Toru Ogawa

【東コレ取材日記】服の中に現れる「鳥の眼」と「虫の眼」

小川徹

放送局プロデューサー

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 デザイナーの着想源は様々だが、自分の身近な生活やライフヒストリーに目を向けるデザイナーが増えている。コレクションウィーク4日目の作品の中でもそうした傾向が見られた。

 メンズの発表舞台をパリに移したクリスチャンダダのレディースのコレクション。デザイナーの森川マサノリがロンドンに留学していた時に好きだった女性に着想を得た。彼女のワードローブや部屋・好きな音楽、思い出の写真などをイメージソースとして、ロシア風のファーの帽子やスタッズのついたロックテイストのコート、そして今やダダのシグニチャーの一つとなった西陣織のコートなどが展開された優美なコレクションだった。

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>>CHRISTIAN DADA 2015−16年秋冬ウィメンズコレクション

 「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」は「コモンオブジェクト」(「ありふれたもの」の意味)をテーマに自分たちの身近な生活から着想を得たコレクションを発表した。デザイナーが暮らす家のシャワールームの曇りガラスをイメージしてデザインされたベージュのコート。ナイロンを重ね合わせることで生まれた半透明の質感が印象的だった。

 注目したのは、後半に登場したプリントのコートなどのアイテムだ。一見するとネイビーの生地の上に白い絵の具が飛び散ったように見えるが、これはデザイナーのアトリエのコンクリートの壁の写真を拡大し、反転させたもの。計算されていない模様の配置が心に残った。

 このブランドは、2014年の春夏コレクションでは、正反対の手法にチャレンジしている。ヒッチコックの映画「鳥」に着想を得たこのシーズンでは、一見鳥の群れのように見える小さな模様の施されたアイテムを発表した。鳥のように見える柄は、渋谷のスクランブル交差点を歩く人々。俯瞰で取った写真を反転させたものだという。

 鳥の眼で見た風景と今季のような虫の眼で見た風景。日常見慣れた風景をこうした手法で異化させることはアートの分野ではよく行われているが、服という日常身にまとうものにこうした手法が使われるのも楽しい。「計算されたノンシャラン(無頓着)」を心掛けたという今季のコレクションの中でも印象的なアイテムだった。

 もう一つ興味深かったのは、コートなどで、外側は柔らかく、内側は堅い生地を使っていることだ。ほかのデザイナーからも、近年、重い衣料の人気がないので、なるべく軽く見せる工夫をしていると聞いていたが、暖かさなどを失わず、あえて軽く見せるというのは、全体としてリラックスしたムードが目立った今季のコレクションを象徴するように思えた。

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 さらに妄想を膨らませれば、外は柔らかく見えるが、自己の内側はしっかり守るというのは、今の時代の気分かもしれないとも思った。

>>DRESSEDUNDRESSED 2015-16年秋冬コレクション

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