ファッションには「小物」というジャンルがあり、中でも日差しが強い季節になると俄然存在感を発揮するのがサングラスです。近年では目に入る強い紫外線が眼病を誘発するだけでなく、肌の日焼けの一因となることが周知され、ファッションのみならず日焼け対策としてサングラスを愛用する人が増えました。しかし日本人はサングラスを夏の習慣として取り入れる人口が欧米と比べ少なく、折りしもコロナ禍でマスクが必須。マスクとサングラスを同時装着するのはハードルが高く感じますが、健康のためにも欠かせないアイテムです。そこで今回はサングラスの歴史からマスク時代の選び方まで掘り下げて紹介したいと思います。
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日本人とサングラス
最近は紫外線対策やファッションの一部として取り入れる方が増えたものの、未だサングラスに抵抗がある人も。そんな話を裏付けるアイウェアメーカーの調査があります。その調査によればサングラスに抵抗を感じる人は約30%いるとの結果で、これはサングラス=気取っている、怖そうに見える、といった理由からのよう。確かにサングラスは目元をカバーするアイテムゆえ、顔や表情を隠すために身につけるケースもあります。代表的なのがセレブリティで、変装アイテムとしてサングラスを用いたことで一般の人にとってはサングラス=気取っている、という認識が植え付けられたのかもしれませんね。しかし時代は変化し、今や男女問わず紫外線対策の意識が高まっています。メガネ専門店ではなく、アパレルショップでも見かけることが多くなり、日常の必需品として手に取る方が増えてきている傾向にあります。
サングラスの歴史
1920年代 遮光を目的として誕生
サングラスが生まれたのは1929年。アメリカ人実業家のサム・フォスターが手頃な価格の大量生産品を売り出し、色素が薄く紫外線に弱い白色人種の間で人気を呼びました。しかし実はもっと以前、古代ローマ皇帝が煤を塗ったエメラルドのレンズが入ったメガネを掛けていたという説もあり、古の時代からサングラスの原型は存在した様子。しかし今のようなサングラスが本格的に普及したのは第二次世界大戦後で、その源流はパイロット用サングラスにあります。今なおサングラスの人気ブランドであるアメリカのRayBanは1937年に、イタリアのPersolは1938年に設立され、当時はいずれのブランドも空軍のパイロットのためにサングラスを開発・納入していました。しかしその後、パイロットサングラスを映画スターや文化人が掛けはじめ、これを機に一般に広く浸透。しかしこの時代のサングラスはあくまでも遮光性がメインでした。
1980年代 スポーツサングラスの普及
1980年代になるとスポーツ用サングラスが登場し、車・バイクなどの運転時やスポーツシーンで活躍。90年代以降は大胆で近未来を思わせるデザインのスポーツサングラスが主流となりました。実用性を兼ねたデザインは顔へのフィット感や軽さ、タフさを重視し、光の反射や紫外線、風、砂埃といったスポーツ時におけるマイナス要素を軽減する工夫が凝縮されるように。スポーツサングラス最大の特徴は高機能レンズとフレームが一体化したデザインにあり、レンズの種類によって見え方が異なるため、求めるパフォーマンスによって使い分けるのが一般的です。
1990年代 ファッションと機能を求める時代へ
1990年代になり、アイウェアブランドやラグジュアリーブランドがリリースする多彩なカラーと造形を持つファッションサングラスが注目を集めました。この時点でサングラスは紫外線からの目の保護という基本スペックに加え、さらに高いファッション性やより高度な機能を持つアイテムとして進化。80年代にはエレガントなトレンドに合ったグラマラスなデザインが人気を博しましたが、ストリートファッションがブームを巻き起こした90年代にはより個々のスタイルにマッチしたサイズや色が好まれるようになりました。
フレームとフォルムに見るトレンド
