Lifestyle インタビュー・対談

【インタビュー】セレクトショップ「1LDK」がなぜ今、パリに出るのか?

■利益以外の価値がある

―しかし、出店すると決まってからまだ半年。このスピード感が今っぽいですよね。

福澤:そうですね。昔だったらここに至るまでに何回行き来しなければならなかったのかと想像してしまいます。今は、PDFでサインを送れば、あとはメールでOKの時代なんです。

関:うちは損益分岐点さえクリアできれば、あとは出店に関する障害はありません。通常のアパレルビジネスなら、「このエリアに出店してこれぐらい売って」って計画しますよね。でもうちは、物件を見つけたらここで何ができるだろうってまず考えます。売り上げはもちろん大切ですが、「パリに出すことによって得られるメリットって何だろう?」って考えるのが大事です。パリに拠点をおけば、合同展を回っているだけじゃ絶対見つからないブランドと出会える可能性が出てくるだろうし、フランスでモノ作りできる可能性も見えてきます。埋もれている情報が見つかることを大きく期待しています。

1ldk-hotel-20141030_018.jpg関隼平

福澤:だから損益分岐点を下回ることがあっても、すぐに撤退することは絶対にありません。マイナス分を吸収できるメリットが十分にあると思うので。フランスの契約は長期で、更新年は3年、6年、9年。基本的に延長はできますし、家賃も国の指針に沿わない値上げはできません。だから長く腰を据えてやりたいと思います。

関:さきほどパリジャンに売りたいと言いましたが、観光客、日本人バイヤー、アジア人バイヤーの売り上げも見込んでいます。ショップの通りは誰も歩いていませんが、いずれは世界中のファッション業界人がパリに来たら必ず寄るお店にしていきたいなと思っています。1月下旬のパリ・メンズ・コレクション期間中にも何かやりたいと思っています。

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―利益以外のところに価値を見出すというのは新鮮です。

福澤:2014年9月にオープンした「1LDK 青山ホテル」の1階には、ほとんどモノを置いていません。最近は内装の素材とかは同じような店が増えてきているので、この店は「いかに豊かな無駄を提供できるか」がテーマでした。大手セレクトショップのバイヤーさんもよく視察にいらっしゃいますが、みなさん不思議がっていますね。僕はべらぼうな売り上げを求めていないんですよ。

1ldk-hotel-20141030_062.jpg1LDK 青山ホテルの1階フロア

 お店を出す時には、損益分岐を弾いて「これでいける?」って関に聞きます。で、損益分岐でペイするなら問題ない。それだと無理な仕入れにもならないし、シーズン終盤にはモノが足りなくなります。予算も前年比と比べることはしなくて、お店のキャパのマックスのイメージがあります。今はたまたま超えていますが、前年比を大幅に越えた無理な予算組みはしません。

■売上だけでは店をダメにする

―通常、アパレルの経営者は既存店売上高を一番気にしますよね?

福澤:私はそれがお店をダメにすると思っています。

関:「売れたらおかわり」は誰もがやりたがるけど、それをしてこなかったから今があるんですね。お店を経営する上で、何に困るかというと「在庫」なんですよ。それで残った在庫を処理するために、受け皿としてアウトレットを出店する。で、ブランドイメージを壊すという流れです。売れるだけ仕入れて、それを売り切ってシーズンきれいに終われればそれでいいんです。そんな当たり前の商売をやっているだけなんですよ。

 青山ホテルは1階と2階で73坪ありますが、2階の36坪で損益分岐点をつぶせることが分かったので、1階は自由にしようよって話です。73坪をフルに使って2倍儲けようってことにはならないんですね。

1ldk-hotel-20141030_031.jpg1LDK 青山ホテル店内

福澤:このお店が久しぶりに「いいなぁ」と思うのは、ちょっとした緊張感があるところです。今は緊張して入る店って少ないですよね。あれっ?入っていいのかなって。夜の飲み屋でも、たまに緊張感のある店がありますよね。それで緊張を解き放たれた時に結構お金使っていたり(笑)。上から目線の嫌な緊張感じゃなくて、「えっ!?」みたいな驚きの緊張感が大事なんですよ。

―あくまで個人的な見解なのですが、「1LDK」の世界観って「足るを知る者は富む」というか、煩悩をコントロールできているかんじがするんですね。この感じって東京だけの価値観ではなくて、全世界的な流れな気がします。お二人は欲望をどのようにコントロールしているのですか?

福澤:欲を意識的に抑えるということはないです。でも、数百万円の時計も興味ないし、何千万円もするようなクルマもカッコいいと思いません。欲しいものは買いますが、それを長く使うのが理想的ですね。クルマもジープのコマンダーに7〜8年乗っています。

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関:僕は一般的な欲望は強いほうかもしれません。何事も体験したいというのが強いんです。10万円の靴を売るのに自分で買う大変さとかを知らないと提案できないじゃないですか。「JMウエストンの靴やロレックスの時計は、なんでみんないいっていうの?」っていうのを自分の体験から説明できるようになりたいんです。いざ自分で買おうとすると、そのことについてめちゃくちゃ勉強しますし、その繰り返しで知識が深まります。無駄なものは一切買いませんが、わりと昔のアパレルっぽい人間なのかもしれませんね。

―パリでも、このなんとも言葉で説明しにくい「東京っぽさ」が受け入れられることを期待しています。

福澤:ありがとうございます。パリでそのままの東京を提案し、それが伝わることを願っています。

関:自分は運営の責任があるので、ちょっとドキドキしていますが、とにかく海外だからパリだからといってこれまでの軸をぶらさずにやっていきたいですね。

(取材・文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎)

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■1LDK PARIS
 住所:16 rue de La Sourdière Paris 75001 France
 TEL:+33.1.42.36.44.82
 公式サイト
 パリ店 Blog
 パリ店 Instagram

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