにくいんですけど(笑)。正直ヘアもメイクもスタイリストも、上手な人はめちゃくちゃいると思うんですよ。僕自身は単純にファッションが好きだから、撮影のゴールは自分が納得するかっこいいものにしたいという気持ちだけですね。髪の毛は結局トータルバランスの一部なので、ヘアだけ爪痕を残したいってガツガツしても、全体が崩れたら意味無いかなって。

⎯⎯全体のバランスが大事?

 逆も然りで、どんなに首から上がかっこよくても、ファッションがダサかったら決まらないじゃないですか。だから、全体のファッション感が完成することを前提にしながら、リアルな中に少し違和感や「ツイスト」を取り入れる、というのをヘアの観点で目指しますね。

⎯⎯今後も、撮影とサロンワークは並行して続けていきたいですか?

 スチール(静止画)撮影の場合は一定の角度から切り取るから、極端な話、見えない裏側がどうなっていても成立するんです。でもサロンでお客さんを担当するとなったら、360度完成させないといけない。結構真逆の仕事だと思っていて、僕はどちらも好きだから、バランス良くやっていきたいんですよね。その自由度のためにリンカーネーションを作ったので、これからも両方やり続けると思います。

「流行っているからダサい」はない 自己流“イケてる”の探し方

⎯⎯サロンには、ツバサさんが作るスタイルやセンスに憧れて来るお客さんも多いと思います。情報過多の現代で、どうやって自分が「イケてる」と思うものをキャッチしていますか?

 僕は結構ミーハーなので、InstagramもTikTokも見るし、流れてくるものをあえてシャットダウンはしないんです。街を見ても空気感ってどんどん変わるんで、そういう変化はいつも感覚的に取り入れているかな。自然と入ってくるものを自分でかっこいいかどうか判断して、好きだと思ったら、もっと調べたり見たりします。流行ってるからダサい、アンダーグラウンドだから良いっていうのは無いですね。

⎯⎯抽象的ですが、ツバサさんにとっての「イケてる」とは?

 急に難しいですね(笑)。僕にとっては、根本的にその人に似合ってるかどうかが、ひとつのラインだと思います。ヤンキーも、ギャルも、ギークな感じの子も、そのスタイルが本人に似合っていればかっこいい。どんなカルチャーであっても、その人らしく楽しんでいれば、イケてるんじゃないですかね。

⎯⎯これからクリエイターを目指す若い世代にメッセージを送るとしたら。

 僕が参考になるかは分からないんですけど、よく「どうやってフォロワーが増えたんですか?」とか「芸能人のヘアを担当するには?」って聞かれるんですけど、人生で一度も意識したことがないんです。誰かと繋がるとか、フォロワー増やすための計画とか。一つひとつの現場で、色んなクリエイターの方に出会えて本当にラッキーだったなって思います。

⎯⎯(笑)。では何が今に繋がったと思いますか?

 そういう質問で何をしたかなって、唯一返せるとしたら「努力したから」しかないですね。独立する前のお店でも、売れるための努力はすごく必要でしたし、現場でもその都度、自分が持っているものを最大限に使ってやり切るしかない。あとは、誠実でいること。媚を売って規模が大きい現場は増えるかもしれないけど、その仕事は本当に自分に必要なのかなって。結果論ですけど、誠実に向き合ってきたら、結果としてイケてる仕事や人と出合えたのかなと。努力と運。つまらないかもしれないですけど、それだけだと思います。


最終更新日:

FASHIONSNAP 編集記者

平原麻菜実

Manami Hirahara

埼玉県出身。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程卒業後、レコオーランドに入社。国内若手ブランド、国内メーカー、百貨店などの担当を経て、2020年にビューティチームの立ち上げに携わる。ポッドキャストやシューティング、海外コスメレビュー、フレグランス、トップ取材など幅広い観点でファッションとビューティの親和性を探る企画を進行。2025年9月より再びファッションチームに所属。映画、お笑い、ドラマ、K-POP......エンタメ中毒で万年寝不足気味。ラジオはANN派。

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