モード感と機能美を兼ね備えたエレガントなワークウェアを提案
ブランドと並行するユニフォーム事業で相乗効果も
長引くコロナ禍でアパレル業界の苦戦が続くなか、盛り上がりを見せているのが”ワークウェア(作業着)”だ。ここ数年でクール&ウォームビズや働き方の多様化が広がり、オフィスファッションのカジュアル化が進行。アウトドアブランドのタウンユースや、スポーツ×レジャーをミックスする”アスレジャー”の流行も話題になった。さらにコロナ禍で外出自粛や在宅ワークが増え、オン・オフの境界が曖昧になり、より着心地や機能性を重視する人が増えたことも追い風になっている。
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ワークウェアが広く一般に注目されるようになったきっかけのひとつが、作業服販売最大手の「ワークマン」が18年にオープンした新業態「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」だ。建設現場などで働くプロ向けの作業服を販売する同社は、17年より一般ユーザー向けにアウトドア・スポーツ・レインウェアの3部門のプライベートブランド(PB)を展開。プロ納得の高品質・高機能・低価格にデザイン性も重視した作業服は、アウトドアやスポーツほか、バイクやDIYユーザーなど幅広い層から支持を獲得。PB商品を中心に揃える「ワークマンプラス」のオープンにより、SNSを中心に女性や若者、ファミリー層にも知名度を広げ、20年3月末には167店まで店舗を拡大した。同じくワークウェアのヒットといえは、水道工事などを手掛けるオアシスライフスタイルグループの「オアシススタイルウェア」が、18年に発売した「ワークウェアスーツ」。独自の高機能素材を使った着心地抜群の”スーツに見える作業着”は、有名百貨店や大手セレクトショップでの扱いを増やし、2年目で売り上げを3倍に伸ばして話題を集めた。
アトリエとカフ&バーを併設したフラッグシップショップ
そんな中、新鋭のワークウエアブランド「WANSIE(ワンジー)」が、ブランド初となるフラッグシップショップ「WANSIE WORKWEAR & UNIFORM(ワンジーワークウェアアンドユニフォーム)」を昨年6月、新宿五丁目の三番街商店街にオープンした。昭和から続く元和食屋のコンクリート壁を、ピンクの蛍光灯が照らす店内は、タイルやリサイクル古材、メタル什器を組み合わせたアトリエのような雰囲気。つなぎをはじめとする作業着をタウンユースに再構築したワークウェアを販売し、人と人の接点となるカフェ&バーを併設する。2階はオフィス兼アトリエになっており、オーダーメイドのユニフォームやカスタムアイテムの製作、お直しにも対応。同ブランドの”ものづくり”の現場が体感できる場となっている。
運営はアパレル企画・製造・販売、WEBサイトの制作、店舗開発などを手がける株式会社mid。「事業化のきっかけは20代からの友人達の存在。ファッションやウェブ制作、不動産など、様々な分野の友人達の専門を生かし、幅広くプロデュースする会社としてスタートしました」と言うのは代表取締役の廣田完滉さん。廣田さんは14年にmidを設立。続く16年に立ち上げたワークウエアブランド「WANSIE」、オリジナルユニフォーム製作事業の「WANSIE UNIFORM」は、アパレル業界でキャリアを積んだ友人のパタンナーやデザイナー、スタイリスト等で構成されている。
多様なカルチャーが入り混じる、現代人のためのワークウェア
「ワークウェアに特化した理由は、日常にも働くシーンにも幅広く使用される身近で普遍的なアイテムを使って、ものづくりの可能性を表現したかった為。また、そうした普遍的なワークウェアをブラッシュアップすることで、社会に役立つものづくりができるのではと考えました」(廣田さん)。
英語でジャンプスーツ(ONESIE)の造語から名付けたという「WANSIE」のテーマは、伝統的なワークウェアをベースに日本のクラフトマンシップを加え、現代にアップデートすること。シーズンごとに進化を続けた現在のコンセプトは「Workwear × Elegance × Street」。オンとオフ、多様なカルチャーが入り混じる現代人のための、モード感と機能美を兼ね備えたワークウェアを提案する。
同ブランドの魅力は、大量受注品以外ほぼ自社一貫製造であること。「企画してすぐパターンを引き、縫製できるのが強み」と廣田さんが話すように、2階のアトリエでは、職人が縫製する一点物やこれまでのアーカイブを実際に見て購入することもできる。
新宿で一貫生産する稀有なブランド