アイウェアを選ぶ際に一番のポイントは、フレームの素材やフォルムでしょう。フレームにはメタルやプラスチック、セルロイド、中には東洋人の骨格に合わせた「アジアンフィットフレーム」などがあり、それぞれ見た目の印象が異なります。そしてフォルムや素材にはその時代時代のトレンドがあり、過去に流行ったフォルムがリバイバルで人気が再燃することも。2021年にはレトロ&クラシック回帰でメタルフレームが流行したことも記憶に新しいですよね。
メタルフレームとプラスチックフレーム
サングラス登場時、アイウェアのフレームは金属製が大半を占めていました。しかし60年代にプラスチックの加工技術が向上したことをきっかけに、カラーの幅が広く大量生産に向いているプラスチックフレームが一斉を風靡します。その当時から今なお高い人気を誇るプラスチックフレームの代表作はRayBanのウェイファーラーですが、こちらは現在も色褪せない名品として時代を超え愛されています。なお、メタルフレームは品格や知的さを、プラスチックフレームはモダンさや遊び心を感じさせ、メタルとプラスチックを合わせたコンビフレームも多数登場しています。
アジアンフィットフレーム
サングラスがファッションやスポーツ界において欠かせないアイテムとなって以降、サングラス人口が増えたと同時に東洋人ゆえの悩みが生まれます。それは多くのサングラスブランドが欧米発であるため、白色人種にフィットするように設計されていること。西洋人と東洋人では顔の立体感や鼻筋の高さに差があり、掛けてはみたもののフィットしない、掛け心地が悪いという問題がありました。しかしアジアでの人気を受け、各ブランドが「アジアンフィットフレーム」を発売。これはフレームのフロントカーブが緩やかで、ノーズパッドを長めに、かつ傾斜をなだらかにした設計で、彫りの浅い東洋人の骨格にもフィットするように作られたアジア圏限定の設計です。
ボストン・ウェリントンのブーム
昨今は「ボストン」や「ウェリントン」と呼ばれるフォルムが人気ですが、これらはいずれも丸みのある形が持ち味。しかしこの名称、実は日本独自の呼び名だと知っていましたか? 実はボストンやウェリントンの名付け親は鯖江発の世界的メガネブランド「EYEVAN」の山本哲司氏。当時日本では視力矯正道具として捉えられていたメガネをファッションアイテムとして認知させるため、当時のアイビーブームにあやかり名付けました。ボストンはヴィンテージ感が持ち味で、アンダーリムを絞った逆三角形よりの丸メガネ。一歩のウェリントンは台形を逆さにしてやや丸みをつけたシェイプが特徴で、知的な印象を与えてくれます。また、これらの良いとこ取りをした「ボスリントン」と呼ばれるフォルムもあり、幅広い層の人に似合うことから近年こちらも人気となっています。
マスク時代のサングラス選び
マスクを外しにくい今の時代、サングラスはよりハードルが高く感じるかもしれません。それはマスクとサングラスを両方着けることで顔の大部分が隠れ、マイナスな印象を与えるかもと危惧するからです。しかしサングラスの選び方次第では、軽やかにサングラススタイルを楽しむことも可能。そのコツは、レンズの色が薄いタイプを選ぶことにあります。サングラスといえば真っ黒なレンズを想像しますが、レンズカラーの濃さは紫外線カットの性能に関係ありません。UVカットのサングラスには紫外線透過率が数字で表示されているので、レンズカラーが薄くともこの数字が高ければそれだけ紫外線を遮蔽できます。また、フレームが大きいものほど存在感が際立つため、なるべく小さめのフレームを選ぶのもポイント。最近はマスクもカラフルになっているので、普段よく使うマスクのトーンと合わせたフレームカラーで揃えたり、肌に馴染みやすいベージュや柔らかなペールトーンのフレームもおすすめです。フレームを選ぶ際は、自分の眉毛のラインとフレームの上リムのラインが似たタイプを選ぶと似合いやすいので覚えておいてくださいね。
サングラスは今や夏の必需品。顔や肌の日焼け対策は万全でも、目から紫外線が入ることで紫外線を察知した脳が反応し、体内でメラニン色素を生成してしまいます。そのため目もしっかりサングラスでカバーするのが大切ですが、どうせ掛けるならファッションやマスクとのコーデを楽しみ、より素敵に見えるタイプを選びたいですね。
TEXT:横田愛子
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