コロナ禍は追い風であって起業の理由ではないー1ヶ月で数百万円の売上を叩き出すコスメ自販機の勝機

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コロナ禍は追い風であって起業の理由ではないー1ヶ月で数百万円の売上を叩き出すコスメ自販機の勝機

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 飲料や食品の販売に限らない自動販売機の形が広がっている。中でも注目を集めているのは韓国コスメなどを販売する化粧品自販機だ。日本の化粧品自販機の先駆者であり、モニター付きのコスメ専用大型自動販売機を独自開発したプレノ(PRENO)は2019年からコスメを取り扱う自販機の展開を開始。いまや1日で10万円以上の売上を記録する機体もあるという。また、プレノは2021年に一粒真珠のネックレスを販売する自動販売機をミヤシタパークに設置し、1ヶ月で数百万円の売上を記録するなど話題を集めた。市場の広がりの背景には消費者のどのようなマインドがあったのか。プレノ代表取締役社長肥沼芳明氏に話を聞いた。

 プレノの躍進の裏には肥沼氏の経歴が深く関係している。肥沼氏は、ロンドンの大学を卒業後、現地のコンサルティング会社や投資会社に就職。帰国後に入社したリクルートでの社内コンペティションで優勝。社内起業を経て、動画メディアサイト「Cチャンネル」の海外役員を務めた。仕事がら海外生活が長かった肥沼氏は韓国や中国、アメリカなどでは既に一般的だった化粧品自販機が日本国内では流通しておらず、自動販売機にイノベーションが起こっていないことに着目。動画メディアで培ったハードウェアやウェブの知識、Cチャンネルで取り扱っていたコンテンツが女性向けであったことから造詣が深かった美容やコスメなどに精通しているという強みを活かし、2019年にプレノを創業した。

 同社が最初に注目を集めたのは起業から1年後の2020年。ラフォーレ原宿の施設内に「クリオ(CLIO)」「アピュー(A’PIEU)」「ラプコス(LAPCOS)」などを取り扱うコスメ自動販売機設置し、SNSを中心に話題を集めた。自動販売機という非接触型の購入体験と2020年という時代の組み合わせで「コロナ禍によって立ち上げられた新規事業」と解釈されることが多いが、創業当初は訪日外国人旅行者をターゲットにしたインバウンド事業として発足したと肥沼氏は説明する。現在も同社が取り扱う自動販売機の決算方法がクレジットカードとPayPayやアリペイなどのQRコード決済のみに限られているのはそのためだという。

 「コロナ禍により、外国人観光客が激減したことから、ターゲットを訪日外国人から国内に変えざるを得なくなった。つまり、コロナ禍は国内での市場拡大の追い風にはなったが、コロナ禍にビジネスチャンスを見出して起業したわけではない」(肥沼芳明)。

 また化粧品自販機の開発経緯には、肥沼氏自身が経験した百貨店における男性のコスメ購入のハードルの高さが色濃く反映されているという。

 「僕に限らず、店員さんと話をしている間に商品を購入したくなくなった経験がある人は少なからずいるはず。多様性が訴えられる世の中にはなったが、それでもまだ男性が百貨店のコスメ売り場に行って、ファンデーションのテクスチャーなどを確認しづらいのが現実。だからこそ容姿や性別に関わらず買い物をできる場を提供したかった」(肥沼芳明)。

 利用者からは「店頭のように店員から声をかけられない点が良い」という意見が多く寄せられ、自分のペースで買い物を楽しみたいというニーズが浮き彫りになった。実際に1時間以上自動販売機の前で検討をしてから購入に至ったユーザーも多くいるという。また渋谷スクランブルスクエアに設置した「ケイト(KATE)」の自販機では男性の利用者が思いの外多く、店舗には入りづらいという男性ユーザーのマインドや、デパコスのみならずドラッグストアコスメにも男性需要があることが判明した。

 複数の商品を1回の決済で完了できる同社の自販機は、ECサイトのような購入体験が特徴である一方でコスメのタッチアップをすることはできない。しかし肥沼氏は「コスメといえばタッチアップが必要不可欠とされてきたがそんなことはない」と、コロナ禍を境に消費者の感覚に変化があったと確信を持つ。実際に自動販売機のすぐそばにタッチアップブースを用意し、運営した事例もあったというが、タッチアップに時間が掛かることで回転率が下がり、むしろ売上は下がったそうだ。また、同じく化粧品自販機のデメリットともされていた「落下での商品提供」も改良を重ねることで改善。ボックスインボックスでの提供や緩衝材を独自開発することで、これまでにアイシャドウやアクセサリーの破損が報告されたことはないという。

 創業からわずか3年であるにもかかわらず、機体によっては数百万円の売上を記録するというプレノ。成功の裏には改良を繰り返すPDCAサイクルの高回転があり、その要因には、肥沼氏を中心にフリーランスで活動しているデザイナーやエンジニアにその都度協力してもらう「プロフェッショナルシェアリング」という会社運営を行っていることが挙げられる。現在も、フルタイムで勤務しているのは肥沼氏1人のみで、必要に応じてプロフェッショナルに手伝ってもらうことで効率とスピード感を優先させているという。

 肥沼氏は「化粧品自販機の登場で、自動販売機のマーケットが変わってきている」と手応えを感じる一方で、化粧品自販機がヒットするためには「設置場所」「積載アイテム」「積載アイテムや場所性に沿ったデザイン」の3つの条件を満たす必要があると説明。それら洗い出すためには、ユーザーのデータ解析が必要不可欠だと話す。現在はAIカメラの搭載やタッチパネルのCTR、使用された決算方法などをリアルタイムで収集し、購入者の情報を得ているが、その重要性は、自販機開発当初肥沼氏自身が24時間体制で利用者を分析していたほどだという。AIカメラで認知されたユーザーの容姿などは画像データとして取り込むことはないが、設置している商業施設から許可が貰えれば着用している服の色やおおよその年齢までを解析することができる。「人為的なレポートよりもデジタルデータを基に考えられる消費者の傾向を意識した次の商品はほぼアタる」とし、緻密なマーケティングデータは百貨店なども興味を持ち、アイテム販売ではなくマーケティングデータを収集することを目的に自販機を設置する例も増えてきたという。一方で「購入体験を損なうテクノロジーは導入しない」と肥沼氏は強調。消費者同士のコミュニケーションのきっかけとして機能するように大きなモニターは導入したが、それ以外のテクノロジーは現状必要ないと話す。

 「デザインについてはユーザーエクスペリエンスを徹底的に追求している。男性はテクノロジーを盛り込みたくなるもので、VRやプリクラなどの機能を搭載しようと考えるが、女性はもちろん、買い物を目的にしている消費者はそんなことを求めていない。僕が意識しているのは、友人やカップル、親子でコスメ自販機の前で迷い、会話をしながら購入できるかどうか。判断軸の基準は常にふらっと立ち寄った時に買ってみようと思えるか」(肥沼芳明)。

 プレノは、次なる展望して屋外広告と混ぜ合わせた体験型広告の提案に前向きだ。「ハイブラインドのクライアントとも取引ができるようにとクオリティを上げてきた側面もある」とし、高価格帯のアイテムや精密機械などを積載することにも意欲をみせた。

■PRENO:公式サイト

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