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アパレル店長が緊急事態宣言下の営業で重視したことは?

アパレル店長が緊急事態宣言下の営業で重視したことは?

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 ファッション小売店は、3度目の緊急事態宣言下、入居するファッションビルやSCが休業要請対象となり、多くの店舗が休業した。こうした中、営業を継続した路面店の店長に、緊急事態宣言下の店舗運営において、とくに重視したことを聞いてみた。

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接客の再強化でファン作り

「ジーンズメイト」池袋本店 西原大軸さん

池袋本店では「かゆいところに手が届くような接客を心掛けている」と西原さん

 「路面店の役割は『ジーンズメイト』のファンを作り、増やすこと」と西原さん。20年秋、同社の中で売り上げ規模が大きな池袋本店に異動してきた。赴任から現在まで一貫して重視しているのは、接客を通じたファンの獲得」。コロナ禍をきっかけに薄れてしまった、スタッフの接客に対する意識の改革に力を入れている。

 春以降、売上高が前年同月実績を大幅に上回るようになったが、19年比では下回っている。「予算も未達で、前年を超えているからと喜べる数字ではない」という。40歳前後の男性を筆頭に、学生や主婦など客層の幅は広いが、インバウンド(訪日外国人)中心に客数が落ち込んでいる。

 赴任した当初は「お客様に気を使うばかりに、接客を控えようとするスタッフの姿が目立った」という。屋号にもあるジーンズを求めて来店する客が多いため、「ジーンズの接客を強化しよう」とスタッフに働きかけた。接客によって商品が売れたか、売れなかったかという結果や、売れた商品の金額にかかわらず、接客を試みた行動や過程を評価することで、「前向きに取り組める環境を整えた」。半年たった今、「積極的に接客に臨もうとするスタッフが増えてきた」と手応えを感じている。

 接客を再強化する背景には、「池袋本店をはじめ、ジーンズメイトのリピーター、ファンを増やしたい」という意図がある。「お客様と直接対面し、接客を通じて感動を与えられるというのが実店舗ならではの魅力であり、役割だと思う。特に路面店はその役割を果たすべき責任が大きい」と考えている。緊急事態宣言下で厳しい状況が続いているものの、「魅力的な接客を継続することが、自店やECの将来的な買い上げにつながる」と信じている。

よりパーソナルな接客で満足感

「ディストリクト・ユナイテッドアローズ」濱本仁さん

「店のSNSはスタッフ全員で携わって、見てくれる人の幅の広さに対応出来るようにしている」と話す

 濱本さんはディストリクトに長く務めるスタッフの一人で、15年に店長になった。20年春に初めて発令された際の緊急事態宣言は今まで一度も長期休業を強いられたことがなかったため「衝撃的だった」という。

 最初の休業期間中は、店での作業が週1、2回あったが、それ以外の時間をどう活用するか考える必要があった。空白の時間を生かすため「スタッフそれぞれの足りない部分を考え、原因をしっかりと理解し解決する時間にしよう」と決め、そのツールとして「ロジックツリー」を使った。

 ロジックツリーを使い、スタッフの課題がスキルなのか時間なのか、各々が不足する部分の理由を掘り下げていったことで「甘えがあった」など普段では自分からなかなか口にしないことも出てくるようになった。結果的に濱本さん自身がスタッフと関わる時間も増えて「コミュニケーションが足りていなかったと自分の反省点にも気づくことが出来た」と話す。現在もその時の経験を生かして、面談の振り返りなどで活用している。

 21年4月末からの緊急事態宣言下では、顧客の来店予約などを受けて出来るだけ待ち時間を作らないようにした。その結果、ストレスなく買い物が出来て、よりパーソナルな接客や対応が出来て満足度が高まった。コロナ禍で来店頻度が下がっているため、しっかりとコミュニケーションを取ることも意識している。顧客が多い店だからこそ、商品を買うことだけでつながるのではなく、お客をどれだけ喜ばせることが出来るか、話を聞けるかを重視する。スタッフにも「物を売る気持ちにならないよう指導」している。

