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120年企業・繊維商社モリリンはこうして生まれた -vol.3- グローバルSCM構築の次へ

120年企業・繊維商社モリリンはこうして生まれた -vol.3- グローバルSCM構築の次へ

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 現在のモリリンを語る上でSCM(サプライチェーンマネジメント)の軌跡は欠かせない。2000年以降、中国へアパレル生産の移転が急速に進み、同時に製品への品質要求も強まった。それまでは中国から製品を輸入後、国内で抜き取り検品を行っていたが、取扱量の飛躍的な増大に伴って頻発する不良品の問題を解決するため、船積み前に全量検品し水際で食い止めることを企図した。

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■常にブラッシュアップ

 上海エリアでのアパレル及びリビング製品の生産急増を踏まえ、上海市宝山区で検品業務を行うトライスター社をパートナーとして01年に検品工場の上海森億服飾整理を設立した。駐在する品質管理スタッフの指導と現場の習熟に伴って業務はいち早く軌道に乗り工場を拡張、取引先の専門店チェーンの「直流構想」に対応する体制を整えた。直流は値札、店舗別ステッカーの発行、店舗別アソートなどの複雑な作業を船積み前に行うことで、従来日本に入着後にかかっていた物流コストを節減するという仮説だった。机上の計算にとどまらず、直流を継続することでその効果が検証され、直流を標準とする取引が急拡大した。出荷時期を工場やフォワーダー任せにせず、森億からの指示でコンテナ単位にまとめて積載効率を高め、地道な物流コスト削減に努めた。

 山東省青島でも日新運輸の現地法人、青島海新達と組み業務委託の形で03年から上海森億と同様に検品、検針、物流加工、ピッキングアソートなどを行い、直流への対応を続けた。上海では業務量の増加で手狭になった宝山工場に加え、その4倍の処理能力を持つ奉賢工場を建設、山東省北部には煙台工場を設立し中国での物流体制を整備拡張していった。

 中国経済の発展に伴い人件費が上昇したものの、08年から5年半の間は為替相場の円高傾向が続き、コストアップ要因が打ち消され、中国からの輸入は急増していく。ところが13年に入ると為替相場は一転して円安が進み、領土問題による日中間の政治的対立もあり、「チャイナプラスワン」の動きが加速する。上海森億は順調に業績を伸ばしたが13年以降は苦戦し、作業効率の改善と人員削減を断行して業務を改善させた。

 このSCMのブラッシュアップは今も続けられている。中国で構築した体制の優位性は当面続くと判断、ASEAN(東南アジア諸国連合)への生産シフトは各部署の戦略に沿って進めることにした。11年に開業したモリリンベトナムのミシン糸販売は順調に推移。ホーチミンに加えて16年にハノイにも事業所を設立、南北のネットワークを生かした全土での販売、生産を広げている。

 カンボジア・プノンペンに15年に稼働したカジュアルボトムの縫製工場モリカ・インダストリーは中国山東省の栖霞茉莉華服装をマザー工場とし、今後はASEANでの素材調達を増やしコスト競争力を高める。バングラデシュでは、15年にバイイングハウス兼生産管理会社エムジェーファッションと連携、18年にはチッタゴン物流センター、19年にダッカ駐在員事務所を立ち上げた。

 SCMの理念は普遍としつつも「適量生産の仕組み」と「グローバルサプライチェーン」の構築など常に新しい時代に対応した運営に注力している。信頼できる顧客や工場との間で店頭売り上げ情報をリアルタイムで共有し、期中追加生産を可能にする素材リスクなど、素材メーカーやコンバーターも参画する大きなスケールでのSCMを目指す。先進的な中国工場のITの進展にも対応していく。

 オーストリア・レンチング社のセルロース繊維の輸入販売を契機として、オリジナルの差別化素材の開発にも注力し、マーケットインの発想で取引先のニーズに応えてきた。00年代はエレガンスカジュアル、10年以降は機能性を重視するなど、常にトレンドの変化を的確に捉え、アパレル製品まで一貫提案することで高い評価を得てきた。

07年9月から稼働した奉賢工場

■幅広い市場を開拓

 近年は非アパレル事業の拡大にも注力する。リビンググループは羽毛布団と低反発マットレスの2大柱商材の生産背景を整備し通販向けで大きく伸ばした。インテリア商材では独自のSCMによる機動力を援用し専門店チェーン向けに拡販、過去10年間売り上げと利益で高い伸びを実現し、業績に大きく貢献している。産業資材、繊維資材の両グループは特異な商材に絞り込み、国内外に独自の生産背景を構築し、両業界の勝ち組企業との取引を拡大、安定した業績を維持している。繊維資材グループは20年に韓国で小ロット・多色に特化したポリエステル原着糸製造工場を立ち上げ、自動車内装材などの用途に販売するほか、スポーツやユニフォームなどアパレル用途でも幅広い市場開拓を目指している。

 市場の縮小や横ばいが続くアパレルにおいては、OEM(相手先ブランドによる生産)からODM(相手先ブランドによる設計・生産)へと軸足を移し、17年にFA(ファッション・アパレル)事業本部を新設した。取引先のブランドごとに服種を意識した複合的な提案を行い、生産時のミスやロスの削減、信頼できる生産パートナーへの集約・見直し、新素材の共有化を進め、不採算受注の徹底した排除で業績を回復させた。

 全社では19年から低採算及び単体赤字事業、営業組織の見直しに着手している。こうした見直しは直近における安定かつ高利益水準を背景に、聖域を設けず進めている。

 ◇

 3年後の120周年に向けた中期経営計画では、非アパレル事業の拡大や新たな事業創出、DX(デジタルトランスフォーメーション)による事業運営の最適化と働き方改革、サステイナブル(持続可能な)で社会と環境に配慮していくことなどを組み入れる予定だ。前期(20年2月期)に営業の評価基準を「売り上げと利益」から「利益」に変えたのを踏襲する。「社会貢献できない企業は支持されない」(森正志社長)という考え方を社内に徹底していく。120年の先を見据えたかじ取りが始まっている。

(繊研新聞本紙20年11月16日付)

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