コロナ下も健闘するセレクトショップに共通した特徴に、これまで培ったネットワークや目利き力を生かして新たなブランドの提案をしている点が挙げられる。ブランドをよく知り、その魅力を的確に伝えることが最優先で、頻繁に加えているわけではない。新たなブランドは新規客を呼ぶが、そのブランドだけでなく、店が持つ様々な魅力を楽しんでもらうことも重視し成長を続けている。
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ルーム・メンズ 新興ブランドがフック
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343(大阪市、南裕介代表)が運営するセレクトショップ「ルーム・メンズ」大阪は、ジャンルレスで独自性のある品揃えを強みにしている。新しいブランドを定期的に加え、新規客の取り込み、既存顧客へ新鮮な感覚を提供することに手応えを見せている。
ルームは09年に最初の店(現メンズ店)を開き、現在は大阪に「ルーム・ウイメンズ」、京都にメンズ・レディスを揃えたルームも展開している。ルーム・メンズは、「ポリプロイド」「エンダースキーマ」などを扱う一方で、テイストの異なる「フィンガリン」をミックスしたり、レディスブランドの大きいサイズを提案するなど、「面白さやギャップのある」店作りを得意とする。
この間「ダイリク」や「アポクリファ」などを加えたり、21~22年秋冬から「アモク」の扱いを開始するなど、ブランドも増やしているが、「新しいブランドをいつも探している訳ではない。人のつながりで知り合うなど、自然な流れからが多い」。作り手の人柄や雰囲気を知ったうえで、ブランドを扱うことも大事にし続けている。
店頭で特に人気なのがダイリクで、「予想以上の起爆剤になっている」。商品によっては発売日に並ぶ人がいて即完売する勢いだ。こうした商品の目的買いで新規来店した若い客に対して、「他の商品やブランドにも視野を広げてもらうアプローチも欠かさない。新しい発見という〝リアル店舗ならでは〟の醍醐(だいご)味を楽しんでもらう」ことに注力している。
この結果、コストパフォーマンスの高い「ヘルス」は若年層からも好評だ。一方で、今秋冬物でダイリクに大きいサイズを別注するなど、既存顧客に新鮮な提案も繰り出している。
新たに若年層の取り込みが進んでからは、「グループで来店するお客様が増えた。SNSを通じて新しい形のコミュニティーも見られる」。SNSをきっかけに来店する人が増えた中、「探すという実店舗独特の感覚を味わってもらい、驚きを提供することを強く意識していきたい」と考える。
アイスリー 開業から共に成長・進化
開業して11年目となるメンズセレクトショップ「アイスリー」(運営リコラージュ)は当初から扱ってきたデザイナーブランドが圧倒的な人気を誇る。店舗を構える千葉県柏市を中心に、周辺の大学生など20代男性からの支持が高い。現在、同店の中核をなすブランドは、オーナーの田中庸介氏の開業とデビューが近く、同世代で感性を共有するデザイナーがほとんど。「当初は知る人ぞ知る新進のブランドだったが、一緒に成長・進化してきた」と振り返る。
独立前から扱ってきた「フミトガンリュウ」はもちろん、「サルバム」「ウジョ―」「ターク」など大御所ブランドの下で修業したデザイナーは、10年前から身近な存在だったが、今は海外まで活躍の場を広げた。「最近は若い世代の買い方も変化し、ハイブランド好きで一点豪華主義なところもあるため、この辺のブランドとの親和性が高い」と見ており、だから今は「これらのブランドを伸ばすのが大切。デザイナーブランドにファンが根付くにはある程度の期間が必要」と強調する。無理に新しいブランドを探す段階ではないという。
ただ、今春、同市内に開業したインポートとレディスを加えた2号店のために新規ブランドを導入した。今春夏デビューの「CFCL」が代表格だ。「バイイングの基準の一つにサステイナビリティ―(持続可能性)が加わったのは今までになかったこと。新しさを感じるとともに、本気度の違いに驚いた」と田中代表。既存のデザイナーブランドでもサステイナブルを切り口にリブランディングしているところが多く、「世界で勝負するブランドにはサステイナブルが不可欠になった」と考える。
開業当初は知る人ぞ知る新興だった「ハトラ」や「ドゥルカマラ」も10年ほど扱っている。長く付き合えているブランドのほとんどが作り手であるデザイナー自身が経営者で自ら展示会に立ち、自分の商品をしっかり説明できる熱量を維持している。こうした出会いとつながりこそが次世代ブランドの発掘には必要なのだろう。
アマノジャク 新規の魅力を適切に伝える
国内外のブランドをジャンルレスに揃えるセレクトショップ「アマノジャク」は、東京・北千住でメンズ店、同・千駄木でメンズ・レディス店を運営している。18年8月の開業以来、積極的に取り扱いブランド数を拡大してきた。21年春夏や21~22年秋冬も新規ブランドを仕入れたが、「最近は意欲的に開拓しているわけではない。国内での認知度は低くとも、個性が光るブランドがあれば仕入れさせてもらう」(小山逸生ディレクター)というスタンスだ。
「ブランドの一部分を切り取り、編集するのがセレクトショップ。そのうえでブランドの良い部分、自店らしさを伝えることに重きを置いている」という。「メゾン・マルジェラ」「マルニ」など著名なブランドも扱うものの、「国内でイメージが定着していないブランドの方がお客様に適切な魅力を届けやすい」と考える。そのため、新規は海外から探すことが多い。
この間は、英国の「エドワード・クラッチリー」、豪州の「ソング・フォー・ザ・ミュート」などを新たに仕入れた。ソング・フォー・ザ・ミュートは6月末頃に入荷・販売したばかりだが、「初動は良く、今後仕入れを増やしていきたい」という。
新規ブランドを自店で育成していく上では、SNSやブログなど「来店前のお客様が最初に触れる情報を大切にしている」。ブランドのプロフィールなど表面的な情報を店頭の接客で100%伝えきるのは難しい。オンラインで魅力的な一次情報を発信しておくことで、店で接客した際の反応も変わってくる。
自店とブランドの関係は、「互いに新たな客を呼び込めること」を理想としている。店として、「初めてこのブランドを買いました」という客を一人でも多く増やすことを目指している。
(繊研新聞本紙21年7月15日付)
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