Mitsuhiro Minami

低価格オーダースーツ市場、参入相次ぐも成長は難しいのか?

南 充浩

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

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当方も含めて容姿が残念な男性が一番マシに見えるファッションはスーツである。スーツが死ぬほど似合わないという男性はほぼいない。

ネクタイまでする必要はないが、カジュアルでもある程度スーツに近いアイテムでまとめると、「ひどく似合っていない」という事態は回避できる。

いわゆる「どカジュアル」は似合う似合わないが顕著に出る。特に中高年男性には厳しい。普段のスーツ姿は普通なのに、日曜日に出くわすとひどく残念な見映えになっている中高年男性は数多くいる。

とはいえ、今後、男性のスーツ需要は伸びないと考えられる。

どうしてもスーツは仕事着だし、休みの日にまで着用したいという人はほとんどいない。また定年退職してリタイアした後もスーツを着続けたいという人もほとんどいないだろう。

カジュアルは嗜好品の側面があるから、手持ちがあっても買い足してしまうことがあるが、「スーツをついつい買い足してしまった」なんて言う人はよほどのマニアだろう。そんなマニアは極少数派でしかない。

こう考えると、スーツ需要というのは着用者人口の増減に大きく左右される。

当方は、何でもかんでも人口動向が左右するとは思わないが、ことメンズスーツに関しては人口の増減がかなり直接的に需要を左右すると思う。

近年、メンズスーツ市場は縮小し続けている。需要はゼロにはならないが、大きく回復することはない。

メンズスーツ市場縮小の最大の理由は、

人口が多かった団塊世代男性のほとんどがリタイア済みとなってしまったため

だといえる。

低価格化とかカジュアル化とかの影響もゼロではないが、仕事着という性格が強いメンズスーツは着用者人口が減ると、その影響をもろに受けてしまわざるを得ない。

そんな中、低価格パターンオーダースーツ需要に活路を見出そうとする企業も少なくなかった。しかし、そんな需要は元からそれほど大きくない。

スーツ全体の需要を押し上げる作用は全くなく、2万円台~5万円弱の価格で既製スーツと同等なら、スーツはサイズ感が命だから、何割かの人がパターンオーダーに乗り換えるに過ぎない。

スーツの総需要は変わらず、何割かが既製からパターンオーダーに乗り換えただけである。

そして、その低価格パターンオーダーの市場も元からそれほど大きくない上に、今後どんどん成長し続けることは考えられない。

何度も言うが、スーツを仕事以外のデイリーカジュアルで着用したいと思う人は数少ないからである。

そんな中、AOKIが低価格パターンオーダースーツから撤退した。

まあ、ある意味で見切りが早いのがAOKIの良い部分なので、これは素直に評価したい。大企業が儲けもないのにこだわり続けなくてはならないほどの美味しい市場ではない。

AOKI、低価格のオーダースーツブランド「アオキトーキョー」わずか1年で事業終了

https://www.fashionsnap.com/article/2020-01-25/aokitokyo-close/

AOKI初のオーダースーツ専門業態「アオキトーキョー(Aoki Tokyo)」が、銀座6丁目店を2月24日に閉店するとともに、事業を終了すると発表した。同事業は昨年3月1日のデビューからわずか1年で展開を終えることになる。

「アオキ(AOKI)」と「オリヒカ(ORIHICA)」でメンズオーダースーツを拡大してきたAOKIは、オーダースーツ事業のみで年間売上高100億円達成を目指しており、アオキトーキョーはその布石となる事業として2017年から約2年の構想期間を経て立ち上がった。

(中略)

実店舗の出店計画では大都市圏のビジネス街や主要ターミナル駅を中心とし、銀座6丁目店のほかに池袋東口店と新宿東口店を加えた計3店舗を出店したが、池袋東口店と新宿東口店はすでに閉店している。

とのことである。

よほどに業績が伸びなかったのだろう。

この記事にもあるように、近年は紳士服メーカーやD2Cブランドを中心に低価格のオーダースーツ市場への参入が相次いでいるが、そもそも何千億円規模に成長するような市場ではない。

規模的にもっとも成長しているのはカシヤマ・ザ・スマートテーラーだろうが、これとてもいまだに黒字には転換できていないという情報がある。

それ以外のブランドや企業はさして大きく伸びてはいないし、赤字続きのブランドもある。

記事中にあるZOZOオーダースーツの撤退は、売れ行きもさることながら、それ以外の組み立てが間違っていたし、そもそも自社顧客層との乖離(顧客は女性が圧倒的に多い)も激しかったから、これは低価格パターンオーダー市場という問題ではなく、基本的な構想の問題だったといえる。

低価格パターンオーダー市場についてはメディアやネットが騒ぎすぎという印象しかない。

では今後、この市場はどうなるのかというと、一定の規模には達するだろうが、AOKIのような大手が満足できるほどの規模にはならないと考えられる。そのため、青山やコナカなどの大手は、「余技」「プラスアルファ」として取り組む程度で十分ではないかと思う。逆にこれらの大手がコダワリすぎると、経営を悪化させてしまうだろう。

一方、数億円~数十億円規模の中小ブランド、例えば、グローバルスタイルなどは今後、飛躍的な売り上げ拡大はできないだろうが、現状維持から微増程度はやりようによっては可能で、あとはどう利益を確保し続けるかではないかと思う。

ネットで騒がれているD2Cとか、後発ブランドなんかは離陸できずにそのまま消え去るのではないかと思う。

D2Cブランドには安心感がなさすぎて胡散臭くあるし、今更やり始めた後発ブランドはよほどの「何か」がないと、小さい市場において先行各社から客を奪うことは至難である。

当方のように、買う側の人間は、値段の安さと品質のバランスと応対の良さを見極めて、使い勝手の良いところで買うだけの話である。カジュアルと違って、ブランドロゴも入っていないから、エフワンでオーダーしようが、ツキムラでオーダーしようが何の問題もない。

低価格パターンオーダースーツなんてそんなもんだと思っている。

南 充浩

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