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「必要じゃないものを買うときの後押しを」ウィズコロナ時代の販売員を考える

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この数年で大きく変革期を迎えているファッション業界。その変革のスピードはこのコロナ禍でさらに加速している。そんな変化に追われるファッション業界で長年従事してきた人は、どう時代に寄り添いビジネスを伸ばしているのだろうか? 今回は、エルメスなど名だたる外資系企業でキャリアを積み、名門シューズブランド ジョンロブ(JOHN LOBB)の社長として日本市場の発展に尽力してこられた株式会社ジョンロブジャパン代表取締役社長 松田智沖さんと、数々の外資系ラグジュアリーブランドを経て、現在エーバルーンコンサルティングのトップエージェントとして活躍する五十野正人さんにインタビュー。お二人の出会いから、withコロナ時代に求められる人材についてお話を伺いました。

株式会社ジョンロブジャパン代表取締役社長
松田 智沖さん(写真右)
2005年より株式会社ジョンロブジャパン代表取締役社長に就任。150年以上の歴史を誇る名門シューズブランド、ジョンロブを日本において牽引する。

株式会社エーバルーンコンサルティング シニアヴァイスプレジデント
五十野 正人さん(写真左)
外資系ラグジュアリーブランドにてマネジメント職を経験。2011年にエーバルーンコンサルティング入社。大阪オフィスに在籍し、自らのネットワークを活かし、全国のショップ系求人を担当する。

―お二人の関係は、五十野さんがジョン ロブの面接を受けたときに遡るそうですね。

五十野さん(以下、敬称略): 大学を卒業してセレクトショップで働いた後、グッチに入社して5年ほど働いたのですが、紳士靴の担当になったことをきっかけにかなり靴に興味を持つようになり、靴のアトリエに自主的に通うなどしていました。そんなタイミングに憧れのジョンロブが日本でオープンすることを知って、ぜひ働きたいと応募したんです。当時、大阪のエルメスのオフィスで今と同じように大汗をかきながら(笑)、松田社長とお会いしたことを覚えています。ものすごく緊張していて何を話したか思い出せないくらいだったのですが、無事に入社する機会をいただけて、働くことになりました。僕がいたのは2年ほどでしたが、その後のジルサンダーを経てエーバルーンコンサルティングに入社し、10年が経つ今もこうしてつながっていただいていることは有り難いですね。

松田さん(以下、敬称略): もうだいぶ前のことになりますが、今まで採用した社員のことは皆覚えていますので、五十野さんを面接したことも忘れていません。ああ、汗かいていたなと(笑)、当時の光景を思い出しますね。辞めた社員とこうして関係が続くことはそうそうないことですが、ヘッドハンターという彼の仕事柄、長くお付き合いしていますね。もちろん仕事だけじゃなく、彼の誠実なところが魅力でもありますが。

五十野:当時、グッチからジョンロブに入社したときに組織が非常にコンパクトで驚いたんですよね。社長がこんなにも近く、話ができる存在ということにとてもびっくりしましたし、僕がまだ入社して日が浅いにも関わらず、社長直々に「西日本のビスポーク担当になったら?」と提案してもらえたことは嬉しかったです。これはほかのラグジュアリーブランドではなかなかないことですよね。ジョンロブに入って改めて自分の接客でものを売るという大変さを感じ、自分の販売力のなさを実感していたころだったので、モチベーションになりとても有り難かったですね。

松田 智沖さん
松田 智沖さん

ージョンロブの魅力についてもお聞きしたいです。松田社長はなぜジョンロブへ?

松田:長年ラグジュアリーブランドで従事していますが、実は販売職は未経験でずっと営業職の立場でした。ファッション業界の最初のキャリアはゼニアで、その後グッチで働き、そこからエルメスの営業部長を経てジョンロブの社長に就任しました。社長就任のきっかけはエルメス時代にパリに出張したときに、当時の社長と専務に誘われたインターナショナルミーティングで、それがちょうどジョンロブジャパンをつくるための会議だったんです。社長をどうするかということをその後のランチで話していたので「僕がやりたい」と言って最初はあっけなく断られました。そこからほかの人を探すことになっていたのですが、その後も「僕がやりたいです、本気です」と何度も熱意を伝えて社長職に就くことになりました。そこから16年が経ちましたね。

