ドイツミュンヘンを拠点とするスタートアップ企業NOVA(ノバ)。当社の開発する真珠の施されたオーディオイヤリング「NOVA H1 Audio Earrings」は、イヤリングを着用する感覚で装着することのできるワイヤレスイヤホンだ。特許を取得したディレクショナル・サウンド・テクノロジー(Directional Sound Technology)は、通話や音楽を聞く最中のプライバシーを維持できる。今回、同社の創業者のVlad Perianu(ヴラド・ペリアーヌ)氏、CEOのLaurence Gaubert(ローレンス・ゴーベール)氏、CMOのLorena Poy(ロレーナ・ポイ)氏にインタビューを行なった。
「ウェアラブルの概念を変える」製品
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NOVA H1 Audio Earringsは、「ワイヤレスヘッドフォン業界で初となる、邪魔にならないラグジュアリーなオーディオイヤリングを開発することでウェアラブルの概念を変える」というビジョンのもと開発されている。ラグジュアリージュエリーとテクノロジーを融合させるというアイデアが具現化された製品であり、音楽のストリーミングや通話、音声アシスタントの起動などの通常のワイヤレスイヤホンの機能をすべて備える。クリップの素材はシルバーとゴールドの2種類で、どちらにもパールがあしらわれており、主に女性ユーザーに向けて製品である。「現在市場には、耳掛け式、オンイヤー式、インイヤー式などのヘッドセットがありますが、これらは一日中装着することはできません。しかし、私たちのNOVA H1 Audio Earringsは、市場で購入できるイヤホンの中で最も身に着けやすい製品であることは間違いありません」とペリアーヌ氏は語っている。さらに「パールは時代を超越した、タイムレスなジュエリーだと考えています。ヨーロッパであれ、日本や中国、ロシアであれ、誰もが憧れるものであり、人生の中で身につける機会があるはずです。このようにパールは、時代を超えて、広く認知されているのです。」とゴーベール氏が語るように、タイムレスなジュエリーである真珠を使用し、イヤリングの重さを7グラムに抑えるようにデザインされている。
「最近では、スマートフォンを長く使うようになった実態がある一方で、ヘッドセットを複数台所有しているという兆候も見られています。さらに、コロナ渦でよりヘッドセットの開発が進んだことからも、ヘッドセットの市場は拡大してると言えます。」とペリアーヌ氏が語るように、昨年パンデミックで創業・研究開発にあたり、部品のサプライヤーとの連携には苦戦したというものの、新たな兆候の後押しもあったそうだ。さらに、ミュンヘンでのロックダウンがそれほど厳しくなかったことも相まって、「製品に対するアプローチをよりローカルに密着したものにしなければならない」と製品そのものへの考え方の変化もあったそうだ。そのため現在の製品は「非常にヨーロッパ的な製品」であるといい、例えばチームが行なった調査でヨーロッパでの平均通話時間は1日に1時間程度という実態から、それを十分に叶えるべく、音楽や通話の用途でのバッテリーの持続時間を3時間半以上としている。
経験豊富なメンバーで構成されたチーム
オーディオイヤリングに搭載されているオーディオ技術「ディレクショナル・サウンド・テクノロジー(Directional Sound Technology)」は、特許を取得している。その仕組みは、「基本的には真珠の内側にあるスピーカーで音を発生させ、イヤリングを通して耳たぶから外耳道に直接音を出す」構造である。そのため、音漏れを防ぎながら耳たぶに装着することができ、会話や仕事をしながら音楽を聴くことができる。この他にも当社は、製品の製造に使用される電子機器の全体的な実装や、クリップの一体化など、多くの特許を取得している。開発中に直面した問題は数々あったというが、なかでも、オーディオの性能・バッテリーの持続時間・Bluetoothのアンテナの3つは解決しなければならない大きな問題であったという。例えばバッテリーは、「Bluetoothでの接続や音楽の再生は短い時間であれど、非常に大きなエネルギーを必要とするため、このエネルギーを十分供給できるバッテリーを見つけられるのか心配だった」そうだ。現状の製品に搭載されているバッテリーは、オーディオイヤリングを装着した状態で、スマートフォンと1日中接続を維持することが可能であり、先に述べたように音楽や通話の用途であれば3時間半以上の継続した使用が可能となっている。
Bluetoothアンテナの開発にあたっては、卓越したパフォーマンスを発揮しつつ製品に収まる小型であることがゴールに掲げられ、「競合他社であるAppleやSamsungの製品は、プラスチックでできていますが、私たちの製品はクリップ自体が金属であるため、アンテナとはコンビネーションが悪く、新しいものを発明する必要がありました」とペリアーヌ氏が語ったように、他の構成要素との組み合わせに当たって障壁が見られたという。しかし、既に開発初期段階からこれらの問題に直面する見通しはあり、その理由はNOVAのチームが「製品のゴールに焦点を当て、試行錯誤を行う熟したチームであった」ことに起因する。例えばペリアーノ氏は技術開発での経験が豊富であり、ポイ氏は補聴器業界でのPR・マーケティングの経歴があり、ゴーベール氏はラグジュアリーブランドの経験があるといったように、スタートアップとしては成熟したチームの構造が背景にある。そのため、コロナ渦での創業、さらに同時期の世界的な購買行動の変化があったにも関わらず、「このチームの構成は全てをスムーズに運ぶことができた」そうだ。
Kickstarterでの成果
本年春頃にクローズした、Kickstarterでの資金調達は当初の247%の10万3000ユーロの資金調達に成功し、「非常に上手くいき、多くの前向きなフィードバックを得た」という。さらに製品の特徴から、300人以上の支援者のうちの約8割は女性であったそうだ。
これに対しポイ氏は、「これまではKickstarterに参加しているのは男性が多く、女性はあまり参加していませんでした。なぜなら、Kickstarterの性質上、購入するためにお金を出してもらったあと、製品が届くまでに時間がかかるからです。特に今回は、私たちの製品が十分に資金を得られるのか分かりませんでした。しかし結果として、多くの女性にKickstarterのアカウント作成、購入までを促すことができ、NOVA H1への需要があることを実証してくれたように思います」と語っている。この資金調達を経て、現在は生産ラインを立ち上げ、支援者に商品を提供するとともに、ウェブストアでの販売も予定しているという。現段階ではヨーロッパを主軸とした展開になるそうだが、「日本はとても重要な市場だと捉えている」といい、ヨーロッパでの反応を踏まえ、よりグローバルな展開も構想したいとしている。「現在のように、マスクを着用しなければならず、大振りなイヤリングや口紅をつけることが叶わない状況で、私たちのオーディオイヤリングが少しでも喜びや楽さをもたらすことができればと思っています」
最後に、このようなメッセージを残してくれた。
Laurence Gaubert, NOVA CEO
「ヒアラブルの世界を変える」というビジョンのもと、NOVAはイヤホンの技術を日常的な女性のアクセサリーに組み込むことに成功しました。ジュエリーとハイテクのシームレスな融合により、音楽と電話のための永遠のイヤリングという、他に類を見ない製品が生まれました。
Vlad Perianu, NOVA Co-Founder & CTO
NOVAは、Audio Earringsを耳たぶに装着することで、ヒアラブルの新しいカテゴリーであるアウトオブイヤー型のイヤホンを開発しました。耳たぶから出力された音を直接外耳道に送り込むことで、音漏れを防ぎ、会話や音楽のプライバシーを守ることができる「ディレクショナル・サウンド」という技術を特許化することで、この問題を解決しました。
Text by Hanako Hirata
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