Masahiro Kubo

自由な表現や主張と「おもてなし」のバランス

久保雅裕

アナログフィルターJournal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)編集長

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ヒカリエやスペース・オーなどオフィシャル会場やラフォーレ六本木、スパイラルホールといったショー向きのホールで普通に開催されるショーが多いが、なかには、会場にこだわったブランドも見受けられる。

パリでは、市庁舎のバンケットホールやグランパレ、プティパレ、装飾美術館などのミュゼでのショーも数多く、その歴史的な建造物やルネサンス期の宗教画、天井画などに囲まれた荘厳な雰囲気の中でショーが行われる事も多い。

さて、3日間のコレクションを振り返って中間報告的に整理してみる。

ティート トウキョウ(tiit tokyo)」は、大久保の淀橋教会を会場に選んだ。ドーム状の天井が吹き抜け感の良いホールで、カットジャカードのシリーズは切り替えも楽しく、レインボーのシフォンも爽やかだった。

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>> tiit tokyo 2017年春夏コレクション

東京キネマ倶楽部の「キディル(KIDILL)」とリキッドルームの「ミントデザインズ(mintdesigns)」は、音響にこだわったのだろう。キディルは、パンクバンドの演奏とともに暗がりを疾走するモデル。黒の中にカラフルな色合いが差し込み、ギャップがパンクだ。ミントデザインズは、地鳴りがするほどの重低音のドラムンベースに、ショッキングピンクと黒の組み合わせのチェックやリボンがこれまたギャップがあった。両者ともギャップ狙いか?

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>> KIDILL 2017年春夏コレクション

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>> mintdesigns 2017年春夏コレクション

「ユキ トリイ(YUKI TORII)」は、会場こそラフォーレ六本木だったが、壮大なパリのパサージュをバックパネルに配して雰囲気を盛り上げた。個人的にはカモフラ柄にフラワー刺繍が若々しく好感が持てた。

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©sakura tsuchiya

インスタレーションでモデルが登場せず、ビデオのみだった「ジュンハシモト(junhashimoto)」も三味線演奏という味付けで主張した。本物を見たいと思った消化不良の人も多かっただろう。

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©sakura tsuchiya


ウエムロ ムネノリ(uemulo munenoli)」は、小箱のクラブを無機質なスタジオのように仕立てて、じっくりモデルのルックを見せた。でも多分この人の商品は、展示会で触ってめくって見る方が、味わいがあると思う。

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>> uemulo munenoli 2017年春夏コレクション

シナ スイエン(SINA SUIEN)」は、コンクリート打ちっ放しのレンタルスペースで、コンテンポラリーダンスともパフォーマンスともつかない、ゆったりとした動きのモデルが服を見せたが、長過ぎて間延びしてしまった感があった。見る側の許容できる範囲を忖度した構成が必要だ。それも「おもてなし」の一つで、見せる側の主張と見る側の心地良さのバランスが取れたら最高の形になるような気がする。

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>> SINA SUIEN 2017年春夏コレクション

会場はスペース・オーと普通だが、強烈なメッセージを放ったのは「テンボ(tenbo)」。実は初めて見させてもらったのだが、インパクトが強過ぎた。もちろん良い意味で。既にあちこちで書かれているだろうから割愛するが、「ハンセン病の歴史を伝え、偏見を克服する」というはっきりとしたメッセージを打ち出して、多様な障害を持つ人たちをモデルに披露した。表現方法に賛否はあるかもしれないが、純粋に僕の心に届いたことは間違いない。こういう自由な表現もあって良いのがファッションの存在価値なのだと思う。制約や制限から生まれるファッションもある。その最たるものが軍服(ミリタリー)や制服なのだが、一方で何物にも捉われない表現が、また新しいファッションを創り出すのだろう。

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©sakura tsuchiya

レオナード・ウォン(LEONARD WONG)」は、アヤバンビ(Ayabambi)のダンスパフォーマンスで圧倒した。味付けという点では、びっくりぽんだった。

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>> LEONARD WONG 2017年春夏コレクション

そして「コーシェ(KOCHE)」のとんちゃん通りをジャックした路上ショーには拍手を送りたい。モデルも知り合いや店舗スタッフのように身近な人たちで、まさにストリートに根差したスタイルと親近感を持たせる演出と言える。そして、できるなら、お金のない若手も、コーシェのショーの後に、ムラサキスポーツの前あたりで、大胆にゲリラショーでもやってほしかった。

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>> KOCHE 2017年春夏コレクション

会場や音楽・演出は、表現する側の最も大切な一部分ではあるが、それは、あくまでも観客とシンクロして、エナジーを高め合うような状態になって初めて成功したといえる。そう考えると、独り善がりでコンフォタブルを忘れた表現方法では、折角のプレゼンテーションも台無しだ。自由な表現や主張を大切にしつつ、おもてなしとのバランスにも腐心してほしい。

【「ジュルナル・クボッチ」編集長久保雅裕の東コレコラム】
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