五十野:松田社長にその熱意が生まれるほど、惹きつけるものが多いブランドですよね。ジョンロブのシューズはすごくシンプルなのですが、販売をしていても“これ以上”というものがない感覚なんです。これまでいろいろなブランドで働いてきましたが、そのときにはなかった感覚でしたし、“これ以上ない絶対的な自信”を持つことができたのはジョンロブが最初で最後です。さらにその自信にお客様もしっかりと応えてくれる。ジョンロブのお客様はその価値に対して「高い」と言わず、むしろ何足も買っていかれる。そういう不思議な環境も楽しかったですね。知れば知るほど職人のこだわりや革のこだわりなどの素晴らしい品質を知ることができ、それに加えて自分のことを育ててくれた松田社長をはじめ、ジョンロブを大好きな先輩たちがいたことも大きな魅力でした。

五十野 正人さん
五十野 正人さん

松田:五十野さんが云われたとおり、ジョンロブにいらっしゃるお客様は本当に素晴らしいんです。それもブランドの魅力につながっていると思います。また現在、日本での直営店が6店舗、ホールセールも順調に広がりを見せていますが、ここまで日本市場で続けられてきたのは社員の努力ももちろんですが、本国とのリレーションシップが良いことも大きいです。皆でいいものをつくっていこうというファミリー的な感覚で仕事ができる環境は外資系企業には少ないかもしれませんが、ジョン ロブにはあります。そして歴史のあるブランドでありながらコンテンポラリーな空気感で時代にあったものを先進的につくっていく。そういった姿勢もブランドの価値を高めている要因だと感じます。

―コロナの影響でどのような変化を感じますか?

松田:やはりビジネスにおいては厳しいですが、そのなかで我々は健闘しているほうだと自負しています。コロナによってテクノロジーが浸透し、消費者の価値感が変わったことで、いろいろなことの変化が早まりましたが、私は基本の進むべき方向はコロナ前と変わっていないと感じています。僕らが扱っているような高額のシューズであっても、ECで購入されるお客様が以前より増えていることも事実で、このような変化によって、これまで「実店舗が絶対だ」という確信をもってやってきたものが揺らいでいるのも事実です。これまでシューズはお店じゃないと、という固定概念がありましたが、それは自分たちが過信しているだけで、実際はそうじゃないかもしれない状況になっています。そういった変化のなかで、実店舗のあり方、お客様が実店舗に何を望んでいるのか?もう一度立ち戻って考える必要があると思います。

五十野:これからは実店舗に行く価値を感じさせられるような販売員が必要になってくる時代ですよね。ジョンロブは実際にお店にお越しいただいて、お客様の足を触りながらお悩みを伺うカウンセリング接客でこれまで信頼関係を築いてきましたから、ECよりお店のほうが満足度はわかりやすく高いはずです。ですが、そういったなかで今オンラインビジネスが伸びているのは、お店に行くこと以上にオンラインで簡単に購入できる便利さが勝っているからかもしれませんよね。僕自身が長年販売員として働いてきて、店舗の重要性というのを肌で感じてきましたから、そういう販売員がいられる場所=実店舗はこれからも守っていきたいと思います。

松田:販売員の価値というのは自分たちでつくっていくものでもあります。だからこそ、店舗の存在価値も販売員たちがつくっていかなければ厳しい時代になってくると思います。今はモノ(商品)だけにお客様を満足させるという役割を任せてしまっているところがあるかもしれません。いいものがあふれている世の中だからこそ、ものに対して販売員がどれだけ付加価値をつけられるかが重要視されます。お客様がなにを望んでいるか、それを理解して提供していかなければならない。今変わらないと実店舗の意味がなくなる可能性もありますし、販売員もより淘汰されていくと思います。

―今の時代に必要とされる販売員とは?

松田:お客様に寄り添える人、相手に興味をもてる人が必要とされると思います。目の前の人ーそれはお客様でも、スタッフでも、相手に興味をもてるかどうか。その感覚というのはどちらかというと、もってうまれたものも大きいかもしれないですが、目の前の人に興味がある販売員は「この靴があの人に似合うと思う」といつも本人が楽しんでいます。ファッション業界には、ものも好きだけど、自分が一番好きという人も多いと思うんです。けど、それ以上に好きになるべきは相手で、自分よりも目の前の相手に興味をもてるひとじゃないかと。

五十野:優秀な販売員というのは、どこにいっても売れますよね。高価なシューズが売れる人は、家でも車でも売ることができる。今は特に、ECなどさまざまなチャネルがあるなかで、お客様が実店舗を選び、さらにそのなかで何人ものスタッフから選ばれるというのは、その人の魅力に大きく左右されます。ものに寄り添うのはもちろんですが、しっかり目の前の相手をみている販売員というのは、全員に同じ言葉で話さないですよね。きちんとそのお客様に響く言葉を選んで話している。結局そういう人にお客様がついていると思います。

―そのような販売員しか生き残れなくなっていくのでしょうか?

