YOHJI YAMAMOTO HOMME 2021年春夏コレクション動画より
YOHJI YAMAMOTO HOMME 2021年春夏コレクション動画より

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目玉を散りばめた「ヨウジヤマモト」――ダークとユーモアが共存したデジタルショー

YOHJI YAMAMOTO HOMME 2021年春夏コレクション動画より
YOHJI YAMAMOTO HOMME 2021年春夏コレクション動画より

 ベテラン勢の不参加が目立つパリ・デジタル・ファッションウィークだが、ヨウジヤマモトは当たり前のことのように参戦した。新しいことに果敢に挑戦する巨匠に敬意を表すともに、様々な"目玉"が散りばめられた映像とコレクションは、いつも以上にメッセージ性の強いものだった。

(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎

 通常のファッションショーは誰もが見られるものではない。パリメンズのヨウジヤマモトのショーはいつも、立ち見を入れて250〜300人ほどだろうか。今回のパリ・デジタル・ファッションウィークは、一部のプロ向けのコンテンツを除いて、ほとんどのコンテンツを一般に開放している。なのに、再生回数が伸びない。見られる場がいくつかに分散していることも理由に挙げられるが、YouTubeのリアルタイムの再生回数が2桁のブランドも散見する。分かってはいたけれど、ファッションの一次情報に興味のある人は世界的に見ても少ないという事実に暗澹たる思いを抱きつつ、ヨウジのYouTubeのリンクをクリックしたら、これまで見た中では圧倒的な人数がいた。700人超という人数が少ないか多いかは議論が分かれるところだが、それでも今回のファッションウィークで初めてデジタルショーを"共有"している感覚が味わえた。

動画では、ルックごとにアイテムの品番やテキスタイルの組成などのテキストも表示されていた。

 黒のザラッとした質感の映像は、リアルのショーの延長線上にあるものだ。ディレクションと撮影を手掛けたのはフォトグラファーのTAKAYで、動画と静止画を巧みに組み合わせている。リアルタイムのチャットでは見にくいという声もあったが、このフィルムは世界観を感じるためのもの。細かいディテールは画像で確認すればいいのだから、見える見えないを気にするのは野暮な気がする。

目玉がデザインされたボタン

 いつもと大きく変わらない世界観の中で、もっとも話題を集めそうなのが"目玉"のモチーフ。ミリタリーの出自を色濃く感じさせる12ボタンのトレンチコートや真紅のスタンドカラーコートは、ボタンが全てアーモンド型のリアリティある目玉になっている。目玉を重ねたネックレスや、大きな目玉をプリントしたコートやスニーカーもある。怪談的な怖さもあるが、今は様々なことに目を瞑ってしまえばいとも簡単に飲まれてしまう時代。「目をかっぴらいて万事に対処せよ」ということなのだろう。

 ダークなモチーフの一方で、言葉による"ユーモア"の要素も充実している。とくに目立つのが、運送関連を連想させる言霊。「配達完了」「取扱注意」「ナマモノ」といった文字が、ノワールの世界観に彩りと微笑みを加えている。「たんが絡んだ」「転倒」「呼吸困難」などの言葉が刺繍されたコートは、さながら"老人特攻服" といった風情。旧車會のイベントに着ていったらヒーローになれそうだ。

ヨウジヤマモトとアディダス は、これまでもスニーカーやカプセルコレクションで協業してきたが、新たなコラボアイテムだろうか?

 アイテムで目立つのは、ボタンの開閉で表情を変えられるジャケットやパンツ。ジャケットは肩の部分のボタンを外すと内側のインナーが露出し、違った顔を楽しめる。デニムのエプロンや掠れたペイントのリネンジャケットは、運送関連のメッセージとの連動を感じさせるアイテム。後半に登場したアディダスのTシャツは意味深で、様々な憶測を呼びそうだ。

東出昌大(動画より)

 最後に俳優の東出昌大をモデルとして起用したことについて。かつてヨウジヤマモトのパリコレを歩いた経験もあるので突飛な印象はないが、(自業自得とはいえ)窮地に立たされている彼を起用したことに、ヨウジさんの人間としての懐の広さと優しさを感じずにはいられなかった。あらためてルックを見返すと、「女性に顎を掴まれてナイフで刺されそうになっているヨウジさん(笑)」をプリントしたTシャツとヘンリーネックシャツを除けば、今シーズンは女性のモチーフが少ない。敗者には復活する権利があるし、女性は優しくておっかないよ......そんなヨウジさんの思いを東出くんが代弁しているような気がしたのである。

文・増田海治郎
雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。自他ともに認める"デフィレ中毒"で、年間のファッションショーの取材本数は約250本。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。>>増田海治郎の記事一覧

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