liroto 2019年春夏コレクション

Mugita Shunichi

モードノオト2018.10.19

麥田俊一

90年代から世界のコレクションを取材しているジャーナリスト

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liroto 2019年春夏コレクション
liroto 2019年春夏コレクション
 

 金曜日の夕刻、それも表参道界隈ともなれば、肥大化したエゴとファッションを誇示しながら、お楽しみの一夜のウォーミングアップに余念がない。こうした気分をひとさまと分かち合う習慣など、とうの昔に捨ててしまった私は、浮かれた街にすくと背を向け、何処かに早く逃げ込みたくて、知らずうちに歩幅も大きくなっていた。しかし、地下鉄より地上に上がると、ほどなく「liroto」のショー会場に到着。ホッと胸を撫で下ろした。今回は、作り手の富塚尚樹にとって2回目のショー。ブランドも2シーズン目を迎えたばかりだ。デビューと同時にキャットウォークでの作品発表を開始したのだから、富塚の心中を察するに、自ら頼むところが頗る厚かったに違いない。自前のオーラを既に持ち得たブランドだ。

liroto 2019年春夏コレクション
liroto 2019年春夏コレクション
liroto 2019年春夏コレクション

 存外に小さな空間に鮨詰め状態のまま開始を待つ会場は、既に何かしらの予感に満ちていた。そして、その予感は見事に的中した。ショーは随分と素晴らしい出来栄えだった。心に沁みる服、精神が昂揚する時間を共有させて貰った。カネコアヤノの弾き語りでショーは開始した。身近に感じるけれど、何処かに持っていかれそうな奇異な浮遊感...晴れ渡る空、澄み切った空気を感じさせる遠景に、愛憎入り交じるドロドロした情念を感じさせる、ザラついた感覚を漂わせる不思議な歌である。この歌に寄り添われ、純粋故に残酷になれる刺々しい芽が潜む少女特有の透明な感性に満ちた服は、おのずから確かな旋律(メロディ)を生ずるのである。

 勝手な解釈だが、「オブセッション」がこの場合のキーワードとなるのだろう。とはいえ、それは、今回の服作りの源泉となった作り手側の脅迫観念めいたものとは異なり、「取り憑かれていること」と云う意味でのオブセッションである。波打ち、ドレスの服地を走る細かなフリル、オパール加工や刺繍で描いた花柄、赤と黒の強烈な対比など、装飾性の強い服だが、モチーフは可能な限り服に凝縮され、濃縮された甘さは、ときには毒々しさを覗かせ、このちらりと露出した残酷な横顔を見て私はドキッとさせられたのである。自分の服のカタチを知り尽くしているから、こうした緊張感を保ち続けることが出来たのだろう。彼のように、他所にてパタンナーとして活躍した後に自ら起業するデザイナーに共通して云えることがある。つまり、パターンはデザインの従としての分をわきまえているか。また、パターンメーキングのみが際立ち、創作の独りよがりにのめり込んではいないか。そうした検証を自らに課すことが必要になる場合があるが、今回は、あれこれ無用な心配をする必要もなかった。絶妙な均衡が深みのあるドラマを生み出していたのだから。この余韻の残るエピローグを是非とも次に繋げて欲しい。「期待の新人」が乱発される昨今だが、まさにこう云う場合にこそ相応しいフレーズではないだろうか。(文責/麥田俊一)

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