日頃、ファッションアイテムを選ぶ際に、「襟」を見比べたことはありますか?「襟」と言えば、フォーマルな装いに欠かせないパーツであり、貴族たちが正装でプレーしたことが由来とされるゴルフでの襟付きマナーや、気を引き締める意味で「襟を正す」と表現することから、どちらかと言うとキッチリした印象が強いかもしれません。ですが「襟」には微妙な違いで100種類以上もデザインがあると言われており、カジュアルに着こなせるものも多くあります。「襟」のありなし、またはデザインで、コーディネートはずいぶん変わりますよね。そこで今回は、なぜそんなにも多くの種類が存在するのかをシャツの起源から掘り下げるほか、トップスを選ぶ際に役立つ「襟」の種類や、「襟」と「衿」の違い、トレンドアイテムであるセーラーカラーについても紹介していきます。
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襟の定義とは?
「襟」とは、衣服の首まわりを取り囲む部分の名称です。「襟」は全体部分を差す「襟羽(えりはね)」と、襟の立っている部分の「台襟(だいえり)」でできており、襟羽の長さや開く角度によって様々な形が存在します。また、ウエスタン・シャツの襟先に「カラー・チップ」という三角形の金属製のアクセサリーが付いているのを見たことはありませんか?あの襟の先の部分は「襟先(えりさき)」と呼ばれています。さらにオープンカラーにおいては、襟の縫い合わせのラインを境に、カラー(上襟)、ラペル(下襟)と区別します。ただし日本では、例えばVネックやUネックのようにネックライン(首回りの開き)も「襟」と表現することがあるため、幅広い意味を持っているのも特徴です。
襟と衿の違い
えりには、「襟」と「衿」の漢字が存在します。どうちらも、衣服の首まわりを取り囲む部分を表すものですが、使い方にルールはあるのでしょうか?実はこの2種類の漢字、「襟」は常用漢字、「衿」は非常用漢字となっています。文章に用いる時は、「襟」を使用するのが良さそうですが、洋服の首まわりの際には「襟」、着物などの和服の場合は「衿」が使用されることが多いのも事実です。
シャツの起源から探る襟の成り立ち
「襟」のある衣服で代表的なものはシャツです。このシャツの始まりから「襟」の成り立ちを追うことができます。シャツは古代ローマで着用されていたチュニックが起源だと言われています。そしてヨーロッパ中世、15~16世紀には折り返った襟を総称するラバ(Rabat)が、16~17世紀にはエリマキトカゲのように首に一周、ひだ襟のついたラフ(raff)が登場し、上流階級の間で流行しました。そして19世紀になると華やかな装飾性は薄くなり、より簡素化されていきます。そして、立ち襟から現在のような折り襟の原型が生まれたことで、「襟」に様々なデザインが誕生します。さらに20世紀に入ると、襟の欠かせないシャツの多様化がさらに加速し、そのパーツである「襟」の種類も増えていきました。
代表的な襟の種類
19世紀に現在の主流である折り襟の原型が誕生したことで多様な襟の形状が生まれましたが、それは現在のデザインにも取り入れられています。デザインによって季節感を演出できたり、顔に近いからこそ大きく印象が変わるなど、襟はオシャレの上でも大事な部分ですよね。たくさんの種類から、代表的なものをいくつか紹介していきます。
【レギュラー(スタンダード)カラー】
一番シンプルな、基準となる定番の形。ベーシックなデザインなので、フォーマルにもラフにも合わせることができます。レギュラーよりも小ぶりなものはショートポイントカラー(スモールカラー)と呼ばれます。
【オープンカラー】
ラペル部分が身頃から続く、開き型となった襟の総称で、開襟(かいきん)とも呼ばれています。アロハシャツやボウリングシャツのように襟元があいているデザインのため、どちらかといえばカジュアルで夏の印象のあるデザインと言えます。
【ホリゾンタルカラー】
ホリゾンタル=水平という意味で、襟先が180度近くまで開いているためにこの名称が付きました。レギュラーカラーの剣先を斜めに切り離したような形状からカッタウェイとも呼ばれています。
【ショールカラー】
ショールを首からかけたように見えることから、ショール=肩掛けの名前が付きました。丸みのある長い形がへちまに似ていることから、ヘチマカラーとも呼ばれます。曲線的な1枚襟が柔らかい印象を与えます。
【スキッパーカラー】
第1ボタンに当たる部分があいているVネックに襟を付けたような襟元で、顔回りがスッキリと見え、アクティブな印象になるのが特徴です。ポロカラーのボタンのないデザインのものも、スキッパーカラーに分類されることがあります。
【スタンドカラー】
折り返しがなく、首に沿って立ち上がった襟のこと。学ランの襟のような形状と言えばイメージしやすいでしょうか。同じような形で首から離れて立っている襟は、スタンドアウェーカラーに分類されます。
トレンドはセーラーカラー
セーラー服でお馴染みの形状「セーラーカラー」。元々は水平、船乗り(sailor)の制服で、船上でも風をよけることができ、襟を耳の後ろに立てることで声が聞こえやすいように、背中側に落ちた部分がスクエア型になったと言われています。最近はボリュームのあるトップスがトレンドとなっていますが、付け襟に続くビッグ襟ブームの流れもあり、このセーラーカラーが、昨年の秋冬からじわじわと人気を集めています。1枚でも存在感があるうえ小顔効果が期待でき、幼くなりすぎないようフロントをスッキリとしたVネックにするなどのアイデアで、様々なブランドから春夏の注目アイテムとしてラインナップされています。話題のセーラーカラーのように、時代に合わせて少しずつデザインが変化していることが、襟に多くの種類が存在する理由かもしれません。
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