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突撃洋服店の安田美仁子に聞く「服で広がる可能性」【後編】

突撃洋服店の安田美仁子に聞く「服で広がる可能性」【後編】

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これまで「他人にどう見られるか」を重視する人が多いと言われていた人々のファッション観は、コロナ禍で大きく変化しました。人と会わず自宅で過ごすことが多くなったことで「自分がどう感じるか」を重要視するようになったと言われています。「家で快適に過ごすためいかに着心地の良い服を選ぶか」だけでなく「制限の多い日々の中で自分の心を明るするために何を着るか」という基準で服を選ぶ人が増えたことで、今後はさらに性別や年齢に捕らわれない本当の意味での「自分らしさ」を求めて服を選ぶ人が増えると予想されています。そんな流れを先取りするかのように、時代・ジャンル・カテゴリー・ジェンダーのいずれにも捕らわれることのないアイテムが並ぶ1985年にオープンした『突撃洋服店』。セレクトされている古着表現作家・安田美仁子さんに、「自分軸」での服の選び方、そこから広がる可能性についてお話しを伺います。後編は接客を“楽しむ”ということ、実店舗を持たないブランドづくりについてお話し頂きました。

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アウェーでも、自分の感性に対して素直でいること

――1985年に突撃洋服店をスタートされて36年目。これだけ長く続いている理由は何だと思われますか?

自分の感性に対して素直でいることだと思います。80年代の終わり頃にアメカジが大流行して、LEVI’Sのオールドデニムの価格が高騰したんです。世界中の人たちがアメリカにオールドデニムを探しに行っていました。そしたらどうなるかっていうと、取り合いになるんですよね。その現場を見て、なんだかスーッと冷めちゃって(笑)。せっかくの古着なのに、その時流行しているオールドデニムやスカジャン以外は価値がないみたいな雰囲気があったんです。みんなが取り合っているオールドデニムの隣に可愛いブラウスやコートがあるのに、誰も見向きもしない。

――デザイナーズブランドブームで感じた違和感を、古着でも感じられたんですね。

私も90年代にはそういうニーズに合わせたお店を何軒もやっていた時もありました。一応全部経験はしてみたいタイプなので(笑)。2000年代にChampionのスウェットがブームになった時もコンテナ単位で大量輸入して卸売りをしましたし。ビジネスとしてニーズに合わせたお店と、自分の感性のままセレクトをする今の突撃洋服店のようなお店を両立できるんじゃないかと思ったんです。でも、私は組織を作るっていうことが向いていなくて…。今は100着見てたった1着を選ぶくらい感性重視のセレクトをしています。これを古着でやり続けるというのはものすごくアウェーなことなんですよ。どこに行ってもアウェーです(笑)。すごく大変ですけど、そのたった1着を選ぶ時に「どうしてこれを選ぶんだろう」とか沢山のことを考えるんですよね。そうして自分自身と向き合うことで、アウェーの中でも自分のマインドを整えて、保っていられるのかもしれません。

毎日即興のファッションショーをやっているようなもの

――実店舗を終了され、各地でポップアップを積極的に行われています。ポップアップはアウェーという意味ではいかがですか?

アウェーではありますが、お声をかけてくださる百貨店の方もアウェーの方なんです(笑)。「あの人変わってるよね」と言われるような方はどんな企業にもいらっしゃって、そして意外なことに重要なポジションにつかれていることが多いんですよね。恐らく私と同じような悔しい想いをされて、それでも何か大切な物を貫いてこられた方。不思議とそういう方と出会う機会に恵まれます。「周りのことは気にせず、安田さんの好きにやってください」と言って頂いたので、百貨店のど真ん中でゲリラファッションショーをしたこともありました。準備などは一切なしで、即興でコーディネートしてすぐにモデルが歩き出す、という突発的なもの。接客もある種の即興なんですよね。何かをおすすめしようなんて思っていなくて、お客様が何かを手に取られて、そこから何かが始まっていく。突撃洋服店では毎日即興のファッションショーをやっているようなもの。それがすごく楽しいんです。

――緊張感すらも楽しまれているんですね。

もちろん接客をしていて「もうちょっと伝え方を変えた方がよかったかな」とか色々な反省はありますが、そういうのを含めて楽しいですね。「楽しい」ってなにもポジティブな時だけに使う言葉じゃないと思っていて。楽しいことしか起こらない映画って、なんだかつまらないですよね。もっとこうしたら良かった、と日々反省を繰り返すことで自分自身をアップデートするんです。ポップアップでは突撃洋服店を見に来たわけではないお客様がたまたま足を運んでくださったり、予期せぬ出会いが沢山あります。実店舗とはまた違った物語の始まり方が面白いんですよ。

突撃洋服店は本当に“突撃する洋服店”へ

――今後また実店舗を持たれるご予定はありますか?

今はまだないですね。実店舗の時は、大きな駅の、駅から少し離れた場所にこだわっていました。街の雑然とした空間を抜けて、ふっと一人になってお店まで歩くという行為が、素の自分になっていくという大切なプロセスだと思っていて。「この道であってる?」ってちょっと不安になったりするのも含めて、実店舗ならではの魅力がありました。今は全国各地で魅せ方を変えながらできるポップアップの楽しさに夢中になっています。ポップアップのビジュアルやポスターはできるだけ毎回変えるようにしているので、実店舗の3倍くらいは大変ですけど(笑)。自分からお客様に会いにいけるポップアップは楽しいです。突撃洋服店は本当に“突撃する洋服店”になりました!

――最近では本も出版されましたが、今後の展望は?

実は『古着は、対話する。』は、突撃洋服店のお客様と一緒に作り上げた本なんです。学生時代から通ってくださっていた方が編集者になられて、「初めて編集する本を是非突撃洋服店で!」と言ってくださったことで実現しました。デザイナーもコピーライターの方も全員お客様。そんな特別な1冊がきっかけで、長崎でトークイベントをさせて頂くことになりました。結婚、出産、離婚、バイヤーとしての違和感、服を通して関わることの楽しさ…自分が経験した全てが今に繋がっているので、そうしたお話をすることで誰かにとっての何かのきっかけになれたらいいなと思っています。渋谷店があった頃、服屋で働くことに憧れてやってくる若い子を沢山見てきました。でも、皆2年くらいで服を嫌いになって辞めてしまうんです。お店ばかりが増えて行って、売り手や作り手に対して服の楽しさや面白さを感じてもらえる場所が少ない。売れるものばかりを追求して、どんどん疲弊していってしまうんですよね。そんな様子を見ているとやっぱり切なくて。私はそういう人たちに対しても服の可能性を伝える役目でいたいと思っています。

安田 美仁子 やすだ・みにこ

渋谷生まれ、神戸育ち。横浜在住。
1985年より「突撃洋服店」を開始。
買い付けから店舗のディレクションまで一貫して行う。
2020年4月に神戸店を、2021年4月に渋谷店を終了し、現在はポップアップのみで展開中。
近年は映画やドラマ、アーティストへの衣装提供も行い、
百貨店でのポップアップや様々な場所でのファッションショーなど、
古着を通して新たな価値観や可能性を生み出す展開を行っている。
http://www.totsugekiyofukuten.com/

TEXT:鷲野恭子(ヴエロ)
PHOTO:大久保啓二

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