「以前から、お客様や企業向けにものづくりの現場を見てもらえる場、空間や内装も含めて自分たちの世界観を伝えられる店舗が欲しいと考えていたところ、ちょうど事務所の1階が空いて。新宿でこうして一貫生産しているブランドは少ないので、あえてここで出すのが面白いのではと出店を決めました。一昨年の12月に借りたのですが、コロナの影響で6月オープンに」(廣田さん)。
2020AWのテーマは「A Special Workwear for Everyday Clothes」。より”ワーク”を日常生活に落とし込むために、テクニカルな素材やディテールに特化し、ミリタリー、テーラー、トラッドやスポーツなど様々な要素を加えて再構築。例えば、撥水性素材を使いドローコードでシルエットが変えられる軽量でドレス感も出せるモッズコート、紐使いのディテールを使ったリバーシブル仕様のボアジャケットなど、シンプルな中にギミックを効かせたユニセックスなアイテムは、多様な着こなしが楽しめるよう工夫されている。価格帯はアウターが4万-5万円台、スウェットやTシャツが1万円程度、シャツが2万円程度、ジャンプスーツが2万円程度。そのほか定番のエプロンやバッグ、キャップなどの小物類も展開する。
その“企業たらしめる装い”とは
一方、アパレル部門のもうひとつの軸が、オリジナルユニフォーム製作事業「WANSIE UNIFORM」だ。現在5年目ながら、飲食やホテル、医療や介護、作業服、事務服をはじめ、コスメやジュエリーブランドの店舗スタッフユニフォームやラグジュアリーブランドのイベントスタッフユニフォームまで多種多様な幅広い顧客を獲得しており、幅広いニーズに応えてきた。
同社のユニフォームの魅力は、コンセプトやブランディングを考慮し”企業らしさ”を最大限に生かすものづくりにある。
「ユニフォームで意識しているのは、働く人のモチベーションが高まるような、その”企業たらしめる装い”をつくること。現場の声を反映するなかで、仕事内容や体型で着こなしがアレンジできるように2way・3way仕様にしたり、生地の重ね方やタック(プリーツ)の入れ方で、より丈夫に動きやすくするといった工夫もどんどん重ねる。こうしたユニフォーム事業での気づきやギミックは『WANSIE』にも生かされ、相互に反映できる。ブランドとユニフォーム事業を並行する相乗効果を感じます」(廣田さん)。
働き方改革とともに進む、”ワーク”と“ファッション”の融合
客層は30-40代の男女が中心。口コミやinstagramで知って足を運ぶ人、近隣の経営者や医者(エリア内に東京医科大学がある)、アーティストなど専門職の客が多く、ユニフォーム事業の顧客も訪れる。18時からのバータイム(緊急事態宣言中は短縮営業)は一見客も来店し、オーガニックビール、ビオワイン、日本酒、軽食などを楽しみながら、試着や買い物をする人も多いという。
ワークウェア人気と並行して、近年では有名ブランドやデザイナーが手がけるスタイリッシュな企業制服も話題を集めている。「ビームス」は10年以上前からユニフォーム事業「ユニフォーム サーカス ビームス」、メディカルウェア事業「ビームス メディカル」を展開しており、17年には「サロン アダム エ ロペ」がユニホーム事業に参入。近年ではクラシコが「ロンハーマン」や「ジェラートピケ」等とコラボした発売したスタイリッシュなメディカルウェア、ヤマト運輸と「ホワイトマウンテニアリング」の相澤陽介氏がタッグを組んだ新制服なども話題を集めた。働き方改革とともに”ワーク”と“ファッション”の融合がますます進むなか、ワークウェアが日本のアパレル業界を支えているという一面も浮かび上がる。
ブランド×ユニフォーム事業のシナジーを生かし、現代人のライフスタイルに合わせたものづくりを続ける「WANSIE」。今後もユニフォーム製作で得た気づきを生かしながら、幅広いワークウェアアイテムづくりに挑戦していく予定だという。「手間のかかる工程や細かいディテールに関して時間や労力を惜しまずものづくりをしています。今後も実店舗やオンラインをベースに、こだわりや世界観を表現していきたいですね」(廣田さん)。
【取材・文=フリーライター・エディター/渡辺満樹子】
WANSIE WORKWEAR & UNIFORM(ワンジーワークウェアアンドユニフォーム)
〒160-0022東京都新宿区新宿5-11-25アソルティ新宿五丁目ビル#102(ショップ)#201(アトリエ)Tel:03-6384-2884.
WANSIE UNIFORM(ワンジーユニフォーム).
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