エドワード・クラッチリー(Edward Crutchley)

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【密着】ウールマーク賞グランプリ「エドワード クラッチリー」、受賞の鍵となったテキスタイルへのこだわりを探る

エドワード・クラッチリー(Edward Crutchley)

 若手デザイナーの登竜門「インターナショナル・ウールマーク・プライズ」。次世代の才能を発掘する世界有数のグローバルデザインアワードの一つで、今年メンズ部門とイノベーション部門の両賞を獲得したのが「エドワード クラッチリー(Edward Crutchley)」だ。コンテストで発表したコレクションには100%メリノウールのみを用いた特注の生地が使用されており、その大部分は日本で製作した。受賞の鍵となった生地はどのように生み出されたのか?エドワード・クラッチリー本人と共に京都を訪問し、クリエイションの源泉を探った。

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エドワード・クラッチリー
イギリス出身。ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins)卒業後、テキスタイルの専門家として「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズラインをはじめ、カニエ・ウェスト(Kanye West)、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)などへのコンサルティングを経験。2015年に自身のブランド「エドワード クラッチリー」をスタートし、過去2シーズンはロンドンファッションウィークでショーを開催している。

「自分自身のルーツを元にデザインを行うのは非常に限定的。自分の過去を遡るのではなく、様々な国に目を向けていきたい」

 日本だけでなく世界各国のテキスタイルや視覚的モチーフを組み合わせた服作りに定評があるエドワード。今回のコレクションではバイカージャケットと18世紀のフロックコート、タイダイのアメリカンカレッジセーターと京都の絞り染めなど、異なる要素を融合した。普段は常に商業的な視点を持ってデザインに取り組むが、ウールマーク・プライズでは純粋に作りたかったものを作ったという。100%ウールでコレクションを作り上げることは賞のエントリー条件ではないにも関わらず、ウールを多様な方法で進化させ、ウールのみで様々な表情を生み出したことがメンズ部門とイノベーション部門のダブル受賞に繋がった。

 「日本に来るのは確か17回目」というが、毎回の目的はテキスタイルの視察だと話す。京都に到着後、まず最初に向かったのは「久山染工」。この日エドワードが着ていたシャツのテキスタイルを製作した染工場だ。

工場内には使用後のスクリーンが大量に積み上げられている

 日本古来の型友禅から進化を遂げたハンドスクリーンプリントを中心にする久山染工は、通常のスクリーンでは難しい特殊加工を得意とする。受賞コレクションでは、タンパク質を溶かす成分を使うことで生地に穴を作り、金色で縁取られたレースのような模様のテキスタイルを作り上げた。

 久山染工のアーカイブ生地を見せてもらう中で気になったものを手に取りつつ、スクリーンプリントの順番や、加工方法をエドワードは次々と言い当てた。その知識の豊富さに、エドワードと共に日本でテキスタイル開発を行う担当者は「テキスタイルの知識において、彼に並ぶデザイナーは国内外でもほとんどいない」と絶賛する。

 次に訪れたのは絞り染めの工場。エドワードはコレクションの中でイタリアのゼニア・バルファ(Zegna Baruffa)社製ニットに嵐絞りという技法を採用。棒に布を巻いた上から縄を巻きつけて染めることで、雨のような斜めの絞り模様を生み出す技法だが、京都の絞り組合として織物ではなくニットにこの技法を用いたのは初めてだったという。

絞り染めの工場

「10年後、15年後にこういった技術や工場が残っているのか、という問題は強く意識している。ただ、日本の文化に対して口出しをするつもりはなく、外国人である僕が"最も美しいものを作りたい"という理由で伝統的なテキスタイルを使うことに意味があると考えている」

 この日エドワードが着用していたシャツの価格は10万円以上。「エドワード クラッチリー」のアイテムは安価とは言いがたいが、その理由は全てのサプライチェーンに配慮した価格設定を行っているためだ。「今の時代に服を作るということは、どれだけの思いやりを持って、なぜその服を作っているのか語れる必要がある」と、トレーサビリティや倫理性にこだわる理由について説明している。

 ウールマーク・プライズの受賞は大きな自信にもつながった一方で、注目されたことで一層気を引き締めていきたいというエドワード。旅の終わりに「メゾンのディレクターとして働いてみたい」と今後の展望についても語ってくれた。

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