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ゾゾタウン「送料完全無料化・ポイント10%還元」の切り札、吉か凶か

通販新聞

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 スタートトゥデイは、11月1日から運営するファッション通販モール「ゾゾタウン」で全商品を送料無料にするとともに、ポイントの還元率を1%から10%に引き上げた。増収増益という通期計画の達成に向けて思い切った手を打った同社。どちらの施策もコスト負担が大きく諸刃の剣となり得るだけに、もくろみ通り売り上げを押し上げる効果が出るのか、業界内外から注目されそうだ。

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 「ネット上はもちろん、リアル店舗と比べても圧倒的にお得なゾゾタウンを目指す」。ゾゾの前澤友作社長は第2四半期の決算説明会の場で、こう切り出した。

 これまで1万円以下の買い物をする際に消費者が負担していた送料をすべて無料に、また商品代金の1%だったポイント還元率を一気に10%に引き上げるという切り札を出してみせた。

 というのも、ゾゾの業績は依然として底堅く、成長を続けているものの、2012年3月期では売上高、営業利益とも期初計画にわずかに届かず、今中間期は商品単価の下落やプロモーションの多様化などから減益となるなど、"強いゾゾ"の姿が薄れつつあった。

 この局面を打開し、通期で増収増益という期初計画を達成するために打ち出したのが今回の施策で、"お得感"を前面に出すことで既存会員約500万人の購入頻度を高めるほか、新規客の獲得にもつなげる。

 同社は今回の施策を始めるのに当たり、事前にアンケート調査を実施。ゾゾの利用者に限らずファッション好きの20歳~40歳の男女1000人を対象に「欲しいファッションアイテムが1円でも安ければネットで購入するか」を聞いたところ、72%が「はい」と回答したという。

 また、同時にゾゾの利用者4396人にメルマガを通じて行ったアンケートでは、「ポイント還元率が3~5%になり、配送料が完全無料になった場合、ゾゾの利用金額はどのくらい増えそうか」という質問に対して、回答者の年間平均購入額は現在の6万9600円に比べて69・5%増の11万8000円になるという結果を得た。

 ゾゾでは「安さを求める72%の消費者を無視できない」(前澤社長)として、送料無料化とポイント10%還元を決断。ファッション商材のEC化率アップと、ゾゾユーザーの利用頻度向上につなげる。

 両施策は無期限での実施が前提だが、ポイント還元率についてはアパレル業界全体に影響を与えることが予想されるため、「状況を見極めて判断する」(前澤社長)としている。

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宣伝費を原資に

 同社では、送料無料とポイント還元率アップを実施する原資を確保するため、これまでタレントを起用して派手に放映してきたテレビCMをやめるなど、広告宣伝費をギリギリまで抑えてコスト増に対処する。

 送料無料化については、2009年4月から1年間のキャンペーンを実施した経験から、出荷単価が下落する一方、新規客の獲得や休眠客の掘り起こしにつながるといった受注データの変化を蓄積しており、来年10月に稼働を始める新物流センターも含めて出荷量の拡大に対応する。

 ポイントの10%還元はプロパー(正価)商品に限定しており、商品点数、売り上げ規模ともに全体の7割弱を占めているという。

 セール品やアウトレット商材、一部の高額ブランドなどに加え、11月12日から取り扱いを始めるブランド古着のポイント還元率はこれまで通り1%に据え置くが、将来的にはゼロとしたい考えで、正価販売比率の向上にもつなげる。


上期施策が不発

 今上期のゾゾは、新客の開拓や正価販売比率の改善を図るべく、新たな取り組みを矢継ぎ早に実施したものの売り上げへのインパクトは乏しく、結果的に宣伝費を含めたコストアップが利益を圧迫した。

 新しい客層の取り込みでは、4月から初の提供番組「美少女ヌードル」を平日の深夜にテレビ朝日で5分間放映したが、視聴者のサイト誘導には至らずに下期の展開を見送った。

 正価販売比率の向上策では、予約販売専用の月刊誌「ゾゾカタログ」を5月に創刊した。50万部を無料配布したものの、「ビックリするくらい効果がなかった」(前澤社長)ため8月号で休止。ウェブ上の取り組みを誌面展開したことで1カ月に1回しか受注会を開催できず、機動力に欠けたことが影響した。

 9月には同社として初のリアルイベントとなる顧客向けの予約販売会「ゾゾコレ」を千葉・幕張メッセで開催した。2日間で1万人が来場し、受注総額は1億5000万円で約5000人が商品を予約(平均客単価3万円)。ブランドとの関係性強化や従業員のモチベーション向上などの効果があったものの、期待していたほどの売り上げにはつながらなかった。

