ヴェトモンのデザイナーが「飽きちゃった」発言に込めた"ショーを行わない"という選択肢

2017年秋冬コレクション
2017年秋冬コレクション
画像: VETEMENTS

 「I got bored.(飽きちゃったんだよ)」。この5年間で急成長を遂げ、最も注目されるブランドの一つとなった「ヴェトモン(VETEMENTS)」のクリエーティブディレクター デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)が米VOGUEのインタビュー内で発した一言だ。インタビューでブランドは今後、従来のシステムの中でショーを開催しないことを発表。アーバンラグジュアリーという新たなカテゴリーを牽引するこのデムナの発言にはどういった意味が込められているのか。

 「DHL」Tシャツや"袖コンシャス"に代表されるビッグシルエットのトレンドを生み出すなど常に話題に事欠かず、カルト的な人気を誇るブランドに成長した「ヴェトモン」。先シーズンのコレクション発表後、パリにあったスタジオをスイスのチューリッヒに移転し、デムナをはじめ、実弟でブランドのCEOを務めるグラム・ヴァザリア(Gram Gvasalia)とデザインチーム共々、これまでの生活の拠点であったパリを離れた。デムナ自身「おそらくヨーロッパで一番退屈な場所」というスイスでの生活は、ここ数年休みなく駆け抜けてきたブランド、ひいてはファッションシステム全体を見つめ直す契機になったのだろうか。

 インタビューでデムナは「今後既存のシステムではショーを開催しない。飽きてしまったんだよ。新しいチャプターへの一歩を踏みだす必要があると思う。ファッションショーがベストなツールだとは考えていない。シーズンを前倒ししたり、メンズとウィメンズを統合したり。同じことの繰り返しでとても疲れるよね」と話す。ここ数年で「see now buy now」の導入やメンズ・ウィメンズのショーの統合など、従来のファッションスケジュールは変革期を迎えている。ショー開催におけるデザイナーやエディターの負担軽減のための再編でもあるが、デムナはその動きにすら辟易しているようで、そもそもの悩みの種である「ショー」を行わない、という選択肢を提示したことになる。今後一切のショー開催を見送るかは不明だが、「然るべき時が来たら」"サプライズ"となるような計画を実行に移すという。

 ショー開催の見送りを決めた背景には他にもあるようで「昨シーズン、ショーをバルコニーから初めて見ることができたんだ。オーディエンスはみなスクリーン越しに撮影するばかりで、服は8割がたは見られてなく、理解されていないと感じた」と苦言を呈し、「(ショーには)莫大な費用がかかっている。(昨シーズンのショーは)会場代を含め10万ユーロ(約1,250万円)ほどだっただろうか。世界では巨額のコストを叩いてショーを行っているブランドがたくさんあるけど、それは完全に無駄だと思うよ」とショー開催にかかる経費を明かし、見る側の「服」への関心とともに、ショーの開催意義が薄れてしまっていることを危惧している。

 ブランド名の「ヴェトモン」はフランス語で「服」を意味する。ブランドは今後もコレクションの発表を継続していくが、ショーという発表形式に捉われず、「服」に重きを置いた発表の仕方にシフトするという。ブランドの規模や客層によってショーの役割は異なるものの、本来のブランドコンセプトに立ち返ることとなったヴェトモンの「ショーを行わない」という選択はコレクションウィークの再編を更に進めることになるのか、今後ブランドのみならずファッション業界の反応にも注目だ。