ファッション業界で働く・目指す人にとってファッションデザイナーは憧れの存在。有名ブランドのデザイナーともなれば雲の上の人のように感じるかもしれません。しかし、全てのデザイナーが、泉が湧き出るようにデザイン画を思いつくわけではなく、我々と同じように頭を抱えて悩んだり、評価されて両手を挙げて喜んだりと、人間らしい一面を持っていることでしょう。そこで今回はデザイナーの素顔が見られるおすすめのファッション映画を紹介します。
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CHANEL
Brand features
誰もが知っているであろう世界的有名ブランド・CHANEL。CHANELと聞くとアイテムよりも先にアイコニックなロゴを思い浮かべる方も多いかもしれませんね。コルセットでウエストを締め付けたり引きずるような長いペチコートが当たり前だった1910年代のパリで、CHANELは女性が動きやすいようにとジャージー素材の女性服を発表しました。また、当時は喪服にしか使われない色だった黒を使ってオールブラックの「リトル・ブラック・ドレス」を発表すると、女性を優雅で美しく見せてくれると大きな話題に。今でこそ黒はモードで洗練されたイメージのある色ですが、そのきっかけを作ったのはCHANELだと言われています。CHANELは常識を覆し、女性に自由を与えた革命的なブランドなのです。
Movie
『ココ・アヴァン・シャネル』
映画『ココ・アヴァン・シャネル』は、その名の通り「ココ・シャネルがCHANELになるまで」を描いた作品。デザイナーであるココ・シャネルはフランスに生まれ、幼くして母を亡くし、父に捨てられて修道院で育ちました。修道院で6年間裁縫を習っていたため、施設を出た後はお針子として働きながらキャバレーで歌い、生計を立てていました。本名はガブリエル・ボヌール・シャネルですが、キャバレーで「ココ」という愛称で呼ばれており、生涯「ココ・シャネル」と名乗ることになります。
シャネルはファッションを通して女性に自由を与えた、古い価値観に捕らわれない自立した女性ですが、CHANELの成功を語る上で恋愛は欠かせません。キャバレーの客の愛人になり、相手の邸宅に転がり込んだシャネルは上流階級の交流の場に出る機会を得たことで上質な価値観や知性を身に着けました。やがて事業家の愛人になると、出資を受けて自分の店を持ちます。恋多きシャネルですが、その恋にはいつも障害があり、彼女は誰のものにもなりませんでした。
映画では当時の女性を窮屈さから解放したと言われるCHANELの斬新なデザインを楽しめるだけでなく、孤児として過ごした苦しい幼少期から生まれたココ・シャネルの反骨精神を感じることができます。
Maison Margiela
Brand features
Maison Margielaといえばロゴよりもブランドタグが有名という少し珍しいブランドです。アイテムには必ず4隅に止められた通称「4つ糸」がついています。このいとも簡単に取れてしまいそうなタグには、ブランドの名前ではなく服そのものの良さで選んでほしいという想いが込められており、4つ糸を外すか外さないかという議論はファンにとって永遠のテーマです。Maison Margielaは「クラシック」と「再構築」が特徴。個性的なイメージのあるブランドですが、実はジャケットやニット、スラックスなどベースはクラシックでキレイ目なアイテムばかり。そこにペイント加工や縫い目をあえて表に出す縫製などMaison Margielaらしさを加えることで唯一無二の世界観を生み出しているのです。ブランドを代表するシューズシリーズ「Tabi」も、基本的にはシルエットの美しいシンプルなデザインのブーツですが、トゥを日本の足袋のように二股にすることで世界中のファンを虜にする名作となりました。
Movie
『We Margiela マルジェラと私たち』
『We Margiela マルジェラと私たち』はマルタン・マルジェラの初となるドキュメンタリー。これまでメディアに一切顔出しをしてこなかったマルジェラの作品ということで公開当時は大きな注目を集めました。Maison Martin Margiela(現Maison Margiela)はその歴史を通して「匿名性」というキーワードが欠かせないブランド。前述した4つ糸タグはその最たるものですが、他にもスタッフがユニフォームとして着用している白衣があります。それぞれの役職を不明確にすることで階級を拒絶すると同時に、職人やクチュリエ(仕立て人)への敬意を表しているのです。
マルジェラはメンバーたちとの記念撮影にも決して写ったことがありません。映画本編でもマルジェラ本人は一切顔を出すことなく書面のみでインタビューに答えており、全てに「I(私は)」ではなく「We(私たちは)」と複数形で答えているのが印象的。Maison Martin Margiela(現Maison Margiela)がなぜここまで熱狂的なファンを抱えているのか、存在しているのに見ることができないマルタン・マルジェラのミステリアスな魅力が存分に感じられる作品です。
Alexander McQueen
Brand features
Alexander McQueenはビョークやレディー・ガガ、リアーナなど多くのアーティストに愛されているイギリスを代表するブランド。キャサリン妃のウエディングドレスを手掛けたことでも知られています。労働者階級出身ということもあり、パンクでアバンギャルドな反骨精神に溢れたデザインが多いのが特徴です。デザイナーのリー・アレキサンダー・マックイーンはロンドンの最高峰である仕立て屋で働いていたため、奇抜と言われるデザインも一流のテーラリングがしっかりと支えています。Alexander McQueenと言えばスカルモチーフが有名。今ではロックファッションなどで当たり前のように登場するスカルですが、Alexander McQueenのデザインが大きく影響していると言われています。
Movie
『マックイーン:モードの反逆児』
ファンはもちろん、アーティストなどの業界人からロイヤルファミリーまで多くの人に愛されたリー・アレキサンダー・マックイーンですが、なんと40歳という若さで自ら命を絶ってしまいます。『マックイーン:モードの反逆児』は、彼の鬼才と呼ぶに相応しいデザインを見せながら輝かしいキャリアの裏側にあった孤独と苦悩を描いた作品です。
彼は大のメディア嫌いだったため生前のインタビューなどはありませんが、彼と関係が深い人々の証言を元に彼の人生に迫ります。作品中には毎回と言っていいほど賛否両論湧き上がったコレクションの映像も多数収録。特に引き裂かれたレースやタータンチェックの服を身につけた女性モデルが苦悩の表情を浮かべながらふらふらとランウェイを歩く「Highland Rape」は、途中退席者が出たと言われるショーで、大バッシングを受けたにも関わらずその翌年に「エレガンス」を永遠のテーマとして掲げているGIVENCHYからデザイナーのポストにお声が掛かったという異例のコレクションとして必見です。
また、彼が亡くなる直前の2010年春夏のショーは、レディー・ガガが愛用していたことで有名な「アルマジロシューズ」が誕生したコレクション。しかし、この頃既に彼はドラッグに溺れ、大きな喪失感を抱えていました。『マックイーン:モードの反逆児』はリー・アレキサンダー・マックイーンの生きた証である素晴らしいコレクションの数々を辿りながら、彼の知られざる孤独と素顔を見ることができる作品です。
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