 濱本さんは「楽しむ体験をしてもらうのが路面店の役割」だという。そのためにも店全体でお客を歓迎する雰囲気を出し、居心地の良い店作りを徹底している。

顧客候補を見極めて接客に工夫

「ビームスプラス」原宿店 山田広志さん

「入店時の検温で一声かけることで歓迎ムードを出すようにしている」と山田さん

 19年からビームスプラス原宿店で店長を務める山田さんは「海外への卸も行っているレーベルの旗艦店だからこそと、デジタルでの発信も怠らないようにしてきた」と話す。

 緊急事態宣言の出された直後から休業や時短営業になったことで出来た時間を活用して、SNSやブログ用の写真の撮影などを強化し、来店出来ないお客に向けての発信をしてきた。特に昨年の緊急事態宣言では店舗が休業したため、「ビームスプラスを知ってもらうために発信を途切れさせないようにしよう」と考えるスタッフも多かった。

 しかし、多くのブランドがデジタルやSNSを強化するようになった中で、山田さんは「デジタルに注力しすぎて店に来てくれているお客様に対しきちんと対応出来ていないのでは」と考えるようになった。そこで朝礼の時間を長く取り、顧客の洗い直しに注力した。スタッフが日々の接客を振り返り、よく来店しているがまだ顧客化出来ていないお客を特定し、次の来店機会には「お客様のことを知ってますよ」というムードが出せるようにスタッフ間でお客の情報を共有した。そうしたムードで接客することで、お客の買い物に対するモチベーションが上がり、店の顧客になった人も多いという。

 「デジタルの表現だけでなく、実際に店に来てくれた時に期待を裏切らないパフォーマンスをすることも心がけている」と山田さん。デジタル面では、店に来にくいからこそ、インスタグラムでのライブ配信や原宿店らしいスタイリングを発信する。店舗では「お客様との関係づくり」だ。物の魅力はもちろんのこと、会いに行きたい、見に来たいと思ってもらえるような関係を作ることで「ブランドのファンになってもらいたい」。

会話を弾ませ客単価をアップ

「チャオパニック」京都寺町店 柿本久孝さん

「会話が楽しく弾めばお客様も『買おう』という気持ちになってくれる」と柿本さん

 「緊急事態宣言下でもお客様に積極的に話しかけ、会話が弾めば買い上げ率は上がる」。4月以降の京都は、新生活が始まった大学生も多く、その取り込みが期待できる時期でもある。異動で3月に着任した柿本店長は、店として顧客作りを重視し、4、5月の連休商戦中もお客一人ひとりに対する働きかけを強化するようにした。

 3度目の緊急事態宣言下も路面店として営業は継続。連休商戦中は、シフトを普段より2人増やし、来店客と会話を楽しむことを重視した。スタッフには、「(お客様が)商品を手に取る前から、なるべく話しかけるようにしよう」と呼び掛けた。例えば、「どこから来たのか」「チャオパニックの店に来たことがあるか」など、「商品以外のことについてもなるべく積極的に話しかけるようにした」。

 「ECでも商品を買うことのできる中、実店舗で大事にすべきことは接客でお客様の気持ちを弾ませること」と柿本さん。連休商戦中は、「ひたすら話し、お客様の話もしっかりと聞こう」とスタッフに伝えた。併せて「会話を弾ませた後は、お客様を全身コーディネートするつもりで意欲的に提案しよう」とも指示した。その結果、連休商戦は予算をクリア、コロナの影響がなかった19年実績との比較でも上回った。客数は上回れなかったが、客単価を大きく上げることができた。

 「路面店としてもう一度接客にしっかり取り組み、顧客作りを強化すること」に着手したのは3月から。リピーター作りが実り始め、連休の好結果にもつながった。現在、全体の約1割を占めるリピーターを、「これから2割に高めていきたい」と話す。

《バックルーム》

 3度目の緊急事態宣言下、都心の多くのファッション小売店は休業していたが、幸い路面店は営業を継続していたことから、路面店の店長取材を行った。

 営業継続とはいえ、ふだんより集客は期待できない。こうした状況の中で、店長がどんな目標を立て、どのようなことを意識しているのかが気になった。

 多くの店長に共通していたのは、改めて接客を重視したことだ。驚いたのはECとの連携意識が意外と見られたこと。緊急事態宣言中は、営業している実店舗が大きく減る一方で、ECは従来のままだ。見方を変えれば、実店舗とECがこれから互いを補完していくためのポイントも見えやすいのでは、と思った。

(繊研新聞本紙21年5月31日付)

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