JWアンダーソン 2024年秋冬ウィメンズコレクション
IMAGE by: JW Anderson
「JW アンダーソン(JW Anderson)」が2月18日、ロンドン・ファッションウィークで2024年秋冬ウィメンズコレクションを発表した。今回のランウェイは、過去2シーズンに使用されたコンサート会場「ラウンドハウス」という"エンターテイメントの場"から一転し、会場は公共の体育館という"市井の場"に移された。デザイナーのジョナサン・アンダーソンが関心を寄せたのは、「グロテスク(奇妙さ)と実用性」だ。隣人の生活を覗き見たときに感じるような共感と非共感、ひいては日常生活に潜む物事の感じ方や捉え方のズレへの興味が、制作アイデアに散りばめられている。
Video by JW Anderson
グロテスクなニットと実用的なニット
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体育館いっぱいに、イギリスのシンガーソングライターLabi Siffreによる曲「Bless the Telephone」が響き渡ると、グロテスクというコンセプトを反映させた、黄色の"ニットで編んだようなニットウエア"でショーはスタートした。続いて2体連続で登場したのは、おばあちゃんのワードローブの底から引っ張り出してきたような、実用的なポインテールニットのトップスとブルマー。このプレーンで変哲のないルックは計4体も繰り出されたが、これらをランウェイルックとしてコンセプチュアルに成立させることができるのは、ジョナサン・アンダーソン以外にはいないだろう。
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ありふれたものを変貌させる
カーテンを思わせるドレープやタッセル、ハウスパーティーから飛び出してきたような吹き流しのロゼットをあしらったスカートにも、日常に潜むグロテスクは落とし込まれる。このグロテスクというコンセプトは、多かれ少なかれ、近年の「JW アンダーソン」と、ジョナサンがクリエイティブディレクターを務める「ロエベ(LOEWE)」で通底してきたものでもある。モダンでカジュアルな "ありふれたもの "というモチーフはそのままに、素材や形、誇張によって、ちょっと奇妙なものへと変貌を遂げてきた。
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今回は「実用性」というキーワードも加わり、両者の奇妙な相乗効果がコレクションに満たされている。スウェットシャツのディテールが配された構築的なコクーンドレスや、袖を大きく折り返した超オーバーサイズのコートはその一例だ。
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「現実的なコレクションを作りたい」
2024年秋冬メンズの映画『ワイズ・シャット・アウト』のような直接的なアート/映画の引用もなければ、2024年春夏ウィメンズのプラスティン(模型用粘土)のような突飛なアイデアもなく、2023年秋冬ウィメンズでダンサー・振付師のマイケル・クラークと見せたようなコラボレーションもない。「とにかく、現実的なコレクションを作りたかった」とジョナサンが語るように、ここ最近のJW アンダーソンが毎シーズン繰り出してきたセンセーショナルは、一旦その影を潜めた。
その一方で、ショーピースに頼りすぎることなく、ウェアラブルな服を作るデザイナーの力量を再確認させるコレクションになったともいえる(イメージングと戦略に長けているのはすでに明白だ)。そして今回のトーンダウンという決断は、彼の次のアイディアへの布石と見ることもできるだろう。このコレクションのどこかにヒントが隠されているのだろうか?
その答え合わせは、次シーズンまで持ち越しだ。
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