 こうしたゾゾらしい施策が業績の面では不発に終わったことで、当該期間中の商品購入者数が予想を下回り、ゾゾの販売総額(EC支援事業も含む)を示す商品取扱高は前年同期比22・0%増の408億円と成長を維持したものの、期初計画にはとどかなかった。

 すでに、テレビCMなどを核とした露出強化策では会員1人当たりの獲得効率が低下しており、一定の規模に達した会員数をどう押し上げるかという課題とともに、商品単価下落などの影響を受けている既存アクティブ会員の成長率(年間購入金額)の鈍化を早期に食いとめる必要に迫られている。

 一方で、商品取扱高1000億円という大きな壁を前に、これまでの"ファッション好き"の消費者から客層を広げるためにも、今回の送料無料化とポイント還元率アップは欠かせなかったのかもしれない。


送料無料は潮流

 今回、ゾゾが切った2つのカードについて、競合のファッション通販モールや取引先ブランドの意見は賛否が分かれている(図表を参照)。

 モール側では、「力比べには乗らずに、独自路線で自社のサービス向上に努めるのが優先」とする声がある一方、「ゾゾの施策に追随する企業が出てくるのでは」とし、より条件の良い売り場に顧客が流れるのを阻止したい思いもチラつく。

 取引先ブランドからは、ファッション業界全体に与える影響を気にしながらも、「ネット売り上げの拡大につながる施策として期待している」との声や、「アマゾンの存在もあって送料無料の流れは避けられない」などの意見が出ている。

 一方、「お得感を前面に出したことで売り場のイメージが変わらないか心配」との意見があるほか、2つの施策に伴う大幅なコストアップが契約条件に影響しないかを懸念する声もある。

 ただ、今回の施策によってゾゾの集客力が一段と高まるのは必至で、ブランド側ではゾゾ向けの展開商品を拡充したり、店頭にもネットにも振り分けられるフリー在庫をゾゾに集中させる動きも出始めているようだ。

 施策別に見ると、送料無料化はブランド側でも実質的にサービス化している企業があるほか、物流に強いアマゾンの戦略や、出店者への送料課金に踏み切った楽天の取り組みも含め、ファッションECでも送料無料がスタンダードになるという見方は少なくない。

 ポイントの10%還元については実店舗のショールーム化などを危惧する声が多いのも確かで、急速なEC化を歓迎しないブランドの信頼を損なうことになると、ゾゾの優位性のひとつでもある「品ぞろえ」に影響が出ることもあり得る。

 ただ、ゾゾの売り場を中心としたネット販売の成長が業績を下支えしている企業もあり、簡単には"ゾゾ離れ"できないのが実情と見られ、当面はゾゾの売り上げランキングに登場する大手セレクトショップなどが"ゾゾで買った方がお得"という状況をどこまで容認できるかが、ひとつのカギになりそう。

 「地殻変動を起こし続ける会社でありたい」(前澤社長)とする同社。今回の施策については、あくまで消費者が利用しやすいサービスを追及してのことで、「アマゾンなどの影響はない」(同)と強調する。

 実際、ゾゾは総合仮想モールに比べてファッション商材の品ぞろえや検索機能の優位性、サイトの見せ方、取引先ブランドからの信用をベースにした在庫連動の取り組みなどで大きくアドバンテージを得ている。

 今回の施策によってポイントの汎用性や価格優位性などで勝負する総合仮想モールの土俵に乗ってしまう危険性は捨てきれないが、商品取扱高1000億円の壁を乗り越えるには、将来のライバルとなり得る巨大モールの客層にも早くからアプローチする必要はありそうだ。


消費者に応える

 素早い判断力が求められるネット販売業界にあって、ゾゾはこれまで「送料無料」や「返品受け付け」に対しては消費者を過保護にしないという考えから恒常的なサービスとしては実施してこなかったが、返品についても事前のアンケートを実施して顧客の反応を得るとすぐに、11年4月から正式にサービス化して既存会員の購入回数増や返品がネックとなって取り込めなかった層の獲得につなげている。

 今年10月にウェブ上でスタートした「ゾゾタウン改善計画」ではさらに多くの声を吸い上げる取り組みを始めており、中でも送料無料化とポイント還元率のアップは「賛成ボタン」を押した顧客がそれぞれ1万人前後に達するなど、その他の意見に比べて圧倒的に利用者の関心が高かった案件でもあった。

 これまで否定していたサービスも含めて、顧客の声に応えるのと同時に、次のステップに向けた重要な取り組みであれば、切り替えが速いのもまたゾゾの一面と言えそう。

 いずれにせよ、大きな切り札を出した同社。再び"強いゾゾ"へと成長を遂げるのか、ファッション通販をけん引する存在なだけに、今後の施策も含めて同社の動向にはますます業界内外の視線が集まりそうだ。

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