松田:消費者の選ぶ基準がものだけじゃなくなってくると、その人に会いたいと思ってきてくれるかどうかが重要になりますよね。ジョンロブではなるべくそういう人を採用するようにしています。昔はよく“靴好きな人”が集まっていたんですが、でもそういう人って人を見ることよりも、自分の知識を話したいという欲に走ってしまう人が多くて。なので、ものが好きという以上に人が好き、人に興味がある、という人のほうがお客様の心を掴むのではないでしょうか。その一方で、最近自分が実際に買い物にいったときに感じたのですが、取り扱っている商品のことを全然知らない販売員が多いということがよくある。ものすごく簡単な質問でも「少々お待ち下さい」って言われてしまうことが多くて。売れる人はどこでも売れるがゆえに、ものに対して愛着がないのかなという心配もあるんですよね。ものと人への愛着、そのバランスは重要です。

五十野:転職活動している人の変化としては、“ものありきで考えている人”が減少傾向にあるのは少し残念に思いますね。自分もファッションが好きで夢をもってこの業界に飛び込んだタイプですが、今は会社を選ぶ時に潰れなさそうな会社、安定を基準に選ぶ人が増えたように思います。それはコロナ禍という影響もあるかもしれないですが、好きという気持ちや情熱のプライオリティが下がっているような傾向を感じます。「販売が楽しい!」とシンプルに感じられる人も減ったのかもしれませんが、それは心から販売を楽しんでいる姿を上司や先輩が見せられてない可能性があります。でも、僕のジョンロブ時代のように、先輩が楽しんで働いている姿が見られる環境で働いている人は心から販売職を楽しめている。面白い例でいうと、某外資系ラグジュアリーブランドでトップセールスの販売員の人がいて、販売一筋20年というキャリアから会社からマネジメント職を勧められていたんですが、「僕が現場にいないのは会社にメリットがない」と会社に直訴して、今は1000万を超える年収で現場で活躍しています。その人もファッションが大好きで、お客様第一すぎるくらい第一に考えている人なんですよね。

松田:本当にこれがやりたいという熱を感じられる人が少ないかもしれませんね。自分が買い物にいってもサラッとしている販売員の方は多いと思いますし、実際にもっと押してほしいな、提案してくれたら買うのに、と思うこともあるほどです。そうなると人って“今必要なものしか”買わなくなるんですよね。人が必要じゃないものを買うときって、販売員の方の提案によるものが大半ですし、実際に買ってみると多くの発見も得られるのですが、そういった経験をする機会が減っているかもしれませんね。

―最後に、面接でもっとも重視することを教えてください。

松田:採用する際に一般的に求めることとして、よくコミュニケーション能力・主体性・チャレンジ精神など挙げられますが、私が重視するのは“リスペクト”です。ものや人に対してリスペクトできるかどうかを面接で見抜くのは難しいですが、実際にリスペクトを持てるかどうかは、目の前の人に対しても同じようにリスペクトできるかどうかで分かります。テクノロジーの進化によってそうなってきているのかもしれませんが、今はどちらかというと相手よりも自分が主体の人が増えていると思います。相手がどうよりも、自分がどうかという。それももちろん大事なことですが、人を尊重することは販売をする上ではとても重要です。そういう人が周りともうまくやれるし、他の人の力も得られて、成功すると思います。

五十野:リスペクトがあれば、ほかの人からもいろいろなことを自然に吸収できるので、自身の成長にもつながりますよね。コロナ禍の厳しいなかでも、目の前のお客様のことを考えて成長できるかどうか。それに尽きると思います。ファッション業界に限りませんが、新しいことに適応できない人はこれから厳しくなってくるのではないでしょうか。変化というのは絶対的にあるものなので、その変化に対応し自身が成長できるかどうか、考えられる人が求められていくと思います。

JOHN LOBB
ジョンロブは、ビスポーク発祥の150年以上続くブーツメーカーです。

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