Toru Ogawa

ネオ・オートクチュールの時代がやってくる!?「ファッション進化の芽を探せ!~東コレ取材日記③~」

小川徹

放送局プロデューサー

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先シーズンより、服のコレクションを休止し、バッグなどアクセサリーの発表を行っている「ユイマナカザト(YUIMA NAKAZATO)」の展示会を取材に行った。

今回は、デザイナーの中里唯馬が、この数年、先端技術を使って開発に取り組んできたホログラム素材を使ったバッグのウィメンズが発表された。この素材は、非常に傷つきやすいため、独自の技術で、素材を何度も圧着するなどの工夫をこらして、輝きと耐久性を両立させることに成功したという。

今季のテーマは、「未知なるもの」。アイスランドで目にした風景を、地球外の惑星のように感じたことにインスパイアされた。アイスランドの水の写真を、ホログラム素材にプリントした。バッグの複雑な形は、正方形のレザーを折り紙のように折りたたんで作られ、未知の惑星の植物をイメージしたという。

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中里は、来シーズンからパリオートクチュールコレクションへの挑戦を始める。最低でも3回は、オフスケジュールでショーを行い、その後、招待枠などでの公式参加を目指すという。
そのため、従来の既製服の仕事は休止し、当面はオートクチュールシーズンでの服の受注生産と、今回のようなアクセサリーを発表の場とする。

いち早く3Dプリンターを使ってコレクションを制作するなど、テクノロジーの進化や社会の変化に敏感に反応してきた中里は、今回のオートクチュールへの挑戦の背景をこう語る。

「技術の進化で、これまでのマスに向けた大量生産の時代から、一人一人の好みのものが、より簡単に作れるようになる時代が来ようとしている。いわば「ワンバイワンの時代」。そうなると、ファッションの世界で言えば、ヨーロッパの原点であるオートクチュールのシステムが見直されるのではないか。」

彼がこうした考えに至ったのには、2つのバックグラウンドがある。
一つは、既製服の仕事と並行して行ってきた、芸能人などの衣装デザインの仕事だ。これまでレディー・ガガ (Lady Gaga)など内外の様々なアーチストたちへ衣装提供を行ってきた中里、衣装は基本的に1点もの。アーチストの様々な要望に応えつつ、コストも押さえるという衣装制作のノウハウを生かしたいと考えている。

もう一つは、両親からの影響だ。生活で使う身近なものは、なるべく手作りをするという彼の両親は、住む家でさえ、長年かけて自分たちで作り上げたという。そうした環境の中で、中里は、大量生産されたものよりも、1点ものに愛着を感じるようになった。その後、ファッションを学ぶために留学したベルギーのアントワープでも、社会に根付いているDIYやクラフトマンシップの伝統に魅力を感じたのだという。

そんな彼が最終的に目指しているのは、限られた人への高価な服の提供だけではない。誰でもが、自分の好みで、ぴったりあった服を享受できる時代だ。そのため、比較的安価にカスタマイズした服を届けるためのシステムづくりなどを、オートクチュールへの挑戦と並行して行っている。それは、1点もので高価な服づくりで培ったノウハウを、多くの人に向けて展開する「オートクチュールシステムの民主化」ともいうべき新たな挑戦だ。

3Dプリンターなどの普及で、多くの人に向けて、カスタマイズされたものを届ける「マスカスタマイゼーション」の時代が来るといわれて久しい。それは、一過性のブームにとどまらす、関連のテクノロジーは年々進化し、世界中で少しずつ広がりを見せている。そうした社会の変化を見据えた中里の挑戦には、ファッションの未来を考える上でのヒントがあるように思える。

【放送局プロデューサー小川徹の東コレ取材日記】
ファッション×テクノロジーのうねりが始まった「ファッション進化の芽を探せ!~東コレ取材日記①~」
お隣さんからの越境は何を生むのか?「ファッション進化の芽を探せ!~東コレ取材日記②~」


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