「グッチ(GUCCI)」は7月1日、イタリア・フィレンツェのカルダイエ通りにアーカイブを保管する新たな拠点を開設した。新拠点はブランドの創設100周年記念プロジェクトの一部として、その歴史を15世紀まで遡るパラッツォ・セッティマンニ(Palazzo Settimanni)に開設された。「グッチ」はこの宮殿を1953年に取得して以来、ファクトリーやワークショップスタジオ、あるいはショールームといったさまざまな目的で活用してきた。「グッチ」のクリエイティブ・ディレクターを努めるアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)は、「私の役割はたくさんの物をあるべき場所へ戻す、つまり本来の家族の元に帰す手助けをすることでした。一見すると過去が保存されているのだけれど、実際には現代との架け橋となるような、そんな場所へ。古い建物は生きているのです。まるでファッションのように」とコメントしている。職人や芸術家の工房が多くあったこの地区は、16世紀にメディチ家が移り住んだことから貴族たちの豪華な邸宅が立ち並ぶようになった。下町から洗練された都市へ変容したこの街には、研究と調和を重ねて進化していく「グッチ」のスタイルコードに通じるものがある。
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地下1階を含む全5フロアに残る19世紀の装飾、18世紀シュルレアリスムの騙し絵、17世紀末のフレスコ画を初めとするそれ以前の装飾の痕跡は、ありのままに、あるいは本来の華麗な姿に復元されている。唯一の大きな改装が行われたのはエントランスホールで、より多くの光を取り入れるために1990年代に付け加えられた天蓋が取り除かれ、中央のポーチはオリジナルの優雅なプロポーションに復元された。その他の家具からランプ、食器棚まで全てが宮殿の修復・再生と同様に繊細なデザインが施され、「グッチ」の歴史を伝えるコレクションを展示するにふさわしい場所として生まれ変わった。1階には、ヴィンテージハンドバッグが展示される「Hortus Deliciarum(歓喜の庭)」やヴィンテージ&コンテンポラリージュエリーが展示される「Le Marché des Merveilles(驚きのマルシェ)」。2階には、「The Alchemist’s Garden(錬金術師の庭)」「Aveugle par Amour(盲目的な愛)」などといった想像力をかきたてる名前がつけられた部屋にスカーフやドレスなどテキスタイル作品とシューズのアーカイブが収められる。
過去と現在の対話を生み出す場として、「グッチ」のアーカイブを収蔵し、守り、人々に楽しみや驚きをもたらすパラッツォ・セッティマンニは、美しく整えられた単なる作品のコレクションではなく、有機的かつ創造的で常に進化を続けるグッチのクリエイションの生き生きとした証として機能する。現代のフィレンツェにありながら偉大なる歴史の痕跡を増幅するようなこの空間のなかで、「グッチ」のアーカイブは展示物という殻を脱ぎ捨て、異なる文化や歴史的背景をつなぐ「架け橋」となる。
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