トレンドの「ロッカーサプライズ」
Z世代の特徴として「サプライズ嫌い」が挙げられることがあります。結末やあらすじをだいたい把握したうえでコンテンツを視聴する「ネタバレ視聴」などもその一例です。
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心理的安全性がカギ
シブヤ109ラボで実施したZ世代400人を対象にした調査では、ネタバレ視聴の経験者は約4割と、やや少ない結果となっています。しかし、実際のインタビューでは「内容があらかじめ分かっていたほうが安心して観られる」「無駄にハラハラドキドキしたくない」などの声があり、自分の感情が予想外に揺さぶられるようなサプライズに出くわすことに対して慎重な姿勢も見られています。
一方で、友達の誕生日サプライズを楽しんでいる姿が多くみられます。高校生の間では友達のロッカーに写真を飾ってオシャレにデコレーションし、プレゼントを詰めてお祝いする「ロッカーサプライズ」がトレンドとなっており、SNSでも注目されています。
このような様子を見ると、彼らが全てのサプライズを避けているわけではないことも分かります。彼らの中には、好きなサプライズと、そうでないものが共存しているのです。
このサプライズコンテンツ受容の可否を、彼らのトレンドの楽しみ方から分析してみました。結論から言うと、Z世代が好むサプライズは、心理的安全性が保たれていることがポイントです。
サプライズの〝型〟
彼らのトレンドの楽しみ方として、SNSで共有されたトレンドをそのまま再現して楽しむ「再現消費」というものがあります。一つのトレンドにおいて、起承転結を一通り確認したうえで追体験するのが特徴です。
もちろん、完全再現ではなくオリジナリティーを加えることがありますが、あくまで再現するフォーマットから大きなズレが生まれない範疇(はんちゅう)にとどめています。フォーマットを再現しSNSに投稿することで、コミュニケーションを創出することがモチベーションであるため、そこから逸脱しすぎることを避けているのです。
先述した「ロッカーサプライズ」もフォーマットがSNSで共有されており、ロッカーサプライズのやり方や、サプライズ後の写真や動画の撮影方法として参考にできる情報を事前に確認することができます。
何かを体験する前にSNSで情報を受け取ることが当たり前であり、追体験することを楽しんでいるZ世代にとって、結末が分からない不安は、ある種のストレスになる可能性があります。だからこそ、サプライズを仕掛ける側・受け取る側の両方が「サプライズの型」の共通認識があり、心理的安全性が保たれた状態で安心して楽しめることを重視しているのかもしれません。
●長田麻衣(おさだ・まい)
シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社で、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。今年の目標は若者のリアルをテーマにした書籍を出版すること。
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