コロナ禍でデザイナーブランドのビジネスの仕組みは大きく変わった。パリをはじめ、各都市で開かれていたファッションウィークは見直され、ほとんどのブランドがオンラインでのファッションショーや展示会を行うようになった。
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21年春夏デザイナーコレクションは、一部のフィジカル(リアル)のファッションショーとデジタルの映像配信の二つの柱で開かれた。日本ではまだリアルの展示会を行える状況だったが、海外ではほとんどの展示会がオンラインで行われた。
オンラインでは、少人数の観客を招いたリアルのショーを配信するケースもあった。「シャネル」「エルメス」「ヴァレンティノ」といったビッグブランドがこうした手法をとった。その一方で、従来のファッションショーとは全く関係のないデジタル配信をするブランドもあった。
自然の中で見せるショーが目立った。コロナ禍でのロックダウン(都市封鎖)を経て自然への憧憬(しょうけい)や人とのつながり、人類の生み出してきた遺産へのリスペクトといった意識が高まったためだ。「バーバリー」や「ステラ・マッカートニー」が自然豊かな郊外の森の中を会場に選んだほか、「アンリアレイジ」も富士山の見える高原にテントを張って、テント(住居)が服になる演出をした。
自然の持つ温かみや伸びやかな生命の力を感じさせる雰囲気やスタイルが、ビッグトレンドとなりそうだ。柔らかな日の光を思わせる優しくきれいな色、ハンドクラフトのぬくもり、自然のパワーをもらってポジティブに生きる女性像を描いた。
日本ではリアルの展示会も開催できる条件があったが、海外のバイヤーが来日することは難しい。そのため、デザイナーブランド側があらかじめ生地のスワッチなどをバイヤーに送り、準備をするケースが目立った。問題はフィッティング。サイズ感を伝えるためにオンラインの展示会でスタッフが着用しながら説明する。着心地をバイヤーが実感することはできないが、ブランド側が伝えようと努力する姿勢が見られた。当面は「ニューノーマル」の展示会としてこうした手法が続きそうだ。
今回のデジタルでのコレクション発表を経て、各ブランドともデジタルの活用方法がより進化している。ショーとは違うコミュニケーションツールとして、オンラインの活用方法が多様化しそうだ。補完ツールとして、リアルのショーが再開されたとしても、服の見せ方がより広がっていく。
(繊研新聞本紙20年12月21日付)
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