Rie Miyata

【東コレ日記②】ランウェイと展示会で見つけたトレンド

宮田理江

ファッションジャーナリスト

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 台風が通り過ぎて晴れ上がった2日目とは一転、3日目はあいにくの雨。肌寒くはあるものの、雨足はそう激しくもないので、移動には差し支えなし。まずはメイン会場、渋谷ヒカリエのホールAで「ATSUSHI NAKASHIMA(アツシ ナカシマ)」のランウェイショー。コレクションテーマは「BROKEN」。もともとカッティングの美しさで定評のあるデザイナーですが、今回はスポーティーなムードを濃くしました。

ブラトップの上からブルゾン風のトップスを羽織り、ボトムスは裾ロールアップのたっぷりめパンツという、これまでとはかなり印象の異なるファーストルックにも今季の様変わりがうかがえます。その後もミニワンピース、スウェット、クロップトパンツなどが続き、ぐっとリアルクローズに接近した感じに。とりわけ、全モデルがスニーカーで登場したのは、分かりやすい変化ポイント。終盤の流麗なロングドレスも足元はスニーカー。個人的には好感の持てる新境地でした。

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続いて、青山の複合スペース「IDOL(アイドル)」に向かったのは、「YUKIKO HANAI(ユキコ ハナイ)」のランウェイショーを見るため。この会場は割と先鋭なクリエーションを見せる中堅クラスが好んで使う場所だけに、大御所ブランドの意外なチョイスに興味を覚えました。テーマに選ばれた「Butterfly Kiss」は、唇ではなく、目を使う口づけ。相手のほっぺに自分の睫毛(まつげ)を当ててまばたきをすると、蝶が羽ばたきするかのような微妙な触感を味わえるという意味でこう呼ばれるそうです。

クラブの顔も持つ場所だけあって、ショーが始まる前にはドリンクのもてなしも。コレクションもカクテルの色を思わせる装いが相次いで披露され、プールサイドやガーデンパーティーのようなムードに。透けるレースのディテールが涼やかで夏らしい。パール風のパーツがサングラスや袖口にあしらわれ、まばゆさを宿して、全体に幸福感が漂う演出に。大人っぽさは保ちつつも、やや若返ったテイストが会場に似つかわしく映りました。

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会場のIDOLから出て、表参道交差点に近いAOビルまで来ると、柱に貼られた巨大なポスターに自分の名前を発見してびっくり。実は11月1日に『Domani』誌の人気モデル、渡辺佳子さんと一緒にここでトークショーを開催する予定になっていて、その告知ポスターでした(http://www.ao-aoyama.com/events/)。まさかこんなに大きく自分の名前が掲出されているとは知らず、うれし恥ずかしで、つい写真をパチリ。ファッショントレンドを伝える者としてあらためて身が引き締まる思いでした。

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次に向かったのは、ウィメンズブランド「REKISAMI(レキサミ)」の展示会。バレリーナから転じた女性デザイナー、幾左田千佳(きさだ・ちか)氏のブランドです。20年以上のバレエキャリアを持ち、入賞歴も多かったというデザイナーは2007年にこのブランドを立ち上げました。服飾の専門教育を受けてはいないそうですが、自らバレリーナとして肉体に染み込ませてきた所作の美学は作品にしっかり写し取られています。

15ss_tokyo_miyata002_002.jpgREKISAMI

人間は服を着た状態でマネキンのように1日ずっと突っ立っているわけではありません。歩いたり、食べたり、働いたりと、様々な動作を繰り返します。衣服はそういった動きの中で見られる存在であり、装いの美しさは仕草と連動して生まれます。だから、筋肉の動きを体感的に知り尽くしているのに加え、舞台衣装を通じて衣と身体の関係性も理解している幾左田氏の経験値は、ファッションデザイナーとして理想的な資質だと言えます。

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REKISAMI

チュールやシフォン、刺繍生地、レースをクリエーションのキーマテリアルに選んでいます。舞台芸術・衣装を生かした日常着というコンセプトと聞けば、なるほどと納得がいきます。今回の展示会で見た新作でもこれらの素材が繊細な手つきであしらわれ、リリカル(詩的)なたたずまいに仕上がっていました。バレエの雰囲気は宿しつつも、テイストは甘すぎず、むしろどこかヴィンテージのようなタイムレス感を覚えます。


ファッションウイークと聞くと、華やかなランウェイを思い浮かべがちですが、実際にはランウェイショーよりも多くの展示会が開かれていて、あえてショーを開かないクリエイターも珍しくありません。展示会形式でじっくり実力を蓄えるケースも多く、次世代の担い手と出会ううえでは、展示会巡りが欠かせません。作品を間近で確かめられるうえ、デザイナー本人と話し込む機会もあり、その魅力に迫りやすいのも、ランウェイショーにはないよさ。この日も幾左田デザイナーとプレス担当者と話が合って、つい長居してしまいました。そして、気に入ったコートとワンピースを個人オーダーさせていただきました。先頃パリで開いた展示会でもヨーロッパのバイヤーに高い評価を受けたそうです。15年春夏からはハイライン「Chika Kisada」も誕生。さらなるクリエーション深化が期待されます。

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Chika Kisada


この日最後の取材は渋谷ヒカリエでの「Johan Ku(ヨハン クー) Gold label」。一瞬ですべての草花が枯れていくシーンに着想を得て、春夏では意外感の高いダークカラーに彩られた作品を披露しました。シーズンレスの傾向が世界的に強まるモード界では、「春夏=明るい色、原色、トロピカルカラー」という常識も覆されるようになってきました。2015年春夏シーズンに向けてはニューヨークでも沈んだ色調が相次いで打ち出されていて、今回の東コレでもそのうねりが感じ取れました。

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レザー仕立てのペプラム付きセットアップや、たくさんの花コサージュを盛りつけたワンピースなどがお得意の立体的シルエットを印象づけました。前後で劇的に見栄えが異なるミニワンピも提案。光の効果を最大限に生かして、3Dアート的なアレンジでボリュームの起伏を操ってみせました。色見本帳で「この色」とはっきり指差せないような、妙に不安感を誘う謎めきカラーを用いるのも、近頃のモード界のはやり。クー氏も陰りを帯びた暗色を組み合わせて、ダークファンタジーを奏でていました。

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スポーツとエレガンスの融合や、ダークカラーの春夏投入など、先にNYで見たトレンドが東コレでも着実に広がっている様子も感じ取れました。グローバルなモード界の潮流と、我が国のクリエイターの意識が同じ方向を向いているということは、東コレ参加者の提案力の高さも示しています。ただ、大きなムーブメントの先を行く挑発的、挑戦的なクリエーションにも期待したいところ。残りの期間でさらなるポジティブサプライズを楽しみにしたいと思います。


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