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JW アンダーソン 2024年春夏コレクション

粘土で服作り シルエットの探求から見出すシンプリシティ 「JW アンダーソン」2024年春夏ウィメンズ

JW アンダーソン 2024年春夏コレクション

JW アンダーソン 2024年春夏コレクション

Image by: JW Anderson

 9月16日、「JW アンダーソン(JW Anderson)」による2024年春夏シーズンのウィメンズ・ランウェイショーが、ロンドン北部にあるライブ/イベント施設「Roundhouse」で開催された。円形の会場にはうねるようにゲストのための席が並べられ、今最もイギリスで注目を浴びているエレクトロミュージシャン、フレッド・アゲインによる楽曲「Danielle(smile on my face)」の軽快なビートが鳴り響くと、子どもが粘土を捏ね上げて作った(ような)フーディとショーツをまとったモデルが飛び出してきた。

「シンプルに作るということ」

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 「今回はシルエットにフォーカス。今一度"レデイ・トゥ・ウエア(既製服)"の概念に立ち戻り、そこからどう脱却できるかを考えた」とバックステージで語ったデザイナーのジョナサン・アンダーソン。前回の2023年秋冬ショーは自身のアーカイブを再編集するという回顧的要素を含むテーマだったこともあり、そこからブランドとして次の一歩に進む新たなアプローチを模索し、その一つがモデリング粘土を使用することだった。

 乾いて固まることのないモデリング粘土は、常に進行中であることのメタファーであり、見た目の頑丈さとは裏腹に簡単に形を変えてしまう様は、ある種のナイービティを匂わせる。ジョナサンは「リアリズムというよりも、アーティスティックな方法でテクノロジーをどのように使うことができるかを模索するのが好き」とも話し、モデリング用粘土を手に取って3Dレンダリングを駆使しながら、人が着られるサイズに作り上げたそうだ(実際の服も同じ粘土でできている)。

 その後に登場した、カラフルなビニール袋から顔を出しているかのようなルックは、オーストラリア出身のアーティスト、アーウィン・ワーム(Erwin Wurm)の作品を思い起こさせながら、コレクションから滲む超現実性に拍車をかける。大きなバルーンシルエットを描く袖なしのフライトジャケットやパンツの裾からはフェザーが飛び出し、透けるほどに薄い生地を使用したフーディには、ラメ生地がカオティックに張り巡らされたスカートが合わせられた。

 一方、構築的シルエットとは対照的に柔らかなドレープを描くドレスや、フード付きバイカージャケット(ジョナサン曰く「JWアンダーソン」のアイデンティの一つである"怒り"の表現)なども挿入され、コレクションに通ずる一つのトーンの中で、豊かなデザインアイデアを提示することに成功している。そのほか、クロシェ編みのミニ丈ワンピース、テーラードジャケット、トレンチコートなど、シンプルにデザインされたアイテムをシンプルにスタイリングしたルックも、他に劣らない強い印象をもたらした。

 そして、ブランドが得意とするバッグやシューズも抜かりはなく、引き続き人気を呼びそうだ。

 今回のデザイン手法について、「モダンやミニマリズムではない。シンプルに作るということ」と話すジョナサン。そしてそのシンプリシティの上には、巧妙なカラーパレットや童心的なプレイフルネスが足されていく。現代アートとファッション、エモーションを軽やかに交差させ、心地よいバランスをとりながら、「JW アンダーソン」のクリエイティビティは奥行きを深めている。

JW ANDERSON 2024年春夏

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JW ANDERSON ウィメンズ 2024年春夏コレクション

2024 SPRING SUMMERファッションショー

"ロンドンを歩く"アート展も開催

 ジョナサン・アンダーソンがキュレーションを手がけた展示「On Foot」が、ロンドン中心部にあるギャラリー「オファー・ウォーターマン(OFFER WATERMAN)」で開催されている。会期は10月28日まで。ジョナサンが最もインスピレーションを受けてきた街、ロンドンを歩くというコンセプトのもと、都市の特徴にちなんで「THE STREET」「THE CROWD」「THE PLAYGROUND」「THE FLOWERBED」「THE BUP」という5つテーマを抽出。それぞれのテーマに合わせ、イギリス出身の作家を中心とした絵画や陶器、そして過去の「JWアンダーソン」や「ロエベ(LOEWE)」のコレクションで登場したアイコニックなピースがピックアップされた。

 現代作家と過去のマエストロの作品を並べることで生まれる “対話”は、今展覧会の狙いの一つだ。イラストレーターのポル・アングラダ(Pol Anglada)や 陶芸家のマグダレン・オドゥンド(Magdalene Odunbo)といったジョナサンがコラボレーションしてきたアーティストから、デイヴィッド・ホックニー(David Hockney)やフランク・アウアーバック(Frank Auerbach)といった巨匠まで、幅広い作品が展示される。

 2022年秋冬シーズンに登場し話題をさらった鳩のクラッチバッグは、ルシアン・フロイド(Lucian Freud)による鳩を描いた作品の横に飾られた。またいくつかのバッグには、アンセア・ハミルトン(Anthea Hamilton)による特別なペインティングが施されていた。

■On Foot 開催概要
場所:OFFER WATERMAN 17 St George Street, London, W1S 1FJ, United Kingdom
時間:10:00 – 18:00(土曜は17:00まで 日月定休)

エディター / ライター / プロデューサー

上岡 巧

KO UEOKA

1993年生まれ、東京出身。早稲田大学社会科学部卒業。メンズファッション誌『Them magazine』編集部を経て、2022年に独立。ロンドン生活の後、現在はパリに拠点を移し、フリーランスとして活